何となく理解
まぁ、うん。
そもそもビンゴは揃わないのが普通だから。
ちなみに参加者は、昼過ぎの部でざっと百人くらいかな。
で、その中でビンゴした人は五人くらい。
ちなみに全員ハーピーさんね。
ビンゴしてはしゃいで、両手を羽ばたくように動かして、席から浮いちゃうお客さんとかいて微笑ましかったよ。
「……さて」
また景色でも見るかなぁ。
夕暮れ時に探検ツアーがあるって話だし、もう少し時間あるしね。
にしても夕暮れ時の海か。
基本日が傾いたら海から出るから、夕暮れ時の海の中の景色ってあんまり知らんな。
そもそも暗くなった海は危険だから。
「って、違う違う」
メインデッキに向かいかけた足を方向転換。
向かう先は自分の客室。
「シャワーがどうなるか試すんだった」
割とビンゴで白熱した事もあり、忘れかけてた。
というわけで客室へ。
「……ん?」
早速シャワーを浴びようと思ったら、テーブルに何か置いてある?
近くに寄ってみたらアメニティグッズだそうで。
用意されてなかったのか―と思ったものの、これ多分あれだ。
客室の利用者が何族か分からないから、確定してその種族に合った物を用意してるんだと思う。
……多分だけど。
「頭髪洗浄用のくしと、身体を洗う用の砂、歯ブラシ……」
うん、普通のアメニティグッズですわね。
……まぁ、このツアーにとっては、だけど。
いやぁ、小分けにされた袋に砂が入ってる絵面、違和感しか無いなぁ。
何も知らない人がこれ見たら、バカにしてるのか? と思っちゃうよね。
「さて、それじゃあシャワーを……」
シャワー室に入り扉を閉め。
……どうやってシャワーを出すんだ?
天井からぶら下がってるシャワーはあれど、シャワーを起動する物が見当たらない。
ハンドルって言うの? 捻ったり回したりするアレも見当たらないのよ。
シャワー自体についてるのかな?
バタ足して浮上し、天井のシャワーの周囲を見るけど何もない。
……まさかシャワーが飾りって事も無いだろうし……。
――ん?
「まさか、これ?」
俺が見つけたのはシャワー室の扉に付いている赤いスイッチ。
てっきり、内側からかけるカギだと思ってたんだけど、まさか……。
ポチッとな。
「当たりかよ」
押したら、シャワーから一瞬だけ冷たい水流が流れてきて。
即座に温かい水流へと切り替わる。
なるほどな。シャワーの場合は水流になるのか。
……この水流、他の水と混ざらないのかな?
水流が出た直後ならともかく、天井から床に居る俺に届くまでに、周りの水と混ざって温度が下がらないのはおかしいよね?
となると、このシャワーの水も大浴場にあったお風呂と同じく、海水と区別されてる水って事なのだろう。
「あ、アメニティ忘れた」
そしてテーブルの上に用意されていたアメニティを忘れている、など。
まぁ、シャワーを試すためだけに入ったので、身体は洗わなくてもいいか。
「……服が……濡れてる?」
服を着たままシャワーを浴びたら服が濡れたな。
……いや、何言ってるんだ? と思われるかもしれないけど、そもそも海水に浸かっている現状でも、服って濡れてなかったのよ。
それが、シャワーを浴びた途端に水を吸い、肌に貼りついてるわけで……。
これ、船に入りこんだ海水が魔法的な何かの影響下にあるだけで、海水以外の水は多分普通だな?
だから服を濡らすし、海水と分かれるって感じか。
なるほどな?
「とりあえず服は着替えるとして」
大浴場で思ったのよ。
服脱ぐ意味あるの? って。
ありますね、はい。
「ちなみに洋服の乾燥のサービスとかって……」
ボタンを押してシャワーを止め、シャワー室から脱出。
濡れた服を着替えながら、サービスの内容を確認すると……。
「乾燥まで付いてる洗濯サービスがあるな。これたのも」
今すぐ着る服がない、というわけではないけれど、そもそも濡れる想定でいなかったもので。
乾かしてもらえるならそれに越したことはない。
「専用の袋に入れて扉にかけておくだけか」
利用出来る洋服の枚数に制限があったり、一日に利用出来る回数が決まってはいるものの、基本は旅行プランの中に入ってるサービスらしい。
ありがたく使わせて貰おう。
「……ちょっと眠くなってきたな。二時間……いや、一時間だけ寝よう」
お腹いっぱいまで食べた後にお風呂まで入ったんだ。
そりゃあ眠くもなるというもの。
夕方前に起きれば大丈夫でしょう。
というわけでおやすみなさい。
*
「何食べてる?」
「我への献上品」
「寄越せ」
「少しだけだぞ?」
忠からの献上品をモッシャモッシャと食べていた翠龍は、同じ龍族の轟龍から声を掛けられ。
好意で、忠が献上したお菓子を分け与えた。
「? これごと食べる?」
「な訳あるか」
そうして分け与えられたのはコアラのイラストがプリントされた、ビスケット生地の中にチョコレートが入っているお菓子。
それを箱ごと渡され、そのまま食べようとした轟龍は、翠龍に箱を開けさせ、ついでに袋も開けさせて。
「なにこれ?」
「分からん。が、美味い」
翠龍も分かっていないコアラたちのマーチを一つ掴み口へ。
「…………美味しい」
「だろう?」
ゆっくりと咀嚼し、味を確かめ、美味しいと感じた轟龍は。
ザーッと、袋を自分の口の上でひっくり返し、一口で残りを完食。
モッキュモッキュと幸せそうに咀嚼し、
「お代わり」
翠龍にお代わりを要求したが。
「ない」
その一言で膝から崩れ落ちた轟龍は。
もっと味わって食べればよかったと、心の底から後悔するのであった。




