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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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そうはな……るのか?

 冷静に考えよう?

 今俺は水中に居るんだよな?

 どうやって水中の中でお風呂に入るんだろう……?


「風呂場だけ水が無かったりして」


 なんて独り言を言いながら大浴場(人間)に突撃。

 ちなみに他の利用者がいない事は確認済み。

 なんで人間のツアー参加者が少ないんだろうね?

 あとでノクティオさんにでも聞いてみるか。


「……いや、そうはならんやろ……」


 で、大浴場の扉を開けたら……。

 普通に温泉施設みたいな設備がありまして。

 お湯が溜まってるんだよね。

 お湯……多分お湯だよな。

 あの、水にガムシロップとかを入れるとさ、揺らぎというか、水の中に入ったガムシロップって視認できるじゃん?

 同じ透明なのに、これはガムシロップだなって。

 それと同じで、明らかに俺の周囲に充満してる水と、区切られてお風呂とされてる部分に揺らぎが見えるというか。

 一言で言うなら温度の境目が分かる感じ。

 確かによ? お風呂とか準備して、混ぜないと上の方は水で下の方がお湯、とはなるけどさ。

 こんなくっきりと分かれることはないでしょ……。


「……身体とか洗う時はどうするんだ?」


 ふと気が付いてしまった。

 普通なら当たり前に体を洗うだけでいいはずなんだけど、今俺は海の中にいるわけで……。

 泡立たなくない? 

 どうしよう……。

 ――ん?

 とりあえず身体を洗う場所に移動してみたら、そこには……。


「……砂?」


 石鹸やボディソープ、シャンプーの代わりに砂が置かれてまして。

 砂を肌に擦り付けて汚れを落とすらしい。

 というわけで物は試し。

 砂を掬って腕に押し付け擦って見ると……。


「ヒィッ!?」


 ゾルリッ! と異様な手ごたえを感じ、思わず手を引いてしまう。

 当然砂は零れ落ちるわけだけど、零れ落ちる砂は先ほどまでの黄色い砂から、黒が入って茶色……というか、こげ茶色に変色。

 あれで汚れが落ちてるよって事なのだろうか……。

 次、足とかやってみる?

 と、もう一度、今度は先ほどよりも少ない砂の量でチャレンジ。


「……」


 相変わらずの異様な手ごたえの後、


「痛っ!!」


 すね毛を巻き込んで悶絶。

 そうだよな、砂だもんな。毛を巻き込むよな。

 毛並みに沿って撫でるように擦らなきゃダメか。


「すっげぇつるつるなんだけど」


 毛が生えてたところの話じゃないよ?

 砂を当てて擦ったところの話だよ?

 砂で擦っただけなのに、普通に体洗った後どころか、その後温泉に入ったみたいな肌の質感。

 ……あの砂ってあれか? 汚れとかだけじゃなく古くなった角質とかまで落としてるとか?

 万能かよ。


「……頭はどうするんだ?」


 初めての砂洗い? に若干手間取りつつ、一応は手の届く範囲は綺麗にした。

 背中は……うん。無理。

 ちなみに一番時間が掛かったところは……。

 毛が多い所だね。毛を巻き込むと痛いからね、しょうがないね。

 で、現在は頭髪をどうやって洗うか、を考えてるわけですが……。

 まさか身体と同じように砂を擦り付けるわけじゃないよね?

 ……あ、よく見たら頭髪洗浄用って書いてあるやつあるじゃん。

 どれどれ……?


「……くし?」


 くしです。

 あの、何というか……京都の舞妓さんとかが使ってそうな、月形のくしって言うの?

 あんな感じのくしが置かれていて、そのくしで梳くと、髪に付着した汚れが落ちるらしい。

 というわけでやってみよう。


「……これには異様な手ごたえは無いのか」


 砂で肌を擦った時のような異様な感覚は無いし、一回梳き終わってくしを見たけど色が変わってるとかでもない。

 本当に綺麗になっているんだろうか……。


「あ、でもサッパリしてきたかも」


 何度か繰り返すうちに、確かに髪の毛がサッパリしてきたかもな。

 じゃあ、こんなもんでいいでしょ。

 お風呂入ろう。


「……温泉よろしく風呂の効能とか書いてあるんだ」


 一応かけ湯をしまして温度を確認。

 ……丁度いい感じからややちょい熱って感じかな。

 心地いい温度ですわね。

 というわけで入りましてっと。

 今入ってるお湯は……ひじきの湯?

 ネーミングよ。

 効果は……血行促進、冷え性、肩凝り、抜け毛。

 抜け毛? おおよそお風呂に書かれる効能ではなくないか? とは思ったけど……風呂の名前がひじきだしなぁ。

 髪の毛に効くって聞いたような気もするし……。

 まぁいいでしょ。

 ちょっと長めに浸かろう。

 特に意味はないけど。


「他にもいくつかお風呂があるし、ちょっと巡ってみたいけど……」


 壁にかけられた時計を確認。

 身体や髪の毛を洗うのに時間がちょっとかかったからね。

 もう少ししかゆっくりできないんだよな。

 ビンゴ大会が始まっちゃう。

 というわけで、二進数で百まで数えてから出るか。

 1、10、11、100。

 よし、上がろう。


「夜入る時はもう少しゆっくり入りたい」


 やっぱりお風呂はね、時間を気にせず伸び伸びと入るに限りますよ。

 お酒とか飲み物持ち込んでね。

 ……そういや、部屋にある浴槽でも同じこと出来るんだろうか?

 シャワーとかもどうなるのか気になるっちゃ気になる。

 ビンゴ終わったらその辺も試してみるか?

 海の中で風呂に入るとかいうここでしか体験できない事柄だから、好奇心が止まりませんな。

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四秒で風呂から上がるのは入ったと言えるのだろうか?
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