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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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異世界だから出来ること

 一体誰がウェルカムドリンクが塩ラーメンのスープのような味わいだと想像するだろうか。

 いや、流石にラーメンのスープ程の濃さは無いんだけど。

 でも、飲んだ後味にブイヨンとか、野菜の甘みとか、明らかにジュースではない物を感じるんだよな。

 いやまぁ、ドリンクは飲み物って意味であって、ジュースだけを示す言葉ではないと思うんだけど。

 だったらウェルカムスープとかでいいじゃん?

 まぁ、美味しいのでいいんですけれども。


「……これで水中でも呼吸が出来るようになるの?」


 半信半疑というか、未だに信じられないというか。

 別にウェルカムドリンクを飲んでエラが出来たわけでも、指の間に水かきが出来たわけでもないし。

 身体的変化も無いので、これで効果が出てなくて、出航、入水と同時に溺れたりとか嫌だなぁ……。

 念の為もう一杯ウェルカムドリンクを飲んでおくか。


「ん? はーい」

「失礼いたします。避難訓練の確認に参りました」


 と、そんな不安を抱えていると、部屋のドアのノックする音。

 そしてスタッフさんからの言葉。

 なるほど、通常の避難訓練だったら避難場所に実際に行って、完了のスタンプだったり証明書を貰ったりするけど、この飛行船の場合、ハッチを使って自力で逃げるか、スタッフが来るまで部屋で待機なわけで。

 ハッチには船内が水で満ちてないと届かないし、そうなると各部屋回って避難訓練の説明を受けたか確認しなきゃならないのか。

 大変そうですわね。


「どうぞ」


 というわけで時間をあまりとらせないようにドアを開け、スタッフさんを部屋の中へ。

 ……うん、薄黄緑色のヒレがあるマーメイドさんですね。

 そして男性っと。

 いや、別にやらしい思いとか無いですよ?

 そもそも普通に服着てますし。

 でもやっぱり……こう……ね?

 マーメイドと言えば女性で想像したくなっちゃうじゃないですか。


「失礼します」


 とりあえず入ってきたスタッフさんは部屋を見渡し。

 栓の空いたウェルカムドリンクを確認し、小さく頷く。

 そして、


「お体、触らせていただきますね?」


 と言って、俺の腹部をタッチ。

 何を? と思った時には手が離れ、


「はい、OKです。ご協力感謝いたします」


 だそうで。

 今の一瞬で確認は済んだらしい。


「あの」

「? どうかされましたか?」


 なので、


「このツアーに参加するのが初めてで、本当に水中で呼吸が可能なのか不安なんですけど……」

「そうでしたか。ご安心くださいませ。水中で呼吸可能になっていることはたった今私が確認させていただきました。ただ、お客様の不安ももちろん理解出来ます。ですので――」


 本当に水中で呼吸が可能になってるか確認してみた。

 すると……、


「そちらに備え付けのバスタブがございますので、そちらで試されてみてはいかがでしょう?」

「……なるほど」

「もうしばらく出航には時間が掛かります。何度か試していただき、不安を取り除くのがよろしいかと」

「回数制限や時間制限に関しては?」

「一度効果が適用されれば、丸一日は持続いたします。また、当ツアーで提供される飲食物の全てに、同じ効果が付与されていますので、効果が切れる心配は無いかと」

「なるほど」

「もし分からない事や他に不安な事があればいつでも遠慮なくご申しつけください」


 だそうです。

 確かに、出航前に自分で試してしまえばぶっつけ本番で失敗しました、にならないか。

 いや、この場合失敗したら溺れちゃうんだけど。


「それでは、失礼します」


 スタッフさんが部屋から出たので、とりあえずは……。


「風呂に水をためるか」


 早速試してみましょ。

 ……思ったんだけどさ、洋服はどうすればいいんだろう?

 水着とか持って来てないぞ……。

 いやまぁ、風呂場で試す時は脱げばいいんだけども。

 船内を動き回るのに、着衣水泳しなきゃダメ?

 ――あれだな、出航する前に売店によって、水着を買おう。

 流石に置いてあるでしょ。


「よし、こんなもん」


 お風呂に水を張りまして……。

 お湯じゃないよ。水だよ。

 顔しか付ける予定無いからね。

 まさかお試しで全身入ろうなんては思わないわさ。

 というわけで……いざ!!


「――――」


 ……え、凄い。

 普通に呼吸出来た。

 何だろう、鼻に水は入ってくるんだけど、全然違和感無いというか。

 こう、咳き込んだりとかがない。

 マジですんなり入って来てすんなり吐き出される感じ。


「これ、慣れちゃったら普通に風呂で呼吸して溺れそう……」


 ウェルカムドリンクの効果が効いてる内はいいけど、切れた時が怖いな。

 今の内から意識しとこう。


「とと、売店売店」


 いつ頃出航かも分からないし、船が動いてない内に水着を調達に行かなきゃ。

 というわけで滅茶苦茶肌触りの良いふわふわのタオルで顔を拭きまして。

 ――ん? 待て待て。

 この部屋って当たり前に水に浸かるんだよな?

 そもそも、なんで風呂が当たり前に付いてる?

 しかも、タオルまで常備されてる?

 もしかして、客室まで水が入って来ないとか?

 いや、でも、ハッチは水が入ってないと届かないし……。

 とりあえず分からんから放置!

 そんな事より水着だ水着!!

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