第45話〜潜入〜
まだ辺りが暗く、誰も起きてはいなさそうな朝方。
フォルカ達は、そんな中を移動していた。
フォルカとユニィはウェルトに、エリアルとクラスはドールに掴まり、移動していた。
ウェルトは光素スティアを巧みに使い、つくり出した光の道を滑る様に移動していた。
ドールは足元に水素スティアを収束させ、氷のラインをつくり、スケートの様に滑って移動する。
「うわぁーっ、速いねっ!!」
ユニィが無邪気に言う。
それに反応して、ウェルトは更に加速させる。
「わあぁっ、速過ぎですよウェルトさんっ!」
ウェルトに掴まっていたフォルカは、情けない声で彼に言った。
「くぉらボウズッ、この程度で騒ぐんじゃねぇっ!」
そういってウェルトは、更に加速させる。
もはや、フォルカの悲鳴さえ聞こえなかった。
「フィニカ様・・・」
先に行っている三人を追いながら、ドールの口から名前が零れる。
「大丈夫です、きっとフィニカさんを助けられますよ」
「私達もついてるから、ねっ?」
クラスとエリアルが、ドールに励ましの言葉をかける。
すると、ドールの強張った表情が緩む。
「そう・・・だな、私が信じなくてどうするんだ」
「その調子です、ドール」
そう会話をしながら、ドールは更に加速させる。
ウェルトも、負けじと加速させる。
今の二人は、とても普通の人が追い付ける様なスピードではなかった。
一行は、予定していた時間よりも早くに、目的地に到着した。
まだ、日が昇っていないからか、辺りはとても静かだった。
「・・・帰ってきたわね、フォルカ」
「うん、エリアル」
フォルカとエリアルは、大都へ連れて来られた時の事を思い出していた。
「ユニィがいなきゃ、脱出出来なかったもんね」
「そーだねっ、わたしのおかげだよねぇ〜」
軽く笑いながら、小声でユニィに話題を振るエリアル。
それに対し、ユニィもいつものノリで返してきた。
「ドール嬢ちゃん、ここの奴らの実力は?」
「そこまで高くはない、フォルカ達でも十分に対処出来る程だ。しかし、数が多い。フォルカ達の体力が持つかどうか・・・」
「そうか・・・なら、俺らがソコソコやらなきゃいけねぇか」
ドールとウェルトが、少し話し合い、みんなの方を向く。
「いいか、作戦を説明するぞ。私達は、正面から突入する」
「えっ、それって大丈夫ななのっ!?」
予想通りのフォルカの反応に、説明しているドールの後ろにいるウェルトが、吹き出しそうになっていた。
「裏口は侵入を防ぐため、警備は厚くなっている。それに比べると、普通は侵入してこない正面入り口は、裏口と比べると警備が薄いんだ」
「でもさぁ〜、正面入り口なら援軍が集まるのも早いんじゃないの〜?」
ユニィが、ドールに質問をぶつける。
すると、ドールに変わってウェルトが口を開いた。
「だから、施設内が分かるドール嬢ちゃんを先頭に、迅速に潜り込むんだとさ。最後尾は、俺がついてやるから安心しな」
そういってウェルトは、親指を立てる。
「それに、騒がしくした方が四素騎士が出てくるかもしれんしな」
「・・・なるほど、確かにその可能性はありますね」
クラスが、納得した様に何度も頷いた。
その一言に、残りの三人もドールとウェルトの考えに賛同した。
「・・・・・・行くぞっ!!」
ドールの合図と共に、フォルカ達は一斉に走りだした。
ドールは、扉に向かって水素スティアをぶつけ、昇華させ、扉を破壊した。
内部に侵入すると、十数組のクロムとマスターが待ち構えていた。
「うわっ、予想以上に多いんだけどっ!」
「落ち着いて下さいエリアル、来ますよっ!」
フォルカ達が戦闘態勢をとった瞬間、マスターが一斉に指示を出して、クロムがこちらに一度に向かってきた。
あと数センチほどで接触するという瞬間、
「止めなさい」
女性の声が響いた。
その瞬間、マスターはクロムに停止命令を出した。
「シェリナー・・・」
ドールの一言には、おぞましい憎しみが籠もっていた。
そんなドールの前に、ウェルトが立つ。
「シェリナー、ディシアはいねぇのか?」
「あら、ディシアと私の名前を言えるってことは・・・少し記憶が戻ったのね、ウェルティオ」
二人は、それ以上語らなかった。
しばらく続く沈黙。
それを破ったのは、シェリナーだった。
「付いて来なさい、貴方たちに楽しい余興を用意しているわ」
「余興・・・?」
フォルカは、シェリナーの一言に反応した。
「そう、貴方たちは今から・・・四素騎士と戦って貰うわ。私達が一人でも勝ったら、クラスは頂くわ」
「我々が勝ったら・・・フィニカ様を返して貰うぞ」
「いいわよ、取り戻せたらの話だけど・・・」
そういうと、シェリナーは扉の奥に消えて行った。
フォルカ達は、顔を見合せ、シェリナーの後を追ったのだった。
気付けば、もう数ヶ月更新していませんでした
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