第42話〜出発の時〜
「それじゃアヤさん、いろいろとお世話になりました」
「もう行っちゃうのね・・・ちょっと残念」
フォルカの言葉に、アヤは軽く冗談を言う。
そんなアヤに、ユニィは勢い良く抱きついた。
「ママ・・・私、セレンちゃんに私の思いをぶつけてくるね」
「そう・・・ちゃんと二人揃って帰って来て頂戴ねぇ」
そういってアヤは、彼女の頭をぽんぽんと軽くたたいた。
するとユニィは満面の笑みを浮かべ、「うんっ!」と力強く返事をした。
「あっ、そうだ!エリアルちゃんの素器だけど・・・怪我することが多いって聞いたから、ナイフ型から違う型に変えておいたからねぇ」
「違う型・・・?」
アヤに渡された彼女の素器は、ブーメランに持つところが付いた様な、何とも不思議な形をしていた。
「・・・これ、どうやって使うんですか?」
「えっとね・・・今までどおりに接近して戦ってもいいしぃ〜、持つところにあるボタンを押しながら振りかぶると・・・」
「ボタンを押しながら振りかぶると・・・」
エリアルは、アヤに言われた通りにボタンを押しながら自分の素器をおもいっきり振りかぶった。
すると、ブーメランの形をした部分が離れ、本当のブーメランの様に弧を描いて飛んだ。
「わぁっ、上の部分が離れたっ!?」
「遠距離攻撃も出来るから、怪我は減るかなって思ったんだけど・・・よかったかしらぁ?」
「うんっ、これ・・・カッコいいっ!!」
エリアルは目を輝かせてアヤに返事をした。
その時、後ろからクラスの驚いた様な声が聞こえる。
何事かと振り返ると、先程エリアルが振りかぶって投げた素器のブーメラン部分が、クラスの近くにいたドールに危うく直撃するところだったのだ。
「ドールッ、大丈夫ですかっ!?」
「ああ・・・危うく頭部に直撃するところだった、なぁエリアル?」
「うぅ・・・」
ドールから溢れる殺気に、エリアルは思わず後退りする。
そんな殺気だった彼女を、クラスが宥める。
「あと、コレも持っていってねエリアルちゃん」
渡されたのは、赤青緑の三色の円盤状に研磨された素石だった。
「それをブーメラン部分のつなぎ目にある窪みにはめると、色ごとのスティアがブーメランにつくのぉ」
「へぇ〜・・・ありがとうございますっ!」
エリアルはアヤに深くお辞儀をした。
「そんじゃ、またなシスカ」
「はい、貴方もお元気で」
僧侶の二人は、数時間前の騒ぎ様からは考えられないくらい静かに、会話していた。
「今から向かうクロム研究施設に、貴方の兄弟がいるんでしたっけ?」
「ああ・・・兄貴に俺の神っぷりを見せ付けに行ってくるぜ」
「はははっ、君のお兄さんか・・・それは見せつけがいがあるねっ!」
そういって、二人は軽く笑った。
そしてすぐに、シスカは力強い瞳でウェルトを見つめた。
「帰ってくる時は、君とお兄さんの二人で・・・僕の家に来てくれよ。一杯ご馳走するから」
「ああ、兄貴にもそう伝えとくよ」
そういって二人は握手を交わす。
「みんなぁーっ、そろそろ行くよーっ!!」
フォルカの声が響く。
その声と同時に、旅を共にしてきた仲間たちが集まる。
「よしっ、行こう!大都のクロム研究施設にっ!!」
フォルカの掛け声に、みんなが頷く。
そして六人は歩きだした。
そんな彼らの背中に、アヤとシスカは姿が見えなくなるまで手を降り続けた。