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第39話〜休戦 sideエリアル



エリアルは、階段をゆっくりと降りていく。


下へ降りていくにつれて、何かが聞こえて来た。



(これって・・・歌?)



聞こえる声からして、男性であることは分かった。


エリアルは、耳を澄ます。


聞けば聞くほどに・・・。



(ヘッタクソだなぁ・・・この人)



嗅覚を満たすとてもいい匂いと、聴覚を刺激する破滅級の歌声。


そのギャップに、胸焼けさえ感じた。


それでも足は止めず、下までおり続ける。


そして、かなり長く感じた階段の一番下に、ようやくたどり着いた。


目に入ったのは、四角い机に4つの椅子、部屋の端にある小さめのキッチン。


そして、食事の準備をしている一人の男性の姿だった。



青色の短髪と、髪の色に負けじと青い目をしていた。


「・・・あっ、起きたんですね。体の具合はどうですか?」


「えっ・・・ま、まぁ今のところは大丈夫」


「そうですか、それはよかった。貴女の様な可愛らしい女性に何かあっては、神も嘆かれるでしょうから」


「神・・・?」



聞いたことのあるフレーズが出てきた。


“神”、この世界でそんなこと言う人は、ほとんどが僧侶などの聖職者だ。



「貴方って、まさか僧侶ですか?」


「はい、そうですよ。この辺りで神に変わり、人々に救いの手を差し伸べさせてもらっております」



神を信じている感じから、ウェルトの様な変わり種では無いなと思った。



「あの、それがどうかしましたか?」


「いえっ、別に。ちょっと知り合いに、ウェルトって言う僧侶がいたってだけでしから」



エリアルが不意に出したウェルトの名前に、男性は意外な反応を示す。



「貴女っ、ウェルトの知り合いでしたか!何たる偶然!これは神のお導きに違いないっ!!」



そういって男性は、床に膝をつき、天井に向かって己の信じる神に祈りを捧げた。



(なっ、何よコイツ!?)



急に天井に向かって祈りを捧げ始めた男を見て、エリアルは驚いた。


―僧侶とは、コレが普通なのだろうか?


そんな疑問が浮かび上がって来ても、無理も無かった。



「ああ、申し遅れました。僕は、この付近で神の素晴らしさを人々に伝える役割を請け負っている僧侶、シスカと申します」



そういってシスカと名乗った男性は、頭を下げる。



「えっと・・・私はエリアル、助けてくれてありがとう」



エリアルも、簡単に自己紹介とお礼を口にした。



「自己紹介もしたことですし、朝食をとりませんか?料理が冷めてしまいます」


「あっ、はい」



シスカはそっとエリアルの肩に手を置き、何時の間にやら引いていた椅子に座らせた。


すると、目の前には何ともバランスの取れたメニューが用意されていた。


主食、惣菜、汁物、果物などきちっとした品数と、赤・緑・黄の三色のバランスもかなりよくとれていることが、目視でもわかるほどだった。



「わぁ〜・・・すごい豪華な朝食ね」


「健康な体を維持するためには、朝・昼・夜の食事できっちりと栄養を摂取する事が大切ですからね」



そう言って、シスカはエリアルに水の入ったコップを渡した。



「さっ、いっぱい食べて下さい」


「うんっ、いただきまーすっ!」



シスカの言葉と同時に、エリアルは勢いよく食事を開始した。


そんな彼女を見て、シスカも向かい側の席に座る。


そして、胸の前で手と手を合わせて、祈りを捧げ始めた。


その様子を見て、エリアルは食事の手を止めた。



「あの〜・・・私も、お祈りした方がよかった感じかな?」


「ああ、気にしないで下さい。僕は職業的にやる事になっているだけですから、貴女に強制的にやらせる気はありませんよ」



そう言って、シスカは優しく微笑んだ。







食事をしながら、シスカが色々話してくれた。


私が上から落ちてきた事、時間は一日ほど経っている事、そしてシスカの住んでるこの家がアルフィの村に近い事等々。


私も、シスカに色々と話した。


旅の事、仲間の事、目的地がアルフィの村である事。



「・・・そうでしたか。貴女の目的地が、僕の家と近くて良かったですね。これも神の導きでしょう」


「こればかしは、神様に感謝するわ・・・」



そういって、エリアルは苦笑いした。



「さてと、そろそろアルフィの村に行こうかな」



エリアルは、椅子から立ち上がる。


すると、ある事に気付いた。



「・・・あれ?私の素器は」


「ああ、忘れていました。貴女の素器は、大変なことになってしまいましたよ」



そういって、シスカは戸棚から包みを取り出した。


その包みを広げると、色々な所に穴の空いたナイフ型の素器があった。



「あぁーーっ!!私の素器がぁーーっ!!!」


「直してみようとしたのですが、所々のパーツが無くて無理でした。こうなっては、専門家に頼むしかありません」



そういうと、シスカは真っ白のマントを羽織り、杖を手にした。



「んっ、どうしたのシスカ?」


「僕もアルフィの村に行きます。困っている人を助けないで、何が僧侶ですか」



そういって彼は、こちらにやわらかな笑顔をした。



(これが・・・本当の僧侶)



ウェルトも一応僧侶だが、自分が神だとか、なんかズレた事を言うので、僧侶だと言うことを忘れかけていた。



「さぁ、行きましょうエリアル」


「・・・うんっ!」



エリアルは、シスカに物凄く近づいてついていった。




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