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第38話〜休戦 3〜



(フィニカ様・・・)



ドールは、物陰から二人の様子を伺っていた。


いくら手合わせといっても、恐らくウェルトは手加減なんてしないだろう。


自分の元マスターも、どんな時でも相手に失礼のない様に、全力で行くことを大切にしていた。


それは、ニグレドになっても変わりないと、何故か確信できた。



「オラァッ!!」



ウェルトが自分の周囲に光素スティアを収束、魔方陣を形成した。


その魔方陣の六ヵ所から、白光の光線が放たれる。


ニグレドは左側に体を動かして回避をしたが、光線は折れ曲がり、ニグレドの方へ再び向かって来た。



「ッ!?」



驚きながらも、ニグレドは一発も擦る事無く光線を避け続ける。


右、左、上、下。


数々の方向から、絶え間なく白光がニグレドを襲ってくる。



「・・・・・・」



ニグレドは無言で、ある一点で動きを止める。


そんな彼に、全ての白光が全方位から襲う。


あと少しで彼の体に当たる・・・そんなスレスレの距離で、ニグレドは動いた。



「はぁっ!」



手にしていた槍を、勢い良く回転させ、振り回し始める。


槍によってつくられた白光を近づけさせない空間。


その空間は、何度も向かってくる白光を弾き、弾き、光素スティアへと拡散させた。



「ほぉ・・・、やるじゃねぇか」


「貴様こそ、この前まではこんなに細やかなスティアの制御は出来てなかっただろう」



互いに、一回戦ったときより相手の実力が上がっていると確信した。



「さて、俺はこの辺で失礼させてもらおう」



そう言ってニグレドは、ウェルトに一礼してその場を去った。


そんな彼の姿を、ドールは影で見守っていた。



「さて・・・俺らも帰るぞ、ドール嬢ちゃん」


「!!?」



突然ウェルトに名前を呼ばれて、驚きながらもドールは影から出てきた。



「・・・気付いていたのか?」


「まぁな」


「何時からだ?」


「始めからに決まってんだろう」



その言葉を聞いて、ドールは首をガクッと前に曲げた。






「・・・で、話って何?」



フォルカがクラスに問いかける。


するとクラスは、早歩きでフォルカとの距離を詰める。


そして、彼の両頬を思いっきりつねった。



「っ!!?」



フォルカが急に起きた痛みに、顔をしかめる。


そしてクラスは、その手を上方向に持ち上げようとした時・・・。



「〜〜〜ッ!!」


「あっ・・・」



フォルカが、力一杯腕を振り上げ、クラスの手を外した。


クラスは、抵抗は予測出来ていたが、まさか両手が外されるとは思っていなくて驚きを隠せなかった。



「きっ、急に何するんだよクラスッ!」



フォルカが両頬を押さえて言った。


結構な力でつねったせいか、彼の頬は赤くなっていた。



「すいません、フォルカを励ましたくて」


「励ましたいって・・・それなら頬をつねらなくてもいいじゃないか」



フォルカの一言に、クラスは静かに答えた。



「フォルカが暗い顔をしている時に、頬をつねって無理矢理笑わせていた・・・と聞きました。だから・・・」



「それって・・・」



フォルカの脳内に、一人の男の姿が浮かぶ。


―フィニカ・ティール。


彼の兄だった。


幼い時のフィニカは、いつもくよくよしていたフォルカの頬っぺたを、思いっきりつねって無理矢理笑わせていた。


確かに痛かったけれど、その後はちゃんと笑えていた自分がいるのだった。


でもなぜ、クラスがその事を知っているのだろう?



「・・・ねぇクラス、その事、誰に聞いたの?」


「ニグレドさんです。ですが、思い出したというよりは、ふと頭を過った・・・という感じでした」


「そう・・・」



悲しいと思ったが、彼の口から自分の話が出ただけでも・・・嬉しかった。



「フォルカ、確かにエリアルの事はとても悲しい事です。でもきっと・・・いえ、絶対に・・・エリアルは今のフォルカを見たくはないと思います」


「クラス・・・」


「ですから、暗い顔をしないでください。エリアルも、私も・・・残りの皆も、フォルカには笑顔でいてほしいと思っているはずです」



そう言ってクラスは、ぎこちなくだが微笑んだ。


そのぎこちなさに、今のフォルカには十分過ぎる励ましのメッセージがこもっていた。



「・・・クラス」



少しして、フォルカが口を開く。



「僕、少しずつでも頑張ってみる。もしもエリアルと再開した時に、自然と笑顔が出るくらいまで・・・」


「頑張ってくださいフォルカ、私も応援します」



フォルカの言葉に、先ほどよりは自然な笑顔で、クラスは微笑んだ。








「・・・んっ」



黒髪の少女・エリアルが、ゆっくりと目を開けた。


目の前には、真っ白な景色と、その中にあった外の景色が見ることの出来るガラス張りの場所があった。


少し体を起こして見た。


ナイトに射ぬかれた、左肩に痛みが走る。


痛みに、咄嗟に肩を押さえると、包帯を巻かれている事に気付いた。



「・・・一体誰が」



そんなことを考えていたら、漂ってくる匂いに反応する。


すると、その匂いに連動するかの様にグゥ〜ッとお腹から古典的な音が流れる。


エリアルは寝ていたベッドから降り、辺りを見回すと、下へ降りる階段を見つけた。


エリアルはそこに向かって、ゆっくりと歩き出した。




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