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第37話〜休戦 2〜



フォルカは、一人食卓に残っていた。


彼の脳裏に浮かぶのは、黒髪の少女の姿。


笑顔が眩しく、情に熱く、誰にでも対等に優しく接する事が出来た彼女。


そんな彼女を、助けられなかった。


あの時、もっと自分に力があれば・・・。


そんな思いが、あの時からフォルカ自身を責め続けている。



「エリアル・・・」



―彼女は、無事生きているのだろうか?―


もし生きているのであれば、会いたい。


あの時の事を謝りたい。


そして・・・今度こそ彼女を守り抜きたい。



「・・・きっとエリアルは僕のことを、恨んでる」



しかし、彼女に拒絶されるのかと思うと、頭の中で逃げだしたくなる衝動が生まれてくる。


そんな時、部屋の扉が開く音がした。



「・・・・・・」



ゆっくりと、フォルカは音のした扉の方を向く。


そこにいたのは、緑色の髪色をした少女だった。



「クラス・・・」


「フォルカ、少しお話しませんか?」



彼女はぎこちなくだか、こちらに笑ってみせた。







「でさぁ、ウェルト兄ちゃんがぁ〜・・・『それは偶像崇拝だっ!』っていって私の絵を紙飛行機にして思いっきり遠くに飛ばしちゃったの!!」


「キャハハハッ、何それぇ〜〜!!・・・っで、どうなったの?ユニィちゃんの絵は」


「それがさぁ・・・『神様だけに紙飛行機にしてやったぜ、ユニィ嬢ちゃん!』って、ウェルト兄ちゃんたら、どや顔してるんだよ!!」


「自意識過剰すぎだよぉ!アッハハハハ!!」



ユニィとセレンは、ユニィの部屋の中で、色々な話をしては、笑っていた。


それはまるで、今まで会えなかった時間を取り戻すかの様にも見えた。



「私はねぇ・・・この前ニグレドお兄ちゃんがくしゃみしてたの。風邪だったら大変って思った私は、上着を持っていってあげたの」


「わぁ〜、セレンちゃんチョー善人!」


「そしたら・・・私ったら間違えてバスローブ持ってきちゃったの!!」


「アハハハハハッ、セレンちゃんチョードジだね!」



各々の話で、時間を忘れるくらい盛り上がった。


そんな中、セレンが少し淋しそうに口を開いた。



「私・・・ユニィちゃんとずっとずーっと、こうして一緒にいたいよ」


「私だって、セレンちゃんと何時までもこうしていたいな」



ユニィの返事に、セレンは彼女の肩を持って、こういった。



「ユニィちゃん・・・一緒に施設長の所に行こ。そして、ユニィちゃんも私達の仲間に・・・」


「セレンちゃん、それは無理だよ。ナイトは私達のことを害虫としか思ってないから、いったところで何かされるのがオチだよ」


「でも・・・素術の威力や変換できるスティアの数は、ユニィちゃんの方が上でしょ。だから私よりずっといい扱いされるよ、だから・・・」



その言葉を聞いた時、ユニィは肩に乗っているセレンの手にそっと手を添えた。


そして、真っ直ぐセレンの目を力強く見つめた。



「それなら尚更、行くわけにはいかないよ。私のせいで、セレンちゃんが蔑ろにされるなんて・・・絶対に嫌だ」


「ユニィちゃん・・・」



ユニィの言葉に、セレンの目頭と胸の奥が熱くなった。


ここまで自分の事を本気で思ってくれていたなんて、セレンは想像もつかなかった。


セレンは、ユニィの肩から手を離した。


そして、ユニィの方を真っ直ぐ見つめた。


先程のユニィくらい、力強いものを秘めた目で・・・。



「ユニィちゃん、私・・・ユニィちゃんから逃げないで待ってるから。だから・・・次会ったときには、私の思いを全部ぶつける」


「わかったよ、その時は・・・私もセレンちゃんに思いを全部ぶつけるね」



ほんの少しの間、互いの目を見つめ続ける。


そして、すぐに二人は笑顔になる。


まるで何事も無かったかの様に、再び二人は話を始めるのだった。







「・・・ふぅ」



ドールは、風に当てるために外に出ていた。


今日はいろいろと起こり過ぎたのだ。


変わり果てたマスターとの再会、セレンとの激しい口論などといろいろだ。



「私とした事が、熱くなりすぎたな・・・」



セレンとの口論を思い出し、少し反省をする。


あの場は、ユニィがセレンを連れて行ったため、強制終了された。


ユニィが来なければ、まだ続いていたであろう。


仮にも成人している者が、子供と男の事で口喧嘩をしていたと思うと、途端にむなしくなってきた。



「はぁ・・・・・・んっ?」



ため息をついたドールの行き先である森の入り口に、見覚えのある男性の姿が見えた。



「あれは・・・フィニカ様っ!」



彼は、左手で頭を押さえ、俯いていた。


体調がすぐれないのかと不安に思ったドールは、ニグレドとなってしまった青年に近づこうとした。


しかし、何かの気配を感じ、咄嗟に近くの木の影に身を隠した。


ニグレドに近づいていた、気配の正体は・・・。



「よぉ、迷える子ウサギさん」



自分の仲間である、僧侶のウェルトだった。



「お前は確か・・・ウェルトだったか?」


「ご名答、流石は迷える子ウサギの中でも、優等生にランクインしてるだけはあるな」


「・・・訳の分からない事を言うな。あと、一般には迷っているのは子ウサギではなく、『子ひつじ』だ」



半分呆れた様な口調で、ニグレドは的確に突っ込んだ。


それを聞いて、「細かい事は気にするな」っと、ウェルトは笑い飛ばした。



「何か迷ってんのは図星何だろ?今なら、このゴッド様が直々に悩みを聞いてやろう!!」



ウェルトは、左手を腰に当て、右手の親指を立てて、どや顔で言った。


それを聞いて、ニグレドはゆっくりと口を開いた。



「正直・・・今俺は、迷っている。施設長達が正しいのか、お前達が正しいのか・・・分からないんだ」



その相談に、ウェルトはすぐに答える。



「なるほどなぁ〜、俺が正しいっ!!・・・って言いたいが、そこは人によって価値観が違うからな」



珍しく自分を売りに出ないウェルトに、物陰でドールは驚いた。



「まぁ・・・あれだ。悩んでる時には、体を動かすのが一番だ!!」



そういってウェルトは、笑い出した。


それを見て、ニグレドの口元が一瞬、笑った様に見えた。



「体を動かすか・・・それもいいかもな。では・・・」



ニグレドは、両手を体の前に出す。


すると、手と手の間に影が伸び、一本の槍を形成した。



「少しお相手願いたい」


「喜んで受けてやるぜ、魔物じゃ肩慣らしにならなかったからよ」



ウェルトの足元に、白い光が出現する。



「「行くぞっ!!」」



二人は、ほとんど同時に地面を蹴った。

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