第2話~目に映ったモノ~
「赤眼の救世主・・・。」
フォルカは目を疑った。
クロムとは、ブレスレッドをつけたもののそばにいる。
ブレスレッドをつけれるものといったら、クロムの研究者と一部の貴族くらいのもの。
フォルカの住むところには貴族どころか研究者もいないので、クロムがいること自体不自然なのだ。
「どうしてここに・・・?」
その時・・・、
「ふせてぇぇぇ~~!!!!」
と大きな声が聞こえた。
「えぇっ!?」
フォルカはとっさに身をかがめた。
---シュンッ!!
何かが背中を通り過ぎたように感じた。
チラッと後を見た。
先ほどまで背もたれ代わりにしていた大木・・・、その大木がこちらに倒れてきた。
「ッ!!!」
フォルカは逃げようとした。
しかし、足が震えて動けない。
(兄さんっ!!)
「クラス、お願い!!」
「・・・了解っ!」
その時、目の前のクロムが猛スピードでこちらに向かってきた。
そして、フォルカの体を容易く持ち上げてその場を離れた。
---ドシィィ~ン!!!
間一髪で、フォルカは大木を避けることが出来た。
このクロムのおかげで・・・。
「あっ・・、ありが・・・」
お礼を言いかけたとき、緑髪のクロムはフォルカをその場に置き、何かに対してかまえた。
「えっ、何か・・いるの?」
「・・・・・・。」
彼女は答えない。
ただ一点を見てるだけ・・・。
「そこの君・・・。」
後から声が聞こえる。
クロムの彼女が反応しないと言うことは、彼女のブレスレッドをつけているのだろう。
フォルカはゆっくりと振り向いた。
目に映ったのは・・・
後ろが短く横が胸くらいまである黒髪、半袖と短パンの動きやすそうな服装をした女の子だった。
「怪我はない?」
「うっ・・・、うん。」
「なら良かった!」
その子はフォルカに向けてにっこりと笑った。
そして手を差し出して、
「私、エリアル・ライシェス。エリアルって呼んでね!」
「僕はフォルカ、フォルカ・ティール。」
フォルカは彼女・・エリアルの手を握った。
・・・、ふと気づく。
「ブレスレッドは・・・?」
「えっ!?」
エリアルは手を振りほどき、フォルカから眼をそらした。
「・・・、エリアル?」
先ほどまでまぶしい笑顔をしていたエリアルの顔が・・・、曇った。
そして、クロムの彼女に、
「・・・、敵は?」
と聞いた。
彼女は、
「・・・、まだいる。」
と短く答えた。
---その時っ!!
草むらから何かが高速で飛び出した。
「・・・ッ!!!」
彼女は瞬時に回避、そして、
「炎素スティア集束・・・。」
両手に炎を発生、そして地を蹴り高速で相手に接近して・・・
「炎打!!」
炎をまとった拳を連続して繰り出した。
「・・・、フンッ。」
相手は瞬時に水素スティアを展開。
「水打!!」
水をまとった拳を連続して繰り出し、相殺。
相殺したと同時に、すばやく足を回転させ蹴りを入れた。
「・・・くぅっ!」
彼女に一撃が入り吹き飛ばされた、・・・相手が悪すぎる。
彼女の攻撃が、まったく通用してない。
「さあ・・、きてもらうぞ・・・。」
相手が彼女の手を掴む。
彼女は気を失っているのか全く抵抗しない。
「クラスゥゥ~~~!!!!」
エリアルは叫び、クラスと呼ばれた彼女のほうに走り出した。
「クラスを離せェェェ!!!」
エリアルは腰についていたものを手に持った。
すると、そのものの先に刃のようなものが形成された。
「・・・、人間風情が。」
相手はエリアルの武器を叩き落した。
「クロムに勝てるとでも?」
そしてエリアルの腹部に一発、蹴りを入れた。
「アァッ!!!」
エリアルの体はいとも簡単に吹き飛ばされた。
「そこでじっとしているんだな。」
「くぅっ、クラ・・ス。」
エリアルはクラスに向かって手を伸ばした。
・・・、届くわけないのに。
(このままじゃあ・・・、だけど。)
フォルカが敵うはずない、二人をものの数分で倒してしまった奴に・・・。
「フォルカ・・・、お・・願い・・・。」
エリアルがフォルカを呼んだ。
「エリアル・・・?」
「・・クラスを・・・、たす・・けてっ!!。」
それは、エリアルの心からの叫びだった。
「・・・・・・。」
フォルカは悩んだ。
---エリアルの願いをきくべきなのか?---
エリアルのほうを見る。
痛みもあるのか、涙が流れている。
(怖いけど・・・、怖いけど!!)
フォルカは下唇をかみ締め、体の震えをこらえたて、
「やめろおおぉぉぉ!!!」
フォルカは走った。
ただただ・・・、エリアルの思いを無駄にしないためにも。
「・・・、まだいたのか。」
相手はこちらを向く。
一撃食らうのは、・・・覚悟していた。
しかし・・・、
(・・・、あれ?痛くない。)
相手のほうを見る。
相手は目を見開いてこちらを見ていた。
「・・・、フィニカ様・・・?」
「えっ!?」
彼女は言った、確かに言った。
兄・フィニカの名を・・・。
「何で兄さんの名前を!?」
「兄・・・、そうかお前が・・・。」
彼女はクラスの手を離した。
そして後を向いて、
「早く連れて行け・・・。」
と言った。
「えっ、なんで・・・?」
「・・・・・・。」
彼女は答えない。
そして、ゆっくりその場を去ろうとした。
「待って、どうしてあなたは・・・兄さんの名を?」
「お前に語ることは何もない・・・。」
彼女はそういって、坂道を下っていった。
フォルカは後を追ったが、彼女の姿はもうなかった。
「・・・、そうだっエリアル!!」
フォルカはエリアルの怪我のことを思い出し、急いで彼女のところへ向かった。
今回も読んでいただきありがとうございます。
少し、伝わりにくかったかもしれませんね・・・。
次の話もがんばって書くので、よろしくお願いします!