03.弱体化する勇者(例外あり)
僕と恋人の神坂愛さんは、旅を続けている。
アイさんが別次元の世界を発見。そこに、スペさんの友達である、大魔王の気配を発見した!
僕らは大魔王に会うため、別次元へと乗り込んだのだった!
「なんだか天気が悪いですねここ……」
僕らの前に広がっているのは、不毛な荒野だ。
草も木も生えていない、ひび割れた大地が、どこまでも広がっている。
空は、真っ暗ってわけじゃない。どんよりとした曇り空。しかも日の光がしないんだよね。
『おほー♡ 心地よいのぅ、ここは~♡』
僕の頭の上で、子犬姿のスペさんが、そんなことを言う。
心地よい?
「アイさんはどう思う……って、アイさん!?!?!?!?!?!?!?」
「ほえ? どうしたの、けーすけくん……?」
そんな……。
アイさんが、アイさんが!
「ちっちゃくなっちゃった!?」
そこに居たのは、外見が5歳くらいの可愛らしい女の子だ。
でも顔はアイさんってわかる!
「あ、アイさん、体縮んでない!?」
「え? そう」
「うん、そう! はい!」
僕はカバンの中から、鏡の勇者さんから借りてる、勇者の鏡を取り出す。
アイさんは自分の姿を見て……。
「あはは! すっごーい! わたしちっちゃくなっちゃったー!」
ケラケラとアイさんが笑っている。
ええー……。
「いや、愛ちゃん。そこ笑うとこじゃないから……」
僕のカバンの中から、ヒキニートさんが出てくる。
本名はヘルメス・洗馬っていうらしい。アイさんの友達で、彼女も勇者……なんだけど。
「ヒキニートさんも、体ちっちゃくなってない?」
『というか赤子になっておるのぉ』
そう……。
ヒキニートさんってば、ちっちゃくなるどころのレベルじゃなかった。
赤ちゃんになってた!
赤ちゃんがしゃべるのって……なんか普通に怖い。ホラー。
「何引いてるのだよ……」
「いやなんか赤ちゃんがしゃべるのって変っていうか」
「君に変って言われるの凄い心外だな……」
アイさんも、ヒキニートさんも縮んでいる。
そのせいで、服がぶかぶかになっていた。僕はカバンから幼児用、子供用の服を取り寄せる。
ややあって。
「多分だけど、勇者の力が制限されてるんだと思う」
アイさんに抱っこされた状態で、ヒキニートさんが言う。
うう、いいなぁ。アイさんに抱っこしてもらえて……。僕も……。
「話聞いてる!?」
「え、聞いてなかったです」
「失礼!!」
「で、力が制限って……どういうこと?」
ヒキニートさんが周りを見渡す。
「ここ、勇者の力の根源たる、光の精霊がほぼいない。つーか、ゼロなんだ」
「力の根源……?」
「うん。ぼくら勇者は、光の精霊の力を借りて異次元のパワーを発揮してるんだ。でもこの世界には光の精霊がいない」
「なるほど……だから、パワー不足で、縮んでるってこと……?」
でもなーんか違和感あるんだよね。
精霊がいないだけで、縮むもの?
そりゃ、パワーダウンするならわかるよ。でも体まで縮むのってなーんか変っていうか。
「せばっちゃんがあかっちゃんになってるのは?」
「あかっちゃんって……。まあぼくは元々の外見的年齢が低かったからかな」
「なるほど! おーよしよし、ママのおっぱい飲む?」
「わー! 服をめくるな! 淑女たれ! アイちゃん!」
きゃっきゃ、と二人が楽しそうにしゃべっている。
一方で僕は首をかしげる。
「おかしいなぁ」
「なにが?」
「だって、勇者は弱体化するってことなんでしょう?」
僕は自分を指さす。
「僕は?」
さっき勇者の鏡で見たところ、僕に外見の変化が見られなかった。
アイさん、ヒキニートさんは縮んでいたのに。僕は向こうの世界での姿と、全く一緒なのだ。
「そりゃ、まあ……」
『そりゃ、のう……』
スペさんとヒキニートさんがなんだか言いにくそうにしてる。
むむ、なんだか仲間はずれされてる感があるぞっ。
「なんでなんで?」
「まあ端的に言えば、君がほら、勇者じゃないから」
「えー!? そんな! 僕はカバンの勇者だよ!?」
ちゃんと異世界から召還されて、勇者の武器たる、聖武具をもらったじゃないか!
『いや、ケースケよ。おぬしはどちらかというと、我らと同族ぞ?』
「そう? スペさんと?」
あ、ならいいかな。
「そのうち七大魔王あらため、八大魔王って呼ばれてもおかしくないね……」
「八大魔王かぁ……」
なんかかっちょいー!
大親友スペさんと同類項っていうのも、悪くないなぁ。
あ、でもでも!
オタクさんやアイさんたち、勇者じゃなくなるのは悲しいなぁ。
うーん……。
「まあ、何はともあれ、ここだと勇者の力はだいぶ制限されちゃうようだね。啓介くん除くで」
「そっかぁ……あれ、じゃあ二人とも聖武具は使えないの?」
ヒキニートさんは窓、アイさんは神眼。
それぞれ聖武具を持っている。
「そうだね、ぼくの窓は使えないかな」
とヒキニートさん。
「わたしは使えるよ!」
「なんでだよ!?」
「わからん!」
確かに、アイさんの目が黄金の色をしている。
「神眼の能力……発動、とう!」
ぴかー! とアイさんの目が輝く!
……。
…………。
………………で?
「あわわ、光ることしかできないみたい!」
「良かった……アイちゃんも一応勇者だったんだね」
「うん!」
ということは、この場で聖武具を使えるのは、僕だけってことかぁ。
敵に襲われたら、どうしよう。やだなぁ。
「アイさん、危ないから、ヒキニートさんと一緒にカバンの中入ってて」
僕のカバンの中は■庭っていって、異空間に繋がってる。
その中なら敵から襲われることもなく安全だ。
大好きなアイさんに怪我してほしくない。
「わたしも一緒についてくよっ。だって……わたし、君のカノジョだもんっ! 一人になんてしないよ!」
「あ、アイさん……!」
なんて……けなげでいい人なんだ!
アイさん……好き……!
『やけるのぅ~』
スペさんが僕の肩の上でニヨニヨ笑う。これはからかってるときのスペさんスマイルだ!
恥ずかしい……うう。
『ま、我もいるし、ケースケもおるからな。何かあっても大丈夫じゃろうて』
「大丈夫、僕がアイさんを守るから!」
と、そのときだった。
『とか言っていたら敵が来たの。あれは……なんじゃ?』
頭上から、なんだか変な魔物? らしき物が降りてきた。
なんだろう、あれ。なんか……生き物っぽくない。
メカ? そう、メカっぽい。
ゾ●ド的な。鳥!
「ぼくの知識にも、あんな魔物みたことないね。そもそも魔物かわからないけど」
『しかし、我の魔力感知にはひっかかったぞ?』
スペさんが魔力を感じ取れたってことは、あれはいちおう生物ってことか。
「迎撃します!」
「わたしもー!」
「え?」
わたしも?
アイさんは腰に手を当て、そして目の横でピースする。
「アイビーム!」
「『え?』」
ビゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
アイさんの目から、黄金のビームが出てきた!
『我の我ビームのパクリじゃあああああああああ!』
「わぁ! ほんとにビームでたぁ!」
『自分で出しておいて何驚いてるんじゃ!?』
放たれたアイビームが、空を飛ぶメカ鳥の土手っ腹に穴を開ける!
そして、爆発四散!
す、すご! アイさんやっぱ強いや!
「あうん……」
アイさんがぺたん、とその場でしゃがみこんじゃう!
「大丈夫!?」
「うん、だいじょーぶ! でも結構魔力もってかれちゃったかも」
アイさん、弱体化してても、一応目からビームで攻撃はできるみたい。
でも、結構消費魔力量は多いと。
「だめだよ、無理しちゃ」
「えへへ! ごめんね! 君を守ろうとして、つい体が動いちゃってさ!」
「あ、アイさん……好き……」
ちゅっちゅ、と僕らがちゅーする。
一方でヒキニートさんが言う。
「しかし……なんだろうね、さっきのメカ鳥」
『知らん。メカじゃ食材にならぬし、きょーみないのじゃ』
【★大切なお知らせ】
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