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【書籍化】カバンの勇者の異世界のんびり旅 ~実は「カバン」は何でも吸収できるし、日本から何でも取り寄せができるチート武器でした~  作者: 茨木野
第3部

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10.弓の勇者vsなぞの魔族



《暗黒竜ジャガーノート視点》


 オレは暗黒竜ジャガーノート。

 憤怒の魔王イラ様の眷属だったのが、気づけば【カバンの悪魔】にぱしりにされていた……。


 あの、ケースケってやつ、絶対に勇者じゃない。

 悪魔だ。やばいくらいに強い上に、ちょっと人として大事な部分がいくつも抜けている気がする……。


 さて。

 オレと弓の聖人様、もとい、勇者様は一緒に行動を開始した。


 あの悪魔と分かれて、ほっとするオレ。

 カバンの悪魔とちがって、弓の勇者様は本当にいいやつだ。


 恐怖で震えるオレに精神安定剤くれたし、優しく話しかけてくれたし。

 ヒキニート、カバンの悪魔と、勇者はやべえ連中ばっかりだと思ってたんだけど、この人だけは違うんだよなぁ。

(※↑ジャガーノートは、ヘルメス・洗馬の名前が、ヒキニートだと思ってる。啓介が連呼していたせいで)


 弓の勇者様を背中にのせ、オレはゲータ・ニィガ国内に残っている、難民たちの救助へと向かう。


星の矢(アサルト・ショット)!」


 人を襲う魔物を、勇者様が鮮やかに退治する!

 

「おけがはありませんでしたかな?」

「「「勇者様ぁ……!」」」


 傷ついた国民に回復薬を無償で提供する、勇者様。

 うん、やっぱり勇者ってこうじゃないとな。


 ヒキニートとカバンの悪魔はやっぱり例外だったんだ。

 あんなん勇者ちゃうわ。


 弓の勇者様は怪我した国民を治療した後……。


「さ、皆の者、安全な場所へ移動するでござるよ」


 そう言って、弓の勇者様は懐から、何かを取り出す。

 それは、鍵だった。


「なんの鍵っすか?」

「セーバー殿からもらった鍵でござる。これを……こうして」

 

 勇者様は何もない場所へ向かって、鍵を突き出し、回す。

 がちゃんっ!


 すると……。


「目の前に扉が現れたっす!」

「これぞ、【扉の勇者】であるセーバー殿の聖武具、【大賢者の扉】でござるよ!」


 セーバー殿ってやつが誰かわからないな。

 勇者様が召喚した扉の向こうには……。


「あれ、弓の勇者様だ!」「どうして?」「何もない空間に扉が現れたと思ったら、勇者様が出現した!?」


 扉の向こうにいたのは、さっきカバンの悪魔が、結果的に助けたことになった、国民どもだった。


「この大賢者の扉は、ドラえ●んで言うところの【どこでもドア】でござる。マーキングした場所へと空間をつなぎ合わせ、移動することができるでござる!」


 どこでもドアってのがなんだかわからないが……。

 ようは、転移魔法のことだろう。


 特定の場所へと転移させる魔法を、勇者様が使ったのだ。

 すげえ!

(※大賢者の扉はヘルメス・洗馬の聖武具です)


「さ、皆の者、扉をくぐって向こうにいくでござる。そっちはケースケ殿が作ってくださった、結界のおかげで、とても安全でござるよ~!」


 魔物に襲われていた国民を救い、怪我を治し、そして転移魔法で安全な場所へと国民を逃がす……。

 まさに、勇者の鑑といえるお人だ。


「ありがとうございます、勇者様……なんとお礼を言って良いことやら……」


 助けられた国民が申し訳なさそうにする。

 助けた謝礼を要求されるとでも思ってるのだろう。でも、村を襲われた彼らにそんな大金があるとは思えない。が……。


「なに! 人助けは勇者の責務! 拙者は拙者のやるべきことをやってるだけでござるから。お礼なんて不要でござるよー!」


 ……ああ、勇者様。あんたいいやつすぎるぜ!

 ヒキニートとカバンの悪魔も見習ってくれ。切実に。あいつら絶対勇者じゃない。


「ありがとうございます……勇者様……」「このご恩は忘れません!」


 ぞろぞろ……と国民たちが避難していく。

 と、そのときだった。


「! ジャガー殿!」


 突如、勇者様が弓を引いて、こちらに魔法矢を放ってきた。


「ぐああああああああああああ!」


 オレは勇者様の魔法矢をもろに受けて、後ろに吹っ飛ぶ。

 いってええ……何すんだ……! と言い終わる前に……。


 ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


 ……さっきオレが立っていた場所に、何かが勢いよく、落ちてきたのだ。

 それは地面に巨大クレーターを作る。


 ……やばかった。

 勇者様が助けてくれなかったら、その何かに押しつぶされて、死んでいたところだ……。


「勇者様!」

「ジャガー殿は下がって……! 魔族でござる!」

「!? 魔族……!」


 クレーターの中心には……奇妙な男が立っていた。

 身長は2メートルほど。フォルムは人間に近い。

 

 だが、腕は6本、生えていた。

 通常の2本に加えて、背中から上下に2対の腕が生えている。


 異形なる見た目。そして、内包するすさまじい魔力量。

 ……魔族だ!


 弓の勇者様はすぐさま戦闘態勢に入る。


竜の矢(レーザー・ショット)ぉ!」


 勇者様渾身の一撃を放つ。

 ビゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 だが、魔族は右の真ん中の腕で、軽くレーザーを払った。

 パシッッ……!


 はじかれたレーザーはいずこへとすっとんでいく……。


「嘘……でしょ……?」


 オレは呆然とするほかなかった。

 あんな威力、スピードのレーザーを、魔族は片手で、まるで羽虫でも払うかのように、弾き飛ばしたのである。


 弓の勇者様の行動は早かった。

 まず鍵を抜いて、大賢者の扉を消した。さっきの連中に危害が及ばないようにという配慮だろう。


「ジャガー殿は逃げるのでござるよ!」


 大賢者の扉は小さくて、オレはくぐることができない。

 オレがこの場から離脱するためには、飛んで逃げるしかないのだ。


「で、でも……じゃあ勇者様が……」

「大丈夫でござる! ここは拙者に任せて先に行ってほしいでござる。なぁに、後からケースケ殿と合流するでござる!」


 ……だめだ。

 あの魔族は、やばい。やばい。まともに戦って勝てる相手じゃない!


 弓の勇者様が、死んでしまう……!

 あんなに優しい人が死ぬのはだめだ……!


 オレは翼を広げて高速飛翔!

 地面すれすれを飛び、魔族に強烈な体当たりを喰らわせる!


 このままやつを吹っ飛ばし、そのすきに勇者様と離脱を……!


 ぱしっ!


「なっ!?」


 な、なんてことだ!

 魔族が、オレの……ドラゴンの強烈な飛翔攻撃を、片手で受けとめやがった……!

 なんて膂力!


「うおお! 星の矢(アサルト・ショット)ぉ……!」


 弓の勇者様が無数に分裂する魔法矢を放つ!

 だが魔族はあいてる腕ですべてを打ち払っていく。


 ……やつは6本の腕が生えている。

 だというのに! 残り四本の腕は全く使っていない!


 武器すらも手に持っていないのだ!

 それで、勇者様と暗黒竜を、相手してる!


 片腕しか使わずに!


「ふぅううう……!」


 弓の勇者様がアイテムボックスから、薬瓶を取り出す。

 それを一気飲みする。


 ドンッ……!


「魔力量が跳ね上がったっす! これはいったい……?」

「生命魔力薬でござる!」


「生命魔力薬……?」

「魔力量を一時的に、増幅させる薬でござる!」


 そんな便利なアイテムが……!

 いや……待てよ。そんなものが存在するのか……?


「うぉおおおおおおおおおおおおお!」


 勇者様はさっきとは見違えるほど素早く動き、無数の星の矢(アサルト・ショット)を放つ。

 矢はすべて正確に、敵の人体の急所へと着弾する。


 やつはオレを手放すと、2本の腕で、勇者様の魔法矢を払っていく。

 押してる……! いける……!


「もらった……!」


 気づけば、弓の勇者様は魔族の背後に回っていた!

 さっきまで魔族の正面にいたはずなのに!?


案山子の矢(ダミー・ショット)! 幻影を作り、相手の目をごまかす魔法矢でござるよ!」


 おお! そんな技まで!

 弓の勇者様は魔族を突き飛ばし、馬乗りになる。

 

 そして魔法矢を構えて、急所である頭を狙う!

 

竜の矢(レーザー・ショット)!」


 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


「やったっすか!?」


 ……だが、土埃が風に吹かれて消えると……。


「なっ!? ゆ、勇者様ぁあああああああああああああ!?」


 勇者様の腹に……。

 黒い【槍】が、突き刺さっていたのだ!


「そ、そんな……どうして……!? 弓の勇者様の竜の矢(レーザー・ショット)で、魔族は死んだはずじゃ……!?」


 いや、違う!

 魔族の隣に、クレーターが出来ている。


 ま、まさか……!


「勇者様、外したんすか!? うそだ、こんな近距離で、魔法矢を外すわけがない! どうして……弓矢を外したんすかぁ!?」


 口から血を吐きながら……弓の勇者様は言う。


「出来ない……拙者には……殺せない、でござる……」

「殺せない!? どうして……」

「だって……この、魔族は……、否、このお方は……【槍の勇……】……」


 かくん、と弓の勇者様が、気を失ってしまった。 

 そ、そんな……勇者様が、あんなに強く優しい勇者様がやられちゃうなんて!


「…………」


 槍持の魔族が、こちらをにらんできた。

 ……死、というイメージが脳裏をよぎる。


「う、う、うあぁあああああああああああああああああ!」


 オレは悲鳴を上げるしか無かった。

 だが……。


 魔族は槍から勇者を引き抜いて、米俵のように担いで……オレの前を素通りしていった。


「…………」


 助かった……のか……?

 いや、違う。オレなんて……弱すぎて、殺す価値もないって思われたんだ……!


「ま、待てよぉおおおおおおおおお! 勇者様を……返せよぉおおおおおおお!」


 だが、オレがいくら吠えても、魔族は振り返らない。

 弓の勇者様を抱えた状態で……。


 逆の腕で、槍を持ち上げる。

 そして……。


 ブンッ……!


「槍を投げた……いったい何を……」


 だんっ! と槍の魔族は、投擲した槍に向かってジャンプ。

 そのまま槍に乗って、どこかへと飛び去ってしまった。


「あ……うぅ……わぁああああああああああああああああああ!」

 

 悔しかった。

 なにも……できなかった!


 敵を倒すことも!

 俺に優しくしてくれた勇者様のため、一矢報いることさえも!


「オレは……オレは……弱い……! なんて弱いんだ……! ううぅう! ごめん……勇者様……ごめんねぇえええ……!」


 オレは悔しくて、ただ……泣くことしか出来なかったのだった。

【★大切なお知らせ】


好評につき、連載版をスタートしました!


『【連載版】スキル【無】の俺が世界最強〜スキルの無い人間は不要と奈落に捨てられたが、実は【無】が無限に進化するSSS級スキルだと判明。俺をバカにした奴らが青ざめた顔で土下座してるけど、許すつもりはない』


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リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。


https://ncode.syosetu.com/n2689ja/

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここにもたおぱいぱいが笑
[一言] カバンの外付け良心回路になんてことを!
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