25.ケースケ覚醒、チャラオ死す!
僕……佐久平 啓介はすっごく怒ってます。
反転魔族とかいうやつが、僕の大好きなオタクさんのいる国を、そして……僕の友達を傷つけた!
だから……僕は、こいつを殺す!
『高慢なる勇魔の鞄……だと……? 何が変わったってんだよぉお!』
反転魔族が叫ぶ。
僕の鞄は、普段使っているものとは、違うデザインをしてる。
色が黒になっている。
そして……デザインも変更になっていた。
「僕の……ううん、僕たちの新しい力だ!」
『僕たちぃ……? は、はんっ! なんだその……ふざけたデザイン! 犬の鞄とか、ふざけてんのかよぉ!』
黒い鞄。
犬耳に、眼、そして口がついてる。
ふざけてなんていない。
大真面目だ。
「高慢なる勇魔の鞄の力……身をもって思い知るといいですよ!」
『は、はんっ! 調子乗るなよくそがきぃ! てめえが、所詮聖武具がなければ、何も出来ないガキなのには変わりねえんだからよぉ!』
ばっ、と反転魔族が腕を前でクロスする。
そして……。
『飛翔斬……!』
ばっ! と両手を開く。
何をしてるのかわからない。
けれど、僕の体が、自然と回避をした。
ズバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
背後の巨大樹(残っていた)が、両断される。
『ちっ、よけやがったか。勘のいいガキだな!』
僕はよけてない。
が、あいつは勘違いしてるようだ。
『ケースケよ、あやつは空気を斬撃に変え、そして見えない飛ぶ斬撃を放ってきていたようじゃぞ』
と、スペさんの声が、鞄から聞こえる。
OK。種は割れた。
「なんですか、あのだっさいポーズ。あんなんじゃ僕は死にませんよ?」
『うるせええ! 死ね! 飛翔斬、八連!!』
ばっ! と反転魔族がまた腕をクロスさせる。
僕は手を前に出す。
「蠅王宝……」
『おまえの弱点はわかってんだよぉ!』
一瞬で、反転魔族が僕の背後に回ってきた。
攻撃を放つと同時に、やつは高速で移動してきたんだ。
僕の弱点。
なんでも吸い込む、無敵の吸収能力、蠅王宝箱。
これを発動させるためには、使用者である僕が、発動を宣言する必要がある。
反転魔族が、さっきの戦闘のように、僕にけりを放ってきた。
僕は神眼でけりをよける。
だが。
『これでおまえの吸収能力は発動しない! 前からは飛ぶ斬撃が8本! 切り刻まれて死ねぇええええええ!』
パシィッ……!
『なにぃいいい!? ざ、斬撃を受け止めただとぉお!?』
僕のカバンから、黒い触手が8本出る。
それらは、飛翔してきた斬撃を、すべて受け止めていた。
『ば、バカな!? おまえは、能力発動を宣言しないと、蠅王宝箱を発動できないはず!?』
『ふ……愚かなり、反転魔族よ』
僕のカバンの表面に描かれた、犬の顔がニヤァ……と笑った。
『今ケースケは、一人で戦っておらぬのじゃ!』
『なっ!? どういうことだ!?』
『我、高慢の魔王スペルヴィアはカバンの勇魔の聖武具と、合体しておるのじゃ!』
『なにぃい!? 聖武具と、魔王の、合体だとぉおお!?』
今僕が装備してるのは、聖武具じゃない。
呪武具・高慢なる勇魔の鞄。
「このバッグには、スペさんの意思が宿っている! 僕が宣言せずとも、スペさんが能力を発動させられるんだ!」
つまり、今みたいに反転魔族に邪魔されても、スペさんの判断で、蠅王宝箱が発動できる!
8本の見えない斬撃を、スペさんカバンが食べた。
「これでもう、今までの作戦は通じないぞ!」
『くっ……! だ、だが……! おれには、黒い聖武具があるぅ!』
反転魔族が手を伸ばすと、そこに黒い剣が収まる。
『この黒い聖武具がある限り! てめえは聖武具のスキルを使えない!』
反転魔族……ううん。
経験値が、僕に斬りかかってくる。
『死ねぇえええええ!』
パキィイイイイイイイイイイン!
『ぐああああああああああああああああああああ!』
経験値が無様に吹っ飛んでいく。
べしゃり、と地面に倒れ込む。
『こ、これは……反射スキル!? ば、バカな! てめえは聖武具のスキルを使えないはず!』
「もう忘れたんですか? 僕のカバンは、聖武具じゃない。呪武具なんですよ?」
経験値さんの黒い聖武具が無効化するのは、僕の聖武具だ。
今の僕は、呪武具を使ってる。つまり……。
「おまえの黒い聖武具は、僕の呪武具のスキルを、無効化できない!」
『ちくしょぉおおお! そういうことか……!!!!!』
高慢なる勇魔の鞄の発動中は、黒い聖武具による無効化を、無効化するのだ!
「これでもう、おまえは僕に攻撃できない!」
『ち、く、しょぉがぁあああああああああ!』
ずずずず……! と経験値の体から、黒い靄が立ち上る。
『どうやら、命を燃やし、それを魔力に変換してるようじゃ。気を引き締めよ』
スペさんの解説、ありがたい。
なるほど、文字通り必死で、あいつは僕を殺すつもりなのか。
「上等ですよ。僕は……怒ってるんだ……よくも……オタクさんの、大事な帝国を。大事な……人々を、殺そうとしやがったな!」
ぴきっ、ぱき……。
『! ケースケの、【暴食の腕輪】にひびがっ!』
「僕は怒ってるんだぞぉおおおおおおおおおおおお!」
ぴきっ、ぱきぃいん!
魔力を食らう、暴食の腕輪が、破壊された。
その瞬間……。
ゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
『うげえあぁあああああああ! な、なんだこの、膨大な量の、魔力はぁああああああああああああああああ!?』
経験値さんが、僕の魔力を見て、驚愕してる。
『ケースケは七大魔王2体と、契約したのじゃ! 魔力量が増えて当然じゃ!!』
ガタガタガタ! と経験値さんが震えてる。
『あ、あ、あぎゃぁあああああああああああ! に、逃げろぉおおおおおおおお!』
尻尾巻いて逃げようとする、反転魔族!
でも……。
「逃がさないよ! 【高慢の魔手】……発動!」
「ど、高慢の魔手ぃいいいいいいいい!?」
僕のカバンが、変化する。
ひもが伸びる。そして……。
ぎゅぅううん!
『ひぃ! 犬顔のカバンが、飛んでくるぅううう!?』
僕のカバンがまるで生き物のように動き……そして……。
がぶり!
『いってぇええ……!? ……え、痛くない……?』
カバンが犬のようにかみついてるのに、反転魔族は、痛がってる様子を見せない。
『まあいいや! にげ……あ、あれ……?』
ぺたん、と反転魔族がその場にへたり込む。
『な、なんだ……? 力が……! 体の力が抜けやがるぅ!?』
反転魔族は、生まれたての子鹿のように、体をぷるぷるさせている。
何度も立ち上がろうとするけど、だめ。
「高慢の魔手の効果は、スペさんカバンがかみついた相手の、レベルを0にするんです」
『弱体化のスキル!?』
「そう……今のあなたのレベルは、ゼロ! これが……どういうことかわかりますか?」
さぁ……と反転魔族の顔から、血の気が引く。
『い、いやだぁ……! いやぁああああああ! 助けてぇえええええええ! 死んじゃうぅううううううううう!』
泣きわめきながら、反転魔族が逃げようとする。
でも、高慢の魔手が発動してる。
やつのレベルはゼロ。
筋力のステータスも、ゼロ!
つまり逃げられない!
さらに、防御力も、ゼロになっている!
『魔族よ。今おぬしは、弱体化されてる。そんな状態で、七大魔王×2の力を宿した、ケースケに殴られたら、跡形もなく消し飛ぶのは必定』
今魔族は、アリも同然。
そしてこちらは、巨象のごとき力を持っている。
僕がちょいとでもつつくだけで、こいつは死ぬ!
『おねがいしますぅううう! たすけてくださいぃいいいいいい! 死にたないんですうぅううううううううう!』
カバンにかみつかれた状態のまま、泣きわめく経験値……。
「安心してください」
僕はにっこりと、笑った。
魔族の顔に、笑顔が戻る……。
「一撃で殺すなんて、ぬるいこと、するわけないでしょ?」
僕はカバンの口に手を突っ込む。
「高慢の聖剣……発動!」
僕が取り出したのは、短剣の勇者さんから借りた、勇者の短剣。
しかしこいつのせいで、大事な短剣の刃が折れてしまっている。
『高慢の聖剣……!?』
折れた短剣を、カバンの口から完全に出す。
ブゥウウウウウウウウウウウウウウウン!
『ら、ライトセーバー!?』
刃の部分が、紫色の光る刃になって、振動してる。
なるほど、ライトセーバーか、言い得て妙なたとえだね。
「これは、高慢の聖剣。その効果は……」
僕は高慢の聖剣を手に、魔族に斬りかかる。
『あぎゃぁああああああああああああああああああああああああ!』
悲鳴を上げる、魔族。
だが……!
『はぁ……はぁ……い、生きてる……? なんで……!? 生きてる!? 痛みはあるのに……!!!!!』
「高慢の聖剣の効果。この剣では、決して生物を……殺せない!」
『は、はぁ!? なんだよ……殺せない武器なんて……意味……あ……あ……あああ……!』
やっと気づいたようだ。
「そう、この高慢の聖剣は、殺せないだけ。【相手にダメージを与えられない】剣であり、【相手を決して殺せない】」
高慢の魔手によって、相手がレベル0状態であっても、高慢の聖剣じゃ、決して殺すことができない。
けど!
殺せないだけだ!
斬られたことによる痛みは、発生するのだ!
『レベル、防御力を下げた状態で、たこ殴りできるってことか……。しかも、いくら斬っても死ぬことがないとか……こ、こえええ……』
ヒキニートが何か言ってるけど、無視。
僕は高慢の聖剣を手にもち、構えをとる。
『ま、待ってくれ! お願いだ! 反省してる! 反省してるから! だから助けてお願い助けてぇええ……!』
「僕は……今、大魔王を2体、収納しました。結果、ミサカさんの呪いを、1つ……解くことができました」
その結果。
僕は、中級・聖剣技を使えるようになった。
『あ、あなた様の目的は達成されたはずでしょ!? ね! 呪いを解くのが、あなた様の使命だったはず!? こんなゴキブリを潰さなくてもいいじゃないですかぁ……!?』
泣きわめく、反転魔族。
『自分をゴキブリて……どんだけ生き汚いんだよこいつ……』
ヒキニートさんがあきれてる。
僕は、また笑った。
いや……嗤った。
「あなた、さっき帝国を爆破して滅ぼそうとしましたよ? あなたは、相手に命乞いする暇を与えましたか?」
『あ、あ、あ……』
「おまえへの答えは……NO! だ! オタクさんの愛した国を、ぶっ壊そうとしたおまえを! 絶対許さない!」
『い、いやぁああああああああああああ!』
僕は、聖剣技を発動させる。
中級聖剣技!
「百花繚乱……!」
僕の体に、大勇者の力が宿る。
今まで以上に、強い力だ。
僕の体が、高速で……ううん、神速で動く!
ズバンッ……!
神眼をもってしても、目で追うのがやっとの1撃。
中級聖剣技・百花繚乱は、この神速の一撃を、100回!
100の斬撃を、一瞬で食らわせる技!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!!!!!!」
『うぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!』
防御力0状態+中級聖剣技×100!
とてつもない痛みが、暴力の嵐が、相手に襲う……!
けれど!
決して死ぬことが出来ない!
『え、えぐすぎるだろ……あんだけ攻撃食らっといて……死ねないとか……』
どさっ! とゴキブリ魔族が倒れる。
『あ、あひ……あへ……あぇえ……』
相手は文字通り、虫の息だ。
『だ、だずげ……だ……ずげてぇ……』
『お、おい啓介君……もういいんじゃないかい? あんだけ痛みを与えたんだから許してあげても……ひっ!』
ヒキニートさんがおびえてる。
僕は……嗤っていた。
「スペさん、おかしなこと言ってますよね?」
『うむ、そうじゃのケースケ』
僕と、カバン状態のスペさんが、嗤う。
瀕死の虫けらに。
「『おまえまだ、生きてるじゃない?』」
高慢なる勇魔の鞄が、黒く光りだす。
「高慢なる勇魔の鞄……最終奥義!」
僕はカバンを手に取って叫ぶ。
『狼王魔閃光!』
瞬間……。
スペさんカバンが、巨大化。
犬の口が、大きく開く!
そして……口にエネルギーがたまっていく……!
『こ、これって……まさか! フェンリルの……ビーム!』
「そう、狼王魔閃光。これは……僕が与えたダメージをエネルギーに変え、ビームにして放つ技!」
こぉおおおおおおおおおお!
「この与えたダメージには、高慢の聖剣が与えるはずだったダメージも、加算される!」
『はぁ!? なんだよそれ! け、結局高慢の聖剣のダメージを、最終的に相手に与えるんじゃないか! どこが不殺だよ! 殺意マシマシだよ!?』
ヒキニートさんの言うとおり!
高慢の魔王は、決して優しくない。
「僕はオタクさんほど、優しくないんだよ! くらえ! 我ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーム!」
かっ……!
ビゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
……ゴキブリ魔族は、主従我ビーム(今命名)を受けて、完全消滅。
いや……違う。
ひゅうううううう………………。
ぽとっ。
首だけを残して、消滅していた。
「蠅王宝箱!」
黒い触手が、ゴキブリ魔族をつかむと、カバンの中に収納。
「経験値、ゲット!」
『我らの完全勝利じゃ!』
「『いえーい!』」
その様子を、ヒキニートさんが震えながら見ていた。
『いや怖ぇよ! 啓介君が魔王だよ! 第八の魔王だよ!』
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