134.
その後も、アイさんの快進撃は止まらなかった。
トラップはもちろんのこと、襲い来る凶悪な魔物たちも、彼女が『神眼』で睨むだけで次々と爆散していく。
『だから、それ看破じゃねえし! ただの破壊衝動の具現化だから!』
ヒキニートさんが虚空から泣きそうな声でツッコミを入れる。
「え? 看破って、見て、物理的にぶっ壊すって意味じゃないの?」
『ちげえよ! アイちゃん! 頼むから辞書を引いてくれ!』
「いや、アイさんが正しいよ。アイさんが正しいに決まってる」
僕が力強く肯定すると、ヒキニートさんとリコが同時に冷たい視線を向けてきた。
『……なんなのお前。彼女に洗脳でもされてんの?』
「ケースケさん、いくらなんでも全肯定ボーイすぎますぅ……」
呆れる二人をよそに、僕たちはさらに城の奥へと進む。
だが、ここで奇妙なことに気がついた。
どこまで歩いても、一向に前に進んでいる気がしないのだ。同じような黒曜石の回廊が、延々とループしている。
「……おかしいね。幻術かな?」
「ううん、幻術なら私の看破でとっくに吹き飛んでるはずよ」
アイさんが不思議そうに小首を傾げる。
確かに、彼女の神眼を誤魔化せる幻影など、この世に存在しないだろう。
だとしたら、答えは一つだ。
「通路そのものを、物理的にねじ曲げているのか。……相手も中々やるようだね」
「ノットーリ!!」
突如、奇妙な奇声が廊下に響き渡った。
すたっち! という無駄に軽快な着地音と共に、僕たちの前方の空間が歪み、一人の人影が飛び出してきた。
「な、何奴っ!?」
リコがビクッと肩を揺らして身構える。
現れたのは、派手な道化師のような衣装を身に纏い、顔の半分を仮面で隠した魔族だった。
「よくぞ見破ったな、人間ども! 我が名は魔族が一人、『イチゾクロート・デ・キエリュウ』!」
バァァァン! と、キエリュウは自信満々にポーズを決めた。
だが、その名前の響きに、僕たちは思わず顔を見合わせてしまう。
「……イチゾク、ロート……?」
「『一族郎党出消え竜』……? なんか、すごく縁起の悪い名前ね」
アイさんが的確すぎる指摘をする。
立ちはだかった強敵の登場にも関わらず、僕たちはどこか気の抜けた空気を漂わせるのだった。
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※2/20(金)
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