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【書籍化】カバンの勇者の異世界のんびり旅 ~実は「カバン」は何でも吸収できるし、日本から何でも取り寄せができるチート武器でした~  作者: 茨木野
第4部

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131/138

131.

 魔族王の城門へと続く巨大な跳ね橋。

 その手前で、僕たちの足が止まった。


 バチバチバチッ!


 空間が紫色の火花を散らしている。

 目に見えない巨大なドーム状の壁が、城全体を覆い尽くしていたのだ。


「あ、あわわ……っ! これは『絶望のとばり』です!」


 リコが顔面蒼白で叫ぶ。


「魔族王様直属の『結界師団』が百人掛かりで展開している、物理・魔法完全遮断の絶対防御です! 正規の手順で解除しない限り、蟻一匹通れません!」

「へぇ。なるほど」


 僕は興味なさげに鼻を鳴らす。

 確かに高密度の魔力だ。

 普通の魔法使いなら、触れた瞬間に黒焦げになるだろう。


「蟻は通れないかもしれないけど、僕たちは通るよ」

「えっ? で、でも……どうやって……」

「スペさん、出番だよ。起きて」


 僕は自分の頭の上で丸まっている、白い毛玉をツンツンと突いた。


『むにゃ……? なんじゃ主殿、良いところで呼び出しおって。昼寝の最中じゃったのに……』


 僕の頭上から、不満げな声が降ってくる。

 そこにいたのは、手のひらサイズの愛らしい子犬――の姿をした、神狼フェンリルだ。

 普段は魔力節約と昼寝のために、このサイズに縮んで僕の頭を定位置にしている。


「散歩の時間だよ。目の前のコレ、邪魔だからどかしてくれ」

『ん? なんじゃ、ただの魔力の壁ではないか』


 スペさん――スペルヴィアは、僕の頭からピョンと飛び降りた。


 スタッ。


 地面に着地した瞬間、彼女の愛らしい姿がブレる。

 影が爆発的に膨れ上がり、周囲の空間を圧迫するほどの神気が溢れ出した。


『こんな薄皮一枚で、我と主の道を塞ぐとは片腹痛いのう』


 光が収まると、そこには月光のように輝く銀色の毛並みを持つ、巨大な狼が顕現していた。

 見上げるほどの巨体。

 金色の瞳は、あらゆる生命を威圧する王者の輝きを放っている。


「ひぃっ……!? お、狼……!? さっきまで可愛かったのに!?」


 リコが腰を抜かす中、スペさんは巨大な鼻を鳴らした。


『退がっておれ、小娘。巻き込まれても知らぬぞ』


 スペさんは一歩、前へと踏み出す。

 彼女は結界に向かって、その強靭な顎をカッと開いた。


「えっ……ま、まさか……!?」


 リコの絶叫を置き去りに、スペさんは躊躇なく、その不可視の壁へと喰らいついた。


 ガブッ!!


 ベキベキベキッ!!


 硬質な音が響き渡る。

 何もない空間に亀裂が走り、紫色の電撃が悲鳴を上げて飛散した。

 スペさんは、最高位の防衛結界を、まるで薄焼き煎餅か何かのように噛み砕いたのだ。


『バリ、ボリ……。ふん、湿気ったビスケットの味がするわ』

「好き嫌いするな」

『文句を言うな。ほれ、通れるぞ』


 パリーンッ!


 スペさんが食い破った大穴を起点に、城を覆っていた結界全体がガラス細工のように崩壊した。

 紫色の空が晴れ、城への道が完全に開かれる。


「……う、嘘ぉ……」


 リコが呆然と口を開けている。


「魔界最強の盾が……たった一口で……」

「さあ、行こうか。魔王様が首を長くして待ってるはずだ」


 僕はスペさんの背中をポンと叩き、崩れ落ちた結界の破片を踏みしめて城内へと足を踏み入れた。

【お知らせ】

※2/5(木)


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