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急) 決着 


ラピュータ、天空のプレートの上には様々な施設が存在する。牧場や実験場、研究施設等は最たる例で、各施設で働く職員用の娯楽施設も存在する。ラピュタ―における最大の目標は人類の魂を並列稼働させる事にあり、群れである人類を一つの肉体に集約させる事が目的であった。当然、外界への対策は万全を期しており一般的な重火器の他に、魔術と独自のテクノロジーを融合させた警備システムを完成させていた。当然、日本における最強戦力であるノクターンという存在への対策も為されていた。現実を書き換える変換能力を中和可能な能力を生産し、あらゆる技術を用いて量産し、ラピュータの周囲を結界のように編み込んでいたのだ。それを内側から解除したのが、バチカンの特別作戦部隊で、異端狩りであった。ノクターンの侵入を許してしまったが最後。世界の中心は彼女になり、敵も味方も無くなった。独自の領域加工した兵装で武装した異端狩り彼ら以外は、全て彼女の手中に収まる事になったのだ。ラピュータ独自の水面下で動いていた反補完計画の人員も例外ではなかった。


「…」


そして、異端狩りの目的は二つ。ラピュータ内部の神を冒涜する残虐非道なる研究データの焚書、そしてもう一つは、ノクターンの抹殺。認知機能への強制自動介入という無敵の能力は、あまりにも危険視されるものだったのだ。今回ノクターンの護衛についていたのは、童貞同盟という最上位組織の戦力の一部。衝突は避けられないものだったのだが、あらゆる暴力を得意とする超越種すら混じっていた童貞同盟の戦力は、異端狩りに対して本来優位なものだった。ノクターンの能力を無効化する兵装を解除さえすればその時点で勝利は確定的であった。しかし、童貞同盟は、最高、最強、無敵で敗けたことなど一度も無かった存在であったが、ここに来て、童貞同盟は異端狩りに対して完全勝利をする事は出来なかったのだ。なぜなら、異端狩りもまた、童貞、あるいは処女で構成されていたからである。


「…っち!」


結果として、童貞同盟はラピュータの研究データの強奪のみ許してしまった。天使の翼を生やした異端狩りの一人は、ラピュータから飛び降り去っていった。ラピュータ襲撃以前は仲間内として行動を共にしていた彼らであったが、この結果はお互い想定外なものになっていった。


事態が落ち着き、ラピュータの管理はなし崩し的にひりあ同盟が管理する事となった。これらの奇襲作戦における内部の裏切り、紛争もあったが、バチカン側は表面上、作戦を大成功として報じていた。そして真実は一部の上層部にのみに留まる事となったのだった。


一方地上では。


地の利は明らかに如月側にあり、委員会側の警備兵はすべからく捕縛される結果となった。


「殺してないんですね」


如月が警備兵に尋ねた。


「ここでの殺生は望ましくないですから。やむをえない事情がない限りは」


それを聞いて如月は苦笑いをしつつ、生け捕りにした捕虜を本庁のブラックサイトへ連行してゆくことを指示した。


「よくやってくれましたね、花梨」


「バフデバフ最高の環境で負けるわけないでしょ。ここどこだと思ってんのよ。本部も目と鼻の先だしね」


花梨は吐き捨てるように言った。


「私達の目的は達成した」


携帯端末からの受信に笑ったバチカンからの使者が如月に宣言した。


「おそらく太平洋からマリーンの応援要請が来るだろう。しかし無視してかまわない。時間稼ぎは得意らしいからな。それじゃ、童貞君に宜しく伝えておいてくれ」


そう言って去っていった。


「今後の事後処理に役立ってくれそうなカードにはなるか」」


如月は死屍累々の警備兵を見ながら呟いた。端末からの連絡を受け、如月直属の部下はラピュータでの作戦は概ね成功したことを告げた。


「ありがとう。悪いんだけど、また仕事をお願いします。夜宮さんの警護とアガルタへの先導を今すぐに」


そこまで言うと、如月は若干視界が揺らめいた。体力の限界は既に超えていたが、やるべき仕事が残っているので気力でなんとか踏ん張った。おそらく彼女の最盛期の半分以下の戦力であろうと自分自身で思っていたが、それでもなんとかまだ立っていられる事に、誰となく感謝し、電話口でまくしたてるように言った。


「ダークウェブで最高額の懸賞金をかけられた。もう通常の手段では対処できる事態ではありません。事態が収束するまで、アガルタでバカンスしてもらうしかない」


「既に彼らにはガードをつけてます。ついでにそのまま向かってもらいましょう。マリーンの原水からの救難信号も来てますし」


「救難信号の内訳は?」


「濃霧と海賊で難儀してるようですよ。おそらく、バチカンの妨害工策でしょうけど。マリーンのご一行には物見遊山のVIPと貴族も乗ってる。10%以上のリスクは冒せない。いーんじゃあないですか?アガルタへの切符が、鴨がネギを背負ってやってきた感じですよ?」


「…渡りに船ね。こっちには警備兵の捕虜がいる。田村さんは?」


「病院です。何重もの結界の外側からおっかない連中が群れをなしてこじ開けようとしてたらしいです。まぁ命があるだけラッキーですね」


「分かりました。作戦の立案と実行をお願いします。任せましたよ」


「任されました」


数少ない直属の部下に大変な役目を押し付けると、気が緩んだせいか、如月は寒気を覚えた。体内の魔力が枯渇しているダウンプア状態に陥り、自らの生命維持活動に支障が来ていると悟った。こういう場合、一番良いのはいっぱい食べていっぱい寝る事だけである。


「悪いんだけど、花梨ちゃん、家まで送って頂戴」


「お酒で慣れてる」


花梨は苦笑いを演じたが、自分が将来こうなるのかと思うと、戦慄した。そして改めて気付かされるのである。最前線の現場で戦う魔法少女の重みを。


一方、如月の奮闘してる諮問会議の前後。夜宮は、おそらく今後一度あるかないか、これまでに一度も無かった彼のアイデンティティを揺るがしかねない 事態に陥っていた。否。彼もまた、戦っていたのである。己の全存在を懸けて。最強にして最大の敵。それは、自分自身なのである。話は少し遡る。


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