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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
最終章 モブでも踏ん張って幸せになります
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9 レイナ視点


「レイナちゃんはいいなぁ~。羨ましい」


小さい頃から聞き慣れた言葉。

だけど、私はそれを言われる度に、何をそんなに他人を羨む事があるのか理解できなかったし、そう考えるみんなが可哀想な人に思えた。


──人を羨むのも大変だな…


そんな事も思ってた。

だって、そんな気持ちになった事がなかったから分からない。


「自分にないものは羨ましいものよ」


そんな事をお母さんは言ったけど、全然理解できない。

自分にないものって何?

いくら考えても出てこない。


何かをしようとしたら、困ることは沢山あるのは私も知ってる。

学校でもそういうのってあるしょ?

ほら、文化祭とか体育祭とか、研修とか部活でもイベントがある時って特にいっぱい出てくる。

どれも確かに簡単なことじゃないけど、それでもそれっていつの間にか解決しちゃう。

そういうものだと思うの。


だって、自分にないものを持ってる人がいるなら、羨むんじゃなくて貰えばいいもの。

困ってたら、誰かから貸りて来ればいい、でしょ?


文化祭で看板をもっといいものにしたいなら、センスのいい子が手伝ってくれた。

体育祭で応援団の振り付けだって、ダンス部の子が相談に乗ってくれた。

研修のしおりだって、いろんな人が頑張る私を気にかけて色々と声をかけてくれたし、部活だって部員のみんなが私を励ましてくれて私はいろんな事をやり遂げる事が出来た。


一人の力じゃ決してなかったのは分かってるよ。

みんな私を親切に助けてくれた。

だから、私、頑張ったんだよ?


なのに羨む必要なんてある?


ないなら私が頑張ってちょっと助けて貰えばいいだけ。

本当だよ?


だって、沢山の人が私を褒めてくれた。


「さすがレイナちゃん」

「やっぱり、レイナちゃんだね」


必ずそんな言葉をかけてもらえる。

だったら、全て成功でしょ?


「レイナってアイディアに溢れててるよね」


そんな言葉もあった。

別に特別なものだって思った事なかったから、私は「そうかな?」って答えた。

頭にあるものを出しているだけだから、自分がすごいなんて思った事もない。

だけど、みんなはそう思わなかったみたい。


「そうだよ。すごいって、そう簡単には思いつかないよ?」

「何でもアイディアが出てくるなんてすごいよね」

「レイナみたいなのがクリエイティブな人って事だろうね」

「わかる。すごく個性的だしね」


そんな言葉を沢山言われた。

褒め言葉で溢れかえるのはいつもの事だけど、言われたらいつでも嬉しい。

すごく満たされた気分になるの。

自信に繋がるし、私がもっと頑張らなきゃなって思った。


だから羨む必要なんてない。

わざわざそんな感情を持たないといけないだなんて本当に可哀想。


「お前、佐々木の真似してる?」


そういえば、ある男子が美々ちゃんにそんな事を言った。


美々ちゃんは、中学で知り合ったけど、すごく居心地が良くて私の大親友。

美々ちゃんに「すごい」って言われると、他の人の時と違った気分になる。


男子にそう言われた美々ちゃんは青ざめた顔で固まってた。

みんなこそこそ言ってる。

本当だ、美々ちゃんと私、持ってるものが全く同じ。


──あ、お揃いが多いなって思ったけど…


私もびっくりしちゃった。


だって、私の持ち物は私が全部見つけていいなって思った物だから。

お揃いで買ったのも、私がいいなって思ったもの。

何か欲しいものがあって探す時、不思議と欲しいもののイメージがすぐに湧いた。

一眼見て、「これだ!」って思うものも多かった。


だから、すごい偶然だなって思ってたら、男子も周りの人も違うって言い始めた。


「全く一緒なんておかしいだろ?」


おかしいと言われて、私は上手く説明できなかった。

だってお揃いで買ったもの以外は合わせたわけじゃない。

美々ちゃんが私を好きで真似したのかも。

でも、すごく辛い顔をしている美々ちゃんは本当に可哀想で助けてあげたかった。


「偶々だって。ほら、私も中西と同じシャーペンもってるし」


私が男子にそういうと、その場はおさまった。

後で「レイナは優しいよね」なんて言われた。

私は苦笑いして「当然だよ。友達だもん」って答えた。

だって私と美々ちゃんは親友だから、真似されても許されるべきだよね?

そう思ったけど、美々ちゃんはそこからしばらくして変わってしまった。


高校になると、私とは違う友達といるようになった。

私がその輪に入ると、美々ちゃんはその輪からいつの間にか消えてた。

一人でいる事も多くなって、前みたいに話したりしてくれない。

同じ駅で部活も同じだから学校の行き帰りはお話できるけど、それ以外は美々ちゃんが話してくれなくなった。


──美々ちゃんが変わっちゃった…


すごく残念だった。


私は人に好かれる方だけど、中には私を嫌う人もいた。

私のやる事に「それっておかしいんじゃない?」っていう人も、助けてくれたのに「何で佐々木さんの手柄になってるの?」とか意地悪をいう人も時々だけどいた。

けど、それはその人がおかしかった。

だって、みんな私の方が正しいって言ってくれる。

その人は責められていつの間にかいなくなることの方が多かった。

可哀想だけど、自分がおかしいって気づけなかったんだから仕方ないよね?


美々ちゃんもその人たちと同じようになっていった。

私がやろうとすることに口出ししたり、邪魔しようとしたり、本当に意地悪な人になっちゃった。


──私がこんなに頑張ってるのに…


美々ちゃんも可哀想な人だった。

だから、私は手を差し伸べて、正しい道を教えてあげないといけない。

そうすればみんな「ありがとう」って言ってくれるもの。

間違ってないでしょ?


だから、私は美々ちゃんと仲良くしてあげてるのに、美々ちゃんは変わらない。

誰かが言ってた。

美々ちゃんは私の真似して目立とうってしてるって。

私を避けたり避難するのに真似したりしないといけないなんて──本当に可哀想。


しかも、いきなり部活まで辞めるって言い始めた。


──私はこんなに美々ちゃんを思って、頑張っているのに、なんで美々ちゃんは酷い事ばかりするの?


分からないし、どんどん孤立しようとする美々ちゃんが可哀想な人にしか見えなくなった。

親友だから助けてあげようとしたのに、美々ちゃんはそれを拒否して──


目を開けたら不思議な世界にいた。

けど、目の前には見た事のないすごく素敵な人がいた。


──この人がいい


美々ちゃんと出会った時よりももっと心が躍った。

ドキドキして、熱が込み上げるのが止まらなかった。

多分、一目惚れだったんだと思う。


ノア様は私の初恋だった。


最初は混乱したし、びっくりしたけどみんな親切で私は救われた。

ここにも私の居場所があるんだって、すごく安心したの。


けど、ミンディさんって人がすごく意地悪だった。

何でか分からないけど、ノア様の話を聞こうと思っただけなのにすごく警戒してきて、それにこんなに親しくしてあげているのに、冷たい態度ばかり取ってくる。


誰かが言ってたけど、ノア様と中々会えないのも彼女が邪魔してるんだって。

マリッサさんも、ノア様をストーカーみたいな行為をして困らせてるって。


──友達って言ったけど、ノア様の優しさを利用してるだけなんだ…


最初、美々ちゃんみたいにミンディさんにも惹かれたのに、すごく残念。

しかも、ミンディさんも私の真似をしてるみたい。


「レイナ様と同じ服装だと思ったら…あの女官でした」


ベイリーが教えてくれた。

私が狩猟大会で着ていたものと似たものを着てたみたい。


──私が思い付いたものなのに…


ミンディさんも可哀想な人だったみたい。


ミンディさんは美々ちゃんよりもすごく意地悪だった。

私が正しいことを言っても全て否定するし、自分の考えを押し付けてくる。

しかも、ミンディさんに何か吹き込まれたのか分からないけど、ノア様もすごく冷たい。

私に会いにきてくれないし、ミンディさんと結婚したいだなんて変な話をしていた。

もしかして弱みを握ってそんな事言わせてるかもしれない。


だって、そうでもしないとノア様はそんな事いうはずない。

ノア様は私の初恋なんだから、ミンディさんを好きになるなんてありえないもの。


──ミンディさんも可哀想な人…


そんな人に振り回されるみんなも可哀想。


──私が頑張ってあげないと。


そう思った。

そうすれば、きっと全てがうまくいくから。


すぐに私がミンディさんを気にしなくていいようになった。

だって、私は聖女の力を持ってたから。

それが分かると色んな事がとんとん拍子だった。

ノア様とは遠征でも支えることができたから、婚約目前まで来てるみたい。

私の周りの人が色々と教えてくれた。

ノア様は忙しくて中々会えないけど、ノア様のお屋敷で住むようになった。

きっと私を守ってくれてるんだ。

嬉しくて、今までで一番満たされた。


ほらね。

私が頑張れば全てが上手くいく。

私はただ私を信じて頑張ればいいだけ。

間違ってない。

今まで間違ったことなんてないもの。


ノア様が会いに来てくれない代わりに色んな人が会いに来てくれた。

中でもスコットレット伯爵って方がすごく助けてくれるみたい。

彼の家の出身の方が多かったから絶対そう。


私には味方ばかり。

やっぱりミンディさんは間違ってる。


私がノア様と結ばれるんだ。

そう信じてたら、全て上手くいく。

そうなるはずなのに……



「おかしい…」


私は部屋の中で呟く。

誰も来ないこの部屋で、私の声だけがその空間に落ちて床に吸収される。


「何で?」


この言葉を繰り返す。

凱旋式で全てが変わるはずだった。

みんなに祝福されて、私は可哀想なミンディさんの罪を自覚させて──

なのに、私はひとりぼっちでどうすることも出来ない。


「ノア様…」


この部屋に閉じ込められてしまう前、ノア様が私に会いに来てくれた。

だから、私は必死に訴えた。



「ノア様!私、嵌められたのです!助けてください!ノア様もミンディさんに弱みを握られているからって負けちゃダメです!!もっともっと!」


そう言って、彼の腕に手をかけようとしたら──


「やめてくれ」


ノア様がすごく冷たい声で私に言った。


「…え?」


期待とはかけ離れた温度の声に私は固まった。


「君に対して僕に出来ることは何もない」


ノア様の表情も温かみが全くない。

なぜか、私を憎らしげに見つめる。


「君に何かをするつもりもない。これ以上君に関わりたくない。彼女をこれ以上苦しめないでくれっ…」


ノア様は私を睨みながら言った。


「もう少し、君が考える事の出来る人なら…こんな結果にはならかった」


綺麗な彼の瞳が鋭い。

私は全てが固まってしまったみたいに、言葉が出てこなかった。


「僕にこんなことを言わせた………こんな状況を作って彼女にあんな思いをさせた君を…………僕は絶対に許せない。許すつもりもない。」


冷たい氷をぶつけられ続けているみたいだった。

彼の言葉を聞くたびに、冷え切ってくる。


「だけど、何もするつもりはない。君にもう関わりたくないんだ…」

「な、何で…」

「君を哀れに思う気持ちはあるからだよ」

「哀れ……??」


──可哀想って事?


その言葉が痛かった。


「君も偶然がなければ、こっちに来る事なんてなかったはずだ」


それはまるで私がノア様に会わなければよかったみたいな…


ノア様はそう言って私に背を向けた。


「もう会わなくて済む事を祈るよ」


そして、そのまま去ってしまった。

いくら私が叫んでも、何を言っても振り返ってくれなかった。



──何で?何で?


考えたけど分からない。

だって、私は間違ったことなんてない。

なのに──


「何で誰も間違ってないって言ってくれないの…?」


あの時、誰もそう言ってくれなかった。

いつも誰か言ってくれるはず。

手を伸ばしてくれる。力をくれるはずななのに…


美々ちゃんが昔私に言ったことがある。


「レイナは物語の主人公みたい」


物語の主人公は正義でしょ?

そうでないとおかしい。

だって…だって…


そう思って顔を上げたら私の顔が鏡に映った。


「いやっ!いやぁああ!」


私はその表情に震えた。

だって、姿、顔、全部が可哀想な人に見えたから。


あの時、男子に責められた美々ちゃんにそっくりだった。


「誰も助けてくれないの?頑張ったのに…あんなに頑張ったのに…」


側には誰もいない。


「可哀想?私が…?私が可哀想?」


そんなわけない。

可哀想なのはみんななのに。


「ミンディさんのせいよ…全部…」


どろどろとした気持ちが湧いてくる。


羨ましい。


だって、だって、私が彼女の立場になりたかった。

知らない感情。

ありえないと思っていた感情。

なのに私の中にそれが生まれた。


でも、それを受け止めてくれる人はいない。

ただ、羨むばかりで出来ることは何もなかった。

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