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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
最終章 モブでも踏ん張って幸せになります
103/112

7

私達が帝都に帰るとさまざまな事がどんどん進んでいった。

勿論、夜会は中止になって、私もノアも処理に追われた。


まず、スコットレット伯爵について。

そこら辺は現在も調査は進行中だが、スコットレット伯爵はまず極刑は逃れられないみたい。

レモラの事とかいろんな事がボロボロと明らかにされている。


ミンタ男爵やその他の関係者ももう一度精査しているけど、中には積極的に協力している人もいたから、彼らも重い罪が課せられると思う。

でも、チェイスやミンタ男爵など脅されてどうしようもなかったって人たちには温情が下されるかもしれない。


そして、ノアの誘拐の件。

ノアの証言もあってグリード国で間違いはない。


だけど、例のリリアーヌ女王もノアが見た年配の男性も先に脱出したようで、商団に扮した彼らにはグリード国だと証明出来るものが何もなかった。

こちらには彼らの情報が少ない。大使館の大使からもスコットレット伯爵からも情報は得られない。


何より、同盟を望んでいるグリード国に高圧的な事をすれば、他の同盟関係に亀裂が入る可能性がある。

何百年積み重ねてきた帝国の威厳は少しずつ薄れてきているのも確か。

だから元老院は聖女を手放せずにいる。


結局、なすすべ無しかと思いきや、ヴェロニカが手を挙げた。


「他国を刺激せずに、グリード国を大人しくする方法があります」


ということで、この一件はオリエンス公爵家に一任されることとなった。

何故そんな容易に事が運んだのかというと、それはママさんが全て知っていた。


「まぁ、ミミちゃん気付くのが遅かったわね」


ママさんが笑顔で言った。


「リリアーヌに会っても気づかないなんて、私が平和的に育てたおかげで」

「君が色々と鋭すぎるだけだ」


パパさんが頭を抱えた。

私は目を丸め、何度もパチクリした。

話が全く見えない。


ノアから聞いたリリアーヌ女王の話が出ると、ヴェロニカが私に言った。

「ミミの疑問はウルグス夫人が解決してくれるわ」って。

だから、聞いてみると、ママさんは少女のような悪戯な笑みを浮かべながらさっきの言葉を言った。


「えっと…お母様はリリアーヌ女王と知り合い?」

「あら?まだ分からない?ミミちゃんはちょっとおマヌケさんかしら?」

「えぇ……」


困った顔をするママさんだけど、私は全く把握できない。

そんな私にママさんが一つずつ教えてくれた。


「知り合いっていうか、私の妹ですもの。私ね、前はバーバラって名前だったのよ?」

「ん?」


そう言って、ママさんが語る内容は転生したことよりも理解し難い内容だった。

私は一気に教科書の内容を詰め込まれていた気分になり、頭をくらくらさせる。


つまり、ママさんの話はこうだった。

ママさんは、かつて悪女と呼ばれていたあのバーバラ王女としてこの世に誕生した。

そして、以前ママさんが教えてくれたような教育を受けたママさんは、自分が女王になりたいという野心を持ったリリアーヌ王女の罠にハマり、民衆の反感を得ることになった。

婚約者まで奪われることになり、王族や貴族の中でも立場を失っていたママさん。

そんな時、ママさんのそばには護衛騎士であったパパさんと、侍女として支えていたあのバビィさんがいたんだとか。

バビィさんはママさんと同じ名前だというのがきっかけで、親しくなった唯一の侍女だったみたい。


「ふふ、お父様はね。部屋に籠りっきりの私に毎日花を一輪だけ置いておいてくれたの」

「おい、その話はやめてくれよ…」

「最初は花の摘み方が悪くてすぐに枯れちゃったけど、だんだんとうまくなってね。それを侍女のバビィが魔力でできるだけ保つようにしてくれてね。私、あの時、初めて幸せだって思えたの。こんな小さい世界でも十分幸福は味わえるんだって知れたの」


ママさんは純粋無垢な笑顔を私に向ける。

パパさんは恥ずかしがりながらも嬉しそう。

そうやってゆっくりと二人は愛情を確かめ合ってきたんだなと私も感じる。


そして、やっとママさんの心が癒え始めた時、例の『太陽の儀式』を行うことで異世界の旅人の召喚に成功した国は、レイナを迎える帝国のように歓喜に沸いたそう。

リリアーヌの策略によって浄化の能力や大量のマナを保有している何百人という術者が犠牲になり、その儀式を行ったという事実は秘密裏に処理された。

バビィさんはその浄化の力を隠していた為、助かったのだとか。


ノアが聞いたように、勇者の命も危なかった。

異世界の人間の全ての血を捧げることで、彼らの崇拝する太陽神の恵みを得られるらしい。

それによって、瘴気の浄化に加え、国の繁栄が約束されるのだとか。

リリアーヌ王女は自分の存在を確固たるものにする為に、それを決行しようとした。


だから、ママさんはパパさんやバビィさんと協力して勇者を助ける事に決めた。

その時、勇者のお世話もしていたバビィさんは彼と恋に落ちたのだそう。

彼ら全員を助けるには、逃げ出すしか方法がなかった。


そんな時、たまたまオリエンス公爵家が手を差し伸べてくれた。

偶然にもヴェロニカの祖父と知り合うことがあって、ママさんたちは助けを求めた。

そして、ママさんとパパさんはウルグス子爵家に身を寄せるようになり、バビィさんと勇者は元の世界へと向かった。


だから、ママさんの怒り方はお母さんのものと違う怖さがあったのか。

ママさんとパパさんがいろいろとヴェロニカの家にお世話になったってのはこれか。

だからうちには親族がいなかったのか。


いろんな事がパズルのように嵌め込まれていく。

脳はすっきり整理された気分だけど、それに心が追いつくかどうかは別。

私は混乱状態で、もう一度いろんな事を振り返る。


「結局、リリアーヌは彼にも逃げられて、瘴気をどうしようもできなくなって国民の不信感は高まってるみたいね。結局、すぐに乗り換える男はやっぱり乗り換えるって事よ。あの子は本当にきつい性格してるから逃げられても仕方ないかもだけどね…」


ママさんはため息まじりに言った。

私もそう思う。


──ママさんも大変だね


同情していると、今度はママさんは物思いにふけった顔をした。


「バビィ達が戻れたのかどうかは分からないしね……」


ママさんは複雑な表情を浮かべた。

時空を超えて連絡なんて取れない。

それなら、私だって家族に連絡を取りたいもん。


──そっか、だからバビィさんは…


いろんなことが腑に落ちる。

私は前世でどれだけバビィさんにお世話になったか。

どれだけ彼女が幸せか伝えたい。


「これね。聖女が持ってたの。向こうの世界でもらった物らしいよ」


だから、私は自分の腕についたブレスレットをママさんに見せた。


「これ…まさか…」


ママさんがみた瞬間に口元を押さえた。


「これは私の魔石…別れる時にバビィに私の代わりとして渡したの…。絶対そうよ、貴方と同じ翡翠の瞳の魔石…」


デザインは変わってるみたいだけど、いくつか思い当たるものがあったみたい。

ママさんは一瞬にして目を真っ赤にして、涙を零した。

パパさんがそんなママさんの肩をさする。


「懐かしいな。俺の瞳とそっくりだって君はよく言ってくれたな」

「えぇ…そうね。間違いないわ…。あぁ、戻れてたのね…」


ママさんは心底安堵したようで、震える手でバビィさんのブレスレットをさする。

パパさんも懐かしそうに目を細めていた。


「これね。実は私の魔石なの…」


私がママさん達に告白する。

もし、私が精霊の嫌われ者じゃなかったら、二人はどんな顔をするだろうか。

彼らがどれほど自分を責めただろうか。

申し訳なさと、彼らを解放できる喜びがある。


「ミミちゃんの?」

「うん…なんでか分からないけど、私、契約してたのこの魔石と…。だから、ずっとこの魔石にマナを送り込んでて、マナの量は少ないからそれで手一杯だったみたい。だから、他の魔石には反発してて…」

「…」


ママさんは目をパチクリとさせる。

中々理解できないよね。

私もそうだもん。


「君は、これを彼女に渡す時、契約は解除したのか?」


パパさんがママさんに尋ねる。

ママさんが頷く。


「そうよ。いつでも彼女の力になってくれればって……そう、そうなのね。ミミちゃんの魔石だったのね」


ママさんはそう言って私の頬を撫でた。


「バビィはきっと幸せなんだわ。だから私にこんな素敵な贈り物をくれたのよ。ミミちゃんはバビィからの便りなんだわ…」


目を真っ赤にさせて、ママさんは声を振るわせた。

冷たいママさんの指先が私の頬を何度も撫でる。

私もその手を掴んで頷いた。


「うん」

「ありがとう、ミミちゃん」


ママさんがそう言って私を抱きしめる。

パパさんもその上から覆い被さって呟く。


「俺はとても幸せだよ」


じんわりと広がる。


「私もだよ」


私も満たされた気持ちで、自然と言葉がでた。





「そうだったのか」


私が話すと、ノアもうんうんと頷いた。


「だから、グリード国について討論するときは人が制限されていたのか…」


ママさんを保護してるって事は機密事項らしい。

ノアも、すっきりしたのかあの必死な表情はどころへやら平和ボケしてる表情で頷くと、猫を撫で回す。


「で、グリード国が君を誘拐しようとした理由は?」

「誘拐されたのはノアだけどね」

「けど、もしかしたら君かもしれなかった」

「その時はノアが助けてくれるんでしょ?」


私が揶揄うと、ノアは平然として頷く。


「当たり前だ。今度こそ、ちょっとだけ鍛える」


まぁ、ノアの不安要素はそこだよね。


「あぁ、それでね、リリアーヌ女王はお母様が勇者のいどころを知ってるって思ったみたい。多分ノアの聞いたアレは勇者のこと。聖女がダメならもう一人スペアはいると思ったんだって。お母様の娘を誘拐すれば、絶対に交渉できるはずだって思ったってさ」

「なるほどね」

「あと、ノアが聞いた年配男性は、リリアーヌ女王に協力してお母様を陥れた大臣らしい。ママさんは『泥舟を選んだら死ぬまで苦労するでしょうね』って笑ってたよ」

「死んでも苦しそうだ」

「ね」


正直ざまぁ見ろって思うけどね。

ノアも大変そうだなって他人事。

ここら辺は自業自得だしどうしようもないよね。


「あれは?どうやってグリード国は黙らせたの?」


ノアが不思議そうな表情を浮かべる。

そこね。それが気になるよね。


「それねぇ~」


私は苦笑いを浮かべる。


それはなんとも簡単な事だった。

ママさんが家宝としてずっと持っていた例の短剣。

あれを皇帝からの贈り物としてリリアーヌ女王に送った。


んで、あの錆び付いていた短剣、実はグリード国の国宝だったとか。

ママさん達はもしもの為にいろんなものを国から盗んでいた。

例えば、旧ソレイユ国の民を使って太陽の儀式を行ったっていう証拠の資料やら、他国との密約についての書類って、バレたら対外的にやばいやつ。

グリード国は昔からいろんな悪行をしていたみたい。

もしそれが公表されれば、大陸の国のほとんどが敵になっても仕方ないレベルらしい。

それがママさんが逃亡した時にいくつかの国宝と一緒に消えてるから、ママさん達が持ってることは察してるだろうってことで、皇帝名義で短剣を送って、『馬鹿な事したらバラすぞ?』って脅したみたい。

本当ならバラしてもいいけど、ヴェロニカ曰く、「まさか死んで罪を償えば終わり?大体戦争するのさえ勿体無いもの。じっくりと搾り取る方がいいでしょ?」って事らしい。


「過激だね」


私が話せば、ノアが渋い顔をした。

ノアが苦手な案件なのは確かだ。


「まずは瘴気を浄化させながら、向こうの政権をじっくり奪っていくみたい。ヴェロニカはねちっこいから大変だと思うよ」

「彼女の夢が叶ったわけだ」

「?」


ノアが納得したように言うから私が首をかしげた。


「彼女の夢は国を治める事でしょ?実際にそうなりそうだ」

「あぁ…確かに」


忘れてた。

確かにそうだ。


「あ、そうだ。ノアの家の名前を使わせてくれてありがとうって言ってたよ」


ついでにデネブレ公爵家からの贈り物だっていうシャンパンの詰まった箱も合わせて、グリード国に送ったらしい。

本当はその箱の中には今回捉えたグリード国の捕虜数名が入ってたみたい。

皇帝や教皇に献上するシャンパンをわざわざ敵に送ったりはしないってヴェロニカは笑ってた。

人の婚約者の家の名まで使ってやりたい放題だ。


「あぁ、別に。ちょうど、今度教国に送る用に作っていたついでだから」

「ゆるゆるだと、ヴェロニカに乱用されるよ?」

「役立つなら、別に構わない」


平然というが、ノアはヴェロニカの怖さを知らないからそう言えるんだ。

ノアは穏やかな顔でまた猫を撫でる。

私たちは例のノアの秘密基地で楽団の演奏を聞きながら話している。

やっと訪れた穏やかな時間に私も浸る。


ノアも本当にやっと落ち着いたと思う。

昨日まで、あの誘拐事件で命を落とした馬や人々のお墓を作ってたから。

帝国側は大丈夫だけど、グリード国側はそうもいかない。

敵の治療まで行って、おかげで皆はノアを聖女扱い。

確かに、それに相応しい行動だとは思う。

ノアも言っていた。


『これぐらいはしておきたい』


それがノアのやり方なんだ。


因みにだけど、例の御者さん。

私たちは崖から落ちたけど、彼は自分で逃げ出してセーフだったみたい。

骨折と擦り傷だらけだったけど、今は元気に帝国の土を耕している

なんでも、ただ雇われていた一般人だったみたいで、あの時もかなりびっくりしてたみたい。

グリード国の全員が悪ってわけでもないんだなって、今更ながら思った。


「それで、ミミの話は?」


ノアが尋ねてきた。


「聞いてないんだけど」


まだ一番重要な事が残っていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初からここまで一気読みしてしまいました。 お互い自分の気持ちに正直なので、気持ちの面でのすれ違いや、もだもだした感じがなくて理想的なカップルでした!(単に自分がすれ違い系好きじゃないだけ…
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