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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
最終章 モブでも踏ん張って幸せになります
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ヴェロニカの発言で辺りは騒然とした。

私が騒ぎ立てたことでいつの間にか注目が集まっていた。


「今、ノア兄上がなんと?」


突然のヴェロニカの発言に皇太子が驚きを隠すことなく言った。

対応はデネブレ公爵がする。


「殿下、昨夜からノアが行方不明でして」

「兄上が?」

「スコットレット伯は何も知らぬようで今回の件でのグリード国の関与を自白したのですが、オリエンス公爵令嬢がグリード国に誘拐されたのではと…」


デネブレ公爵も半信半疑のようだ。

皇太子は目を見開いてヴェロニカに尋ねる。


「本当ですか?」

「おそらく、スコットレット伯爵がしたと言うよりは信憑性はあると思いますわ。オリエンスの名にかけて言わせて頂きます」


ヴェロニカは断言した。


だとしても納得がいかない。

私はヴェロニカに尋ねる。


「なんで、ノアを?」

「昨日の彼の格好よ。グリード王家と同じ、色が全く混じっていない真っ白な白銀の髪。バーバラ王女とそっくりの…」

「髪?」


私はヴェロニカに言われてハッとする。

確かにチラッと見ただけだけど、ベールから見えたあのリリアーヌ女王の髪はノアのあのカツラとそっくりだった。


「きっと、失踪中のバーバラ王女の手がかりだと思ったかもしれない。だから公子を捕らえた。今はどんな状況かはわからないけどね」


あの時、リリアーヌ女王はノアを見つめた。

確かにあれは驚いているようだった。


──なら、ノアは…


「グリード国…いや、リリアーヌ女王に誘拐されたって事?」

「今の段階ではそうとしか考えられないわ」


ヴェロニカが頷く。


「オリエンス公爵令嬢、その根拠は?」


王太子がヴェロニカに問いかける。


「バーバラ王女の行方を知っているからです。そして、グリード王国、いえ、リリアーヌ女王が彼女を探す理由も全て知っているからです」


はっきりとした口調でヴェロニカは告げる。

だが、人には聞こえてはいけないのか幾分か小さな声だった。


「ここでは述べることができませんが、間違いはないかと」


意志の強いヴェロニカの表情。

それだけの根拠も確証もあるのだ。


「まだ探していたのか…」


デネブレ公爵も呟やいた。

全員がヴェロニカの話に納得した。

長年外交をしてきただけのことはある。

ヴェロニカは彼らの反応に満足げだった。


「すぐにグリード国大使館に兵をっ」


皇太子が言った。

それに続いてアーノルドも発言する。


「殿下、既に彼らの計画が破綻していることは気づいているはずです。だとすれば、既に国境を越えようと動いている可能性が高いと思われます」

「すぐに兵の配備をっ」


皇太子が叫んだ。

そして周りの人たちに指示を出し始める。

すぐに騎士団が動き出す。


「殿下に報告をっ」


デネブレ公爵も顔を顰めすぐに行動移し始めた。

残された私はコーラさんに解放された後も呆然としていた。


「なっ…は、話したんだ!解放しろっ!」


スコットレット伯爵は喚きながらも、連れていかれる。

彼はどこまでも往生際の悪い人間のようだ。


──ノアが…誘拐?あの姿のせいで…


なぜこんな偶然が重なってしまったのか。

私は顔を手で覆った。


──なんで…


ノアとの会話を思い出す。


『ミンディは僕が絶対に見つける。どこにいても、いつでも』


──ノアが捕まってんじゃん…


私は探せない。

そんな能力なんてない。

結局、自分は待つしかできない無力さに呆然とする。


──このままノアを失ったら?


それが一番こわい。

心が冷え切ってくるようだった。

見つけても無事とは限らない。


──ノア…ノア…


震える手で自分の体を抱きしめる。

そうしないと寒くて寂しくて崩れてしまいそうだった。


「ノア様が…行方不明?」


話を聞いていたのか、レイナが呟いた。


「やっぱり…ミンディさんが、ミンディさんが悪いんだっ」

「聖女様!落ち着いてください!」

「なんで誰も信じてくれないのっ!私、本当にっ…」


レイナは泣きじゃくり始めた。

本当に子どものように、駄々をこねているようにしか見えない。


レイナを止める人たちは、レイナが誰かに騙されて心が不安定だと思っているみたいだった。

それが、余計にレイナをヒートアップさせる。


「私は間違ってないのっ…、間違って…」


そう訴えるも、誰もそれを本気で取らない。

混乱しているだけと宥めるばかりだ。


レイナは泣き叫ぶ。

あの愛らしい顔が初めて醜く歪んだ。

なんでも手に入れていたレイナは初めての体験に、知らない感情が浮かんでくる。

それは単純な嫉妬なのに彼女はそれに気づけていない。

それさえも否定しようと、心はさらに乱れ、表情は歪んでいく。

乱れるレイナを見ていると、レイナの腕に目がいった。


──私の魔石…


諦めた力がそこにはある。


『それに魔石も教えてくれる』


ノアはあの時そう言った。


『あぁ、会いたいマナへ導いてくれる』


──そうだ。魔石は導いてくれる…


私はフラつく足取りでレイナの元へ向かった。

レイナはまだ泣き喚いている。

本当にこどもみたいだ。

レイナが私に言った言葉を全部そのまま返してやりたい。


けど、どうでもいい。

それよりもノアの事だ。


「なにするのっ!!」


レイナが私に叫ぶ。

私はレイナのブレスレットに手をかけていた。


「うるさい!今は説明してる時間なんてないわ!」

「やめてっ!私のものよ!取らないで!!」


レイナが抵抗するから、私は無理に取るしかなくなる。

だけど、力ずくでなんとかしようとすると、レイナは余計に暴れる。


バンッ


私はそんなレイナの頬を叩いた。

2度の人生で初めての経験だった。

やりすぎだと思ったけど、そんな事にフォローする暇はない。

ノアの命がかかっている。


──もし、ノアが偽物だと知られたら…


そのまま証拠隠滅の為に存在を消される可能性だってある。

とにかく時間がない。


レイナは驚いて自分の頬に手を当てていた。

彼女自身も叩かれるなんて初めてだろう。


驚きで固まってしまったレイナに私は叫ぶ。


「黙って!あんたの物じゃないでしょ!」

「なっ、なんで…」


レイナは不意を突かれた表情になる。

でも、その時に力が緩んだから、私はすぐにそれを奪う。


「ウルグス嬢っ、なにをしている!」


皇太子が驚いて叫んだ。

私は精霊の嫌われ者だから、魔石に拒否される。

ずっとそうだった。だけど、これは違う。


私は魔石を手に取った。


私が魔石を掴んだ姿を見て、周りの人達は息をのんだ。


「あんた、私の魔石でしょ!」


そうだ、魔石が導いてくれるんだ。

この魔石は私のものだもの。

絶対に教えてくれるはず。


「さっさと教えなさいよ!」


私は魔石にキレまくった。

魔法の使い方なんて知らない。

マナを流すなんて方法は全然知らない。

でも今は一刻でも早くノアを見つけないといけない。


「教えて!!」


そう叫んでも、魔石はすんと澄ましたように全く反応しない。

私の魔石のくせに、主から離れるどころか、全然こっちに反応しないないて。


──ノアが、ノアに会えなくなったらどうしてくれるのよっ!


「ノアが消えたら、どうすればいいのよ!!」


お前のせいだと私は魔石を責め立てた。


──あんたがいないせいでどれだけ苦労したと思ってんのよ!


それでも私の世界は優しかった。


──あんたがいればもっともっと楽しめたのに!


それでも大切なものには出会えた。




「あんた、ここまで自力で来たんだからちょっとは力を貸しなさいよ!!」




そう叫ぶと、緑色の魔石はパチパチと中で光が弾け始めた。

その輝きは魔石の中で広がり魔石全体が光り始める、すっと一つの塊に収束する。

そして、どこかに向かって一直線に光を放つ。




まるで、私に道を指し示すかのようだった。




「魔石がミミに反応した…」

「これはまさか、兄上の場所を?」


ヴェロニカと王太子が言った。


「……なんで?」


レイナも呆然としてこちらを見つめる。


やっと反応してくれた魔石。

私はそれをにぎりしめて走った。

ここで待ってるなんて絶対できない。

震えはもう収まった。


だってもう後悔なく、がむしゃらに踏ん張るしかない。


だけど、宮殿を出てハッとする。


──どうやって行こう…


馬車を呼んで、ここから──

考えを巡らしていると、大きな馬の足音が聞こえた。


「ミンディさん!」


いつの間にか姿を消していたコーラさんが馬に乗って私の方へやってくる。

いきなり姿を現した暴れ馬に警備兵は戸惑いつつも静止させようとするが、コーラさんはそれを難なく避けて私に手を差し伸べた。


「行きますわよ!」

「え?」


戸惑いながらも私は反射的にコーラさんに手を伸ばす。


「貴方、訓練したんだから、馬にしがみつくのは慣れたものでしょ?」


そう言って私を引き上げると、コーラさんは私を自分の後ろに乗っけた。

コーラさん、白馬の王子化しちゃってた。

私はそう思いながらも、コーラさんと馬にしがみつく。

だって、既に馬が走り始めたから、振り落とされないようにするしかない。

まさかあのしがみつく乗馬訓練がここで役に立つとは。


「なんで…コーラさん」


まだ驚きながらコーラさんに問いかけると、コーラさんが口を開く。


「貴方のことだから、公子の元に駆けつけるに決まってると思いましたの」


どうやら先回りされていたみたい。

コーラさんの方が私のことをよく知っている。

その通りになってしまった。


「大使館でいいですの?」


コーラさんが馬を走らせながら私に問いかける。

私は、コーラさんにありがたさを感じながら、私の魔石を取り出す。

魔石はまだノアのいる方向を指していた。


「コーラさん!この光に着いていって!」

「わかりましたわ!」


私たちは光を辿る。

最速で走る馬は未知の体験だったけど、私はただ祈るばかりだった。


「お兄様!こっちですわ!」


コーラさんが先頭に立って、みんなを導く。


後ろから私を追いかけるいくつもの馬の蹄の音が聞こえた。


──ノア、こんなにもみんな心配してるよ


自信なんてないとノアは言うけど、ノアの歩いてきた物がちゃんとある。


──絶対助けるからっ…


今度は私の番だ。

私がノアを助ける。


──ノアっ、待ってて


私は魔石をじっと眺め祈り続けた。

それがノアと私を繋いでくれる唯一のものだったから。


「まだ話してない事があるんだよっ」


それを絶対に伝えないと、悔やむのも悔やめない。

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