魔族の国編 ⅢⅩⅧ
王城に目的のマイクがあるということは、それが国の所有物であるということだ……。そんな簡単なことくらい私にも分かる。
つまり、ここでティレルさんにお願いしても、二つ返事で快諾してもらえるようなものではないということ。仮に、快諾をもらったとしても、いろいろと申請とかが必要になるんだろうと、想像がつく。
「あの、陛下……恐れながら……販売しているお店は、心当たりがございませんの?」
ユニエラちゃんが尋ねる。そうだよね、借りるよりも買ったほうが早いし、余計な手続きもいらない。売っているのなら、そっちの方が知りたい。
けれど、ティレルさんからの回答は否だった。
「残念ながら、あれほどのものをまだ一般流通に乗せるわけにはいかないですね。通常サイズのマイクとスピーカーが一体となった拡声器というものも、つい最近、ようやく市場に出したところですし、価格もかなり張ります。 それに、そもそも、輸入元からも、王家の人間にだけ卸していると言われてまして、皆様にはお売りもお貸しも出来ません……」
まぁ、そうだよね……。肩を落とす私たち。
これは予想していたことではあった。でも、その場合のサブプランについては、まだ議論の途中でもあった話だ。
こうなると、クガルーアさんたちと合流して、早急に次善策を考えなくちゃ――ん?
王家の人間にだけ卸してる……それって……。
私は尋ねる。
「あの、ティレル陛下。王家の人間にだけ卸してるってことは、王家の人間になら、販売ないし、貸し出しは可能ってことですか?」
私の質問に、ティレルさんは不敵にニヤリと笑い、そして頷いた。やっぱりだ!
「そうです。皆さん一行が、どこの馬の骨とも知れない、平民の冒険者の集まりであれば、この話はここで終わりでした。ですが、そうではありませんね?」
私たちは頷く。
「では、明日、王城まで、クガルーア王子殿下においでになるようにお伝えください」
「いいんですか? お休みだったんじゃ?」
「いいんですよ。私の許可の下で工廠長の工房が動き出してしまったので、どのみち、母上含めた監督をしないといけなくなりましたし、そのついでみたいなものです。――というわけで、私のお休みは返上です……」
「なんか、すみません……」
「ディティスさんが謝ることではありません。きっと、運命の巡り合わせだったのでしょう。――それに私、今、ワクワクしているんです。ひょっとしたら、八十年越しに、和解と国土統一の道が拓けるんじゃないかって! 私からは殿下に、貸し出しを前向きに検討しているとお伝えください」
「はい!」
「では、王城へ戻ります。お供をお願いしますね、皆さん?」
私たちは、胸の前に手を掲げた。
ティレルさんを無事王城に送り届けると、私たちは、王城の下にある、大図書館へと向かった。クガルーアさんたちが歴史書を読み漁っているはずなので、合流して、ティレルさんからの言伝をするためだ。
王城と図書館は中からも外からも繋がっておらず、図書館の上に、王城が覆い被さる形で建っている。
図書館には、王城の門の前から続く、長い長い、そこそこに横幅の狭い外階段を下って行かなければならない。馬はともかく、馬車は絶対通れない、基本的に徒歩オンリーな道だ。ユニエラちゃん曰く、防衛に適した造りとのことだった。空でも飛べない限りは侵攻ルートと方法が大きく限定されるかららしい。
やっとこさ階段を下り終えると、その足で大図書館へと入った。
日の光を入れず、恐らく魔法のものだろう優しい灯りだけで照らされて、全体的に薄暗い館内には、本特有の匂いが満ち、静謐さがその場を支配していた。
通りがかった司書さんに、歴史書の所在を尋ねると、案内をしてもらえた。
カツンッ、カツンッ、と、私たちの鎧の足音が響く。
すれ違う人たちから、シャルちゃんたちに向けられる、仄かに感じられる羨望と欲望の視線に、内心で威嚇を送りながら、奥へと進んだ。
本棚があるスペースに来ると、床が石から木に変わった。そこからさらに奥――。
こちらですと一礼して去っていく司書さんにお礼を言って、周囲を見回すと、幸い、クガルーアさんたちはすぐに見つかった。歴史書を見てる人は、彼ら以外にいなかったからね。
「調べ物はどんな感じですか?」
首尾を尋ねながら、近づく。クガルーアさんは、「おう、来たか、お前ら」と迎えてくれた。
「ちょうど、終わったところだった。聞くか?」
「ここじゃちょっと……」
図書館で騒ぐのはよろしくないとお断りすると、「それもそうだな」と言って席を立った。
「じゃあ、場所を変えよう」
そう言ったクガルーアさんに私は、ティレルさんからの言伝と、彼女との別れ際に手配してもらった、宿屋への紹介状を手渡した。
私たちは図書館を出ると、その紹介状にある宿屋へと向かったのだった。
『超かぐや姫』に脳を焼かれて遅くなりました。
しばらく遅くなるかも知れないです。
皆さんも『超かぐや姫』に脳を焼かれましょう!
お前たちも道連れだ!!




