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病院にて無事、兄妹の再会を見届ける。
妹の方は意外と元気だった。
そして、ジルの根回しのおかげですんなりとそれは果たされた。
感動的な再会の部類に入るだろう場面から、ジルへ視線をやる。
「それで、ハガネの妹はどうなんだ?」
「どうって?」
「検査結果出てるだろ」
「あ、やっぱり気になる?」
興味本意と今後の参考に聞いておきたかっただけである。
「ハガネ君とは違ってあの子、フィーちゃんは普通の人間だよ。
まぁ、実験されてた痕跡はあったけどハガネ君とは違う」
「ハガネも普通の人間に近い」
「あはは、普通の人間は素手で大型トラックのフロントを壊したりできないよ」
クリスは、抱擁を交わしている兄妹をもう一度見る。
ハガネは元々の人格が死んだといっていた。
それなら、まさに今、目の前で妹の安全を確認し感極まっているあの行動はなんなのだろう?
他人となってしまった過去の自分。
その自分に託されたと言う妹。
妹に余計な心配をかけさせないための演技なのか、それとも。
「一番の違いは、フィーちゃんの中にはハガネ君のように術式がめぐっていないことかな」
どのような実験をされていたのか気になるところだ。
しかし、知りすぎるのも危ないのでクリスは頷くだけにしておいた。
話を聞くほどに、クリスの中にハガネへの興味がわいてくる。
ここが所属していた職場か国であったなら手元において、いろいろ観察と実験を行いたいところである。
「あ、興味出てきた?
なんならこのあと捜査局でハガネ君のこと調べるけど、来る?」
「行きたいところだが、その代償は?」
世の中、うまい話には裏があると決まっているものだ。
クリスにとっての好条件の提示はすなわち、何かしら支払うものがあるということで。
「まぁ、状況次第だけど、しばらくの間ハガネ君を預かってほしい」
「それは俺じゃなく、リューに言え」
「彼女の了承は得ているよ。新品のトラックとハガネ君の生活費を捜査局から出すことで納得してもらった」
「……俺はいつまでこっちにいるかわからないぞ」
「だからだよ。君が知りたいことは僕が直々に君に伝える。
本来の担当者が君の元までたどり着くにはまだまだ時間がかかるから。
君は、捜査対象であり、捜索対象でもあるからね。すでに君の親鳥は君のことをやっきになって探しているんだ」
「本来の担当者の動きが何故わかる?」
「簡単さ。そう僕が調整してるからね」
その言葉に、クリスは嵌められたことを知る。
こういう性格の悪さも、ジルが悪魔と呼ばれる所以なのだろう。
ジルは捜査局の中でも、そういったことが出来る人物なのだろう。
だからこそ、ここまで自信を持っているのだ。
「俺は別にいいが、ハガネが了承するか?」
「するよ」
「なんでわかる?」
「まぁ、見ててごらんよ」
そこで、ジルとの会話は終了する。
言われるままハガネを見れば、妹と談笑していた。
そのジルの言葉の意味を理解したのは、捜査局が管理している建物の中にある訓練施設でのことだった。
ジルの提案で、何故かクリスはハガネと手合わせをすることになり、すっかり錆び付いていたと思っていた喧嘩技で彼を床に叩きつけた後のことであった。




