実力
「山賊の頭は異世界人でした」
「そうか。次の任務が決まるまで休むといい」
「わかりました。では、失礼いたします」
「あっ、忘れてた。新入りが入ったから。俺は新入りのことを女温侯と思っている。会っとくのもいいと思うよ」
「女温侯?」
「温侯が分からないのか。まぁ、会って剣を交えれば分かるよ。多分」
将成はショウリの執務室をあとにした。
廊下を歩いていたら、後ろから声をかけられた。
「将成くん。久しぶり」
声の主は大伴紅葉だった。クラス転移前からの同級生で、今は将成と同じAMOに所属している。紅葉は転移前のクラスでは、クラスのマドンナ的存在であり、将成の好きな人だ。紅葉は、今はポニーテールをしていてAMOの隊服を着ていた。
そして、その隣には見覚えがないエルフの女性が立っていた。身長は190センチぐらいで、長髪の髪と鍛え上げられたであろう肉体、豊満な胸を持ち、中華風の服を着ていた。
「久しぶり。紅葉。お隣の方は?」
(デケェ〜!)
将成は、表向きは冷静さを保っていた。
だが、心の中では今まで、将成自身が思っていたエルフのイメージをぶっ壊してしまった。何というのだろうか、これが推しに出会うことだろうかと思った。
推しに出会えたことと好きな人と話せることでとてつもなく心中では興奮していた。
「彼女は呂雪さん。華国で将軍を務めていた人で、『雷光』という異名を持っているの」
「へぇ~。めっちゃ凄い人じゃん」
「紅葉。この丈夫は強いのか?ここにいるのだから、弱い訳ではないのだろ」
呂雪は、将成に近づいた。
そして将成の頭を叩きながら言った。
「この組織で言ったら、中の上ぐらいだと思います」
将成は呂雪の手を払いのけながら言った。
「お前が言うならそうなのかもしれないが、ちゃんとした力量をこの目で見てみたい。強い漢は好きだからな」
呂雪は方天画戟を出した。
「ここでやるんですか?」
「やる。私の攻撃を受けるだけでよい。本気は出さぬから心配するな」
廊下から庭に出て両者は武器を構えた。
呂雪は方天画戟を振り被り、将成に向けて本気の一撃を入れるかの如くの勢いで斬りかかった。その方天画戟から、黒に少し赤が入った雷撃が溢れ出していた。
「この一撃を受けられるか!!」
その一撃を受ける為に将成は刀の刃の方に闇を集めた。呂雪の一撃を刀が受けると刃に集めた闇が溢れ出し続けた。
その凄まじい一撃を受けた将成は呂雪のことを転移前に遊んでいた三國志ゲームの呂布を彷彿とさせる程だった。
「やべぇ。これが本気じゃないとなると…ヤバイなこの人」
呂雪の方天画戟が、将成の刀をじりじりと押し込んでいた。将成は足を踏ん張り、必死にその一撃に耐えていた。
この両者のぶつかり合いによる衝撃により、地面が揺れて建物の中では物が落ち、花瓶などが割れてしまった。古い建物の一部にヒビが入ってしまっていた。
「おい。こんな所で何をやっている。訓練所でやれ」
2人の戦いの衝撃に気がついたショウリがやってきた。
ショウリは腰にかけていた剣を鞘から少し抜いた。
その剣からとてつもない威圧感を感じた。
そして、呂雪の方天画戟と雷撃と将成の刀から出てきている闇が消滅していた。
そして、ショウリは将成と呂雪に近づいた。
ショウリは呂雪と将成の頭を叩いた。
「いいか、やってはいいが場所は考えろ。減給な。俺が寛容だからこの程度だからな。次やったら、容赦しねぇぞ」
2人に呆れた顔をしながら、怒った。
「将成。どうだった?呂雪の一撃は。ヤバイでしょ」
「はい。本気じゃなかったから大丈夫でしたけど…本気だったらと思うと」
刀を握っている手は痺れていた。
その手を見ながら将成は答えた。
「俺からアドバイスというか、やっておいた方がいいことを言っておく。紅葉もこっちに来い」
廊下の方にいた紅葉をショウリは手招きした。
「どれほど強力な能力を持っていようが、それが通用しない相手はいて、そんな時に頼れるのは、己の身体と積み重ねてきた技だけだ。鍛錬を怠るな。筋肉なんて、ないよりはあった方がいいからさ」
「はい」
将成は返事をし、紅葉は頷きながら答えた。
「じゃあ、仕事戻るから。さっきの続きやるなら訓練所でな!」
呂雪と将成に向かって念を押しながら帰っていった。
「閣下に怒られた。だが、よかった。将成といったか。伸びしろがある。将来が大いに楽しみだ」
呂雪は将成の頭を叩きながら言った。
「そう言われるのは嬉しいです」
将成は頭の手を払いのけて、軽く照れながら答えた。
「凄かったよ。2人とも。将成くんは頑張ったね賞をあげるよ」
そう言うと紅葉は将成の頭を撫でた。
将成は、女性と話すことは問題なかった。だが、女性に触れられることには免疫がなかった。故に、好きな人である紅葉に撫でられたことにより、顔を真っ赤にして固まってしまった。
「将成くん?お~い」
紅葉は将成の顔の前で手を振りながら確認していた。
将成は深呼吸した。
「大丈夫。そういえば、部屋でやることがあるから、そろそろ行くよ」
そう言い、2人と別れた。
将成は部屋に行き、ベッドに座った。
そして、さっきのことを思い出して頭を抱えながら恥ずかしがった。
「うわぁ…」
顔を両手で叩いた。
「寝よう。だが、呂雪さんのあの一撃は凄かったな。」
将成は痺れていた手を見ながら言った。
自分より強い人がいるのは重々承知の上だったが、本物を目の前にすると実力はまだまだと思った。
「明日から、少しでもいいから鍛えるかな」
将成はそう呟き、ベッドに横になった。




