散り散り
⚪︎矢木剛斗視点
涼さんの出してくれた輪入道を先頭にして、一行は険しい山道を進んでいく。輪入道は轟音を立てる巨大な車輪と強烈な熱を放ちながら、分厚い草木を焼き払って道を作っていった。
「さっきの朧車は少し惜しかったですね。ほんの少しでもカケラでも残っていれば、後々の術に利用できて便利だったんですけどね」
涼さんは涼しい顔のまま、さらっと恐ろしいことを呟く。
それから20分ぐらい歩いただろうか。急に周囲の空気が冷え込み、辺りには濃い霧が立ち込め始めた。少し先すらも見えないほどの濃霧だ。
「随分と、急に霧が立ち込めてきましたね」
「ああ、気をつけろ。どこから奇襲が来るかわからんぞ」
十一さんの警戒を促す声に、全員の足取りがさらに引き締まる。
すると、菊ちゃんは少し難しそうに考え込んだ後、おずおずと呟いた。
「この霧は……たぶん、天狗たちの仕業だと思います」
その言葉を聞いた瞬間、俺は握りしめた剣の柄にぐっと力を込めた。
「大きな反応が4つ!! 来ます!!」
次の瞬間、映子さんの切羽詰まった声が響き渡る。空気を切り裂くような音が聞こえたかと思うと、先頭を歩いていた輪入道に無数の矢が凄まじい勢いで突き刺さった。輪入道はバランスを崩して横倒しになり、激しく火花を散らしながら空回りした末に消滅してしまう。
「あれは……弥一さんの弓!!」
菊ちゃんが瞬時に展開し、俺たちの周囲に堅固な結界を張る。その半透明の障壁には、雨あられと無数の矢が容赦なく突き刺さった。
だが、安心したのも束の間だった。俺たちの足もとの地面が突如として激しく隆起し、全員が不意を突かれてバランスを崩す。そして次の瞬間、頭上から叩きつけるような猛烈な突風が吹き荒れた。
身体の軽い鳥居の体が真っ先に宙へと浮き上がり、俺は慌ててその細い手を取る。
「鳥居!! 大丈夫か!?」
「ありがとう……! 矢木くんっ!」
俺は咄嗟に彼女を引き寄せ、ぐっと強く抱きかかえた。腕の中で鳥居の顔が真っ赤になる。俺だって恥ずかしい。けど、こんな状況で恥ずかしがっている場合じゃない。吹き抜ける暴風の中で、鳥居の長い髪が激しく乱れてなびく。
しかし、突風は衰えるどころかさらに猛烈な威力を増していく。周囲を見れば、他のメンバーたちもそれぞれの足場を奪われ、散り散りに吹き飛ばされそうになっていた。そして、俺もついに踏ん張る限界を迎え、強風に押し流されるように激しく吹き飛ばされてしまうのだった。
こうして、幽玄堂のメンバーたちはそれぞれバラバラに引き離されていくのだった。




