He CEA入局
いきなり、CEAへの入局が決定した照屋。配属されたのはCEA広報課。CEA広報課とは一体どのような組織なのか。
大阪府、泉佐野市のとあるビル。そこに照屋たち3人が乗った車が入っていく。
「ついたぞ、おまえら起きろ。死んだわけじゃねえだろ」
運転席から白輝が2人に声をかける。だが反応は無い。後部座席では照屋が真っ青な顔をしている。長旅の疲れがモロに出ている。助手席では真夜がぐったりしている。
「確か18時間で着くとか言ってたよな」
「そんなことも言ったっけな」
「確かに言ったね。絶対に。なのに結局丸一日かかってるじゃねえか!なんでだよ!」
「それはおまえのせいだろうが!」
移動中に何があったのか。
3人は神戸のサービスエリアで休憩中であった。目的地まであと2時間と少しといったところだ。
「白輝よ、長旅の運転ご苦労。ここからは僕が運転しようではないか」
「ほう、おまえが運転するなんて珍しいな」
「たまには上司らしい姿も見せないとねえ」
「普段は、適当すぎて殴りたくなるからな。じゃあ俺は寝させてもらうぞ。先に車に戻ってる」
真夜は白輝を見送り、トイレにこもっている照屋を待つ。
2分後。
「遅かったね。ゲロでも吐いてたのか?」
トイレから戻ってきた照屋の顔は、誰が見ても心配するレベルの顔色をしていた。
「すいません。寝不足と車酔いのダブルパンチが」
「寝ててよかったのに」
「僕、座った状態で寝れないんですよ。横になるのも申し訳ないですし」
「じゃあコーヒー飲んだら?1本いるか?」
そう言うとポケットから、あたりまえのように缶コーヒーをたり出して、照屋に勧めてきた。
「じゃあ、1本貰います」
「まだストックあるから。欲しくなったら言ってくれ」
-この人ってどんだけコーヒー好きなんだ?
「とりあえず、車戻ろっか」
2人はゆっくりとした足取りで車に戻って行く。そして真夜が運転席に乗り込む。助手席では白輝が静かに寝息を立てていた。
その後、特に問題は起こらずに進んでいた。..はずだった。
2時間ほど走ったところで、白輝が目を覚まし、時計を確認した。そして違和感を感じた。
「なあ真夜、サービスエリア出てから2時間経ってるよな?」
「おはよう。もうすぐ出てから2時間半だね」
「だよな。じゃあなんでまだ高速にいるんだ?」
窓の外を見た白輝は、1つの道路標識の存在を確認した。
「吹田。...は?吹田?おまえこれどこ走ってんだ?」
「高速道路」
「おまえ道間違えやがったな!しかも環状線入ってんじゃねえか!」
「しょうがないじゃん普段運転しないんだから!」
「なんでキレれるんだよ!自分から運転変わったオチがこれかよポンコツ上司!もういい、俺が運転する」
「じゃあ頼んだ」
「今ハンドル離すなバカ!」
-この人たち何やってんだ。ウプッ、気持ち悪い。(車酔い中)
その後、駐車できるところで運転手を交代し、ようやく目的地に着いたのであった。
泉佐野市にある4階建ての大きな建物。入り口のにはCEA大阪支部と書かれている。
建物に入ってすぐのロビーの片隅、3人は机に置かれた50cmほどの書類の束を囲んでいた。
「これは?」
照屋が問いかけた。
「見ての通り、紙だ」
「そんなこと聞いてるわけないでしょ!この紙の束がいったい何なのかって聞いてるんですよ!」
「このポンコツはあてにするな。俺が説明する。今回おまえがCEAに入局するにあたって必要になる書類だ」
「え、これ全部ですか?」
ざっと見ただけで数百枚はありそうだ。
「いろいろと手続きが多くてな。安心しろ。ほとんど名前とかを書くだけだ」
「明日でもいいですか?もう眠くて眠くて」
実際、車の中では一睡もできていないため、最後に寝たのは10時間以上前。それも休憩所での1時間程度の仮眠である。
「すまないが、この紙の中に宿舎の書類もあるようだ。それを記入しないことには今日休む場所はないぞ」
時計は22時を少し越えたあたりだ。照屋の顔から表情が消える。そんな照屋に真夜は、内ポケットからまたコーヒーを取り出し、照屋に渡すのであった。
照屋が書類との戦争を始めて2時間。
「これで全部だな。それじゃあ手続きをしてくるから、ここで休んでいてくれ。よく頑張った」
白輝がねぎらいの言葉をかけ、手続きに向かったが、照屋に声は聞こえているのかわからない。真夜は最初こそ起きていたが途中で寝てしまった。
数分後、白輝が戻ってきた。
「おい、生きてるか?渡すものがある」
「..はい。…生きてます」
「そうか、とりあえずこれは渡しておくぞ。絶対に失くすんじゃないぞ」
そう言って白輝は、1枚のカードを照屋に渡した。
「これは何ですか?」
「CEAの局員証だ。これで正式に入局ができたことになる。配属手続きまでしたかったが、それは明日にしよう。さすがに疲れたからな」
「お気遣いありがとうございます」
「気にするな。俺も疲れた。おまけに配属先のトップがこんなとこで爆睡してるんだ。配属手続きは無理だ」
「ですね」
「宿舎の手続きは済ませてあるから。宿舎の鍵は、局員証に入っているから、絶対に失くすなよ」
「はい」
返事はしているが、その声からは生気が感じられない。白輝は不安を感じたが、信じるしかなかった。
「それじゃあ宿舎に行こう。この建物の3、4階が宿舎になってる。ほら起きろポンコツ上司」
白輝が真夜の首根っこを掴んで連れて行く。照屋もその後ろをついて行く。
3人はエレベーターで4階まで上がってきた。廊下にはドアが5つ並んでいる。3人は1番奥のドアへと向かう。
「局員証貸してくれ」
白輝が照屋から局員証を借りて、ドアのロックを開ける。すると部屋の中から声が聞こえてきた。
「うわっ!ちょっとノックくらいしてくださいよ。中にいるんですから」
中にいたのは照屋と同じ年くらいの男。アニメを見ている途中だったらしく、テレビから『ペガサス流星拳』と聞こえてきた。
「すまないな。疲れてて、気が利かなかった」
白輝の声で、大体のことを理解したらしい。
「本当にご苦労様です。ところで、そいつがこの前言ってた、新しく入ってきたやつですか?」
男が照屋の方を見ながら、白輝に尋ねた。
「ああそうだ。今日から2人部屋になるが、くれぐれも問題は起こすなよ」
「はい、任せてください」
「じゃあ頼んだ。僕帰る」
さっきまでずっと黙っていた真夜が口を開いたかと思えば、投げやりに任せてさっさと帰ってしまった。
「えっ、ちょっと真夜さん?」
男がものすごく困惑している。照屋も同じ気持ちだったが、それを声に表せるほどの元気はなかった。
「まああいつが適当なのはいつものことだ」
「確かにそうですけど」
「とりあえず、俺も今日は疲れた。チームの事とかは明日俺らが教えるから大丈夫だ。部屋のルールでも教えてやってくれ」
「わかりました。それでは、お疲れ様でした」
男が挨拶をすると、白輝は自分の部屋に戻ると言い、照屋を置いて去っていった。
「さあ、入りなよ」
男に言われるがままに、照屋は部屋に入っていく。
部屋に入ると男は右側のベッドを指差し
「こっちが俺のベッドだ。君のはそっちだ」
左側のベッドに向かって、照屋は思いっきり倒れ込んだ。
「おいおい、せめて着替えなよ。あと風呂入って」
男の注意に照屋は「あとでね」と、消えそうな声で返した。
「だいぶ疲れてるな。先に自己紹介しよう。俺の名前は赤牙炎月。元素はリン(P)で、血液型はB型だ。君は?」
炎月の問いに、照屋は答えない。
「なあ、いきなり無視はやめようぜ。なあ」
炎月はベッドに倒れている照屋の肩を揺らした。そしてあることに気づいた。
「え、こいつ寝てやがる。早すぎんだろ」
その日、照屋は今までの人生で1番の熟睡を経験した。
翌日。
照屋はゆっくり目を開け、ベッドから体を起こし、伸びた。
「お、やっと起きたか。気分はどうだ」
起き上がった照屋に炎月が話しかける。が、照屋はこの人物が誰なのかわからない。自己紹介の時にはもうすでに意識は無かったからである。
「えっと、どちら様ですか?」
「そっか、自己紹介の時には寝落ちしてたんだった。いいか、自己紹介するけど一応これ2回目だからな」
「はい、すいません」
「俺の名前は赤牙炎月。元素はリン、そしてB型だ。おまえの方も頼む」
「えっと、名前は日ノ浦照屋って言います。元素は水素らしいです」
「らしいですってなんだ?自分の元素だろ?」
「そうなんですけど、まだ能力使えたことなくて」
「まじで?今どき小学生でも使えるやついるんだぞ。血液型は?」
「B型らしいです。僕はずっとA型と思ってたんですけど、最近検査したら違ったらしくて」
「あーそうゆうことね。ちなみにいつ知ったの?」
「一昨日です」
「めっちゃ最近じゃん。ところで年齢は?」
「18です」
「ほう、何月生まれ?」
「8月です」
「よっしゃー俺の方がほんのちょっぴり年上!俺も18なんだよ。ただし5月生まれ」
どうやら炎月は高校には通わず、成人に達すると同時にCEAに入局したそうだ。職場では当然1番年下なので、後輩ができて嬉しいらしい。
「おっと長話が過ぎたな。今日の朝、照屋が起きたら連れて来いって菱炭さんに言われてるんだった。今から行くぞ」
ベッドから立ち上がって部屋の外へ向かう。窓の外には海と太陽が見える。
2人は3階に降り、手前から2番目の部屋を訪ねた。
コンコンコン「菱炭さん。照屋を連れてきました」
すぐにドアが開き、白輝が出てきた。少々不機嫌なようだ。
「照屋、寝すぎだ。今何時だと思ってる。16時だぞ」
「え、うそん」
太陽は沈みかけていた。
「さっさとやることやるぞ。ついて来い。炎月、戻っていいぞ」
「はい、了解です。失礼します」
そう言うと炎月は、自分の部屋に戻っていった。
「さあ俺たちは下の階だ。行くぞ」
白輝は足早にエレベーターへ向かった。その途中で、一つに部屋に入っていった。2分ほど経って、中から駄々をこねる真夜を捕まえて出てきた。
「やだ!めんどくさい!今日は仕事したくない!」
「おまえがいなきゃ配属手続きできないだろうが!」
「ヤダヤダヤダヤダ!」
「ガキか!」
-僕、この人の部下になって大丈夫なのか?
2人の攻防は10分ほど続いた。
一階、人事課窓口。
「それではこちらに書類に、配属先責任者名と本人名、それぞれ自署でお願いします」
真夜と照屋、それぞれ指定された欄に署名をする。
「はい、ご記入ありがとうございます。登録作業してまいりますので、少々お待ちください」
担当者が席を立ち、奥へ歩いていく。
「あの、この後の手続きって何するんですか?」
「ん、手続きはこれで終わりだぞ」
白輝があっさりと答える。
「え、ほんとに?」
「ああ、これで終わりだぞ」
「これだけなのにあんなゴネてたの!どんだけめんどくさがりなんですか!」
「だって仕事したくないもん」
だめだこいつ...早くなんとかしないと。照屋と白輝はそれぞれこう思ったが、呆れて声も出なかった。
「お待たせしました。登録作業が終了しました。こちら、広報課手帳になります。仕事の際は必ずお持ちください。以上で手続きは終了になります。お疲れ様でした」
3人は窓口を後にした。
3人は2階へと上がった。照屋に仕事の説明をするためだ。
「ここが広報課の職場だ」
白輝が紹介した部屋はなかなかの広さで、オフィスらしく机とパソコン、印刷機などが置いてある。しかし照屋はある違和感を感じた。
「あの、今って休みの時間なんですか?誰もいないですけど」
この部屋には見る限り人の気配はない。電気やエアコンすらついていない。
「照屋君、僕が自己紹介した時、なんて言ったか覚えてる?」
「確かCEA6課長って」
照屋が答えると、珍しく真夜が説明を始めた。
「そうだよね。僕は6課長って言った」
「だからあれですよね、広報課が6課なんですよね?」
「厳密に言うと少し違うんだ。広報課は、あくまでも隠れ蓑。今から6課の仕事を紹介しよう。ついてきて」
そう言うと真夜は、部屋の奥へと歩き始めた。そして掃除用具入れの前で足を止めた。
「ここが6課への入り口だ」
ガチャリと音を立てて、掃除用具入れの扉が開く。そこに掃除道具はなかった。あるのは小さな個室とエレベーター。真夜と白輝はまっすぐ扉へと向かう。照屋も後を追う。エレベーターの扉が開き、3人とも乗り込み、扉が閉まった。エレベーターは下へと向かっていった。
CEA大阪支部、地下1階 CEA6課本部
エレベーターの扉が開き、3人が出てくる。出た先には広報課で見た景色に似ている。違うところは電気と冷房がついているところ。そして人がいることだ。
「あ、紅牙いるじゃん!」
真夜の声が、わかりやすく元気になる。
「あれ、真夜さんに白輝さん。どうしたんですか?」
紅牙と呼ばれた男が聞き返す。
「いま新人に職場紹介中。このあと仕事内容の説明もあるんだけど、紅牙、頼んだ。代わりにやって」
「えっ!いきなり?」
「上司命令。よろしく。それじゃ」
そう言うと真夜は、戸惑う紅牙を置いて爆速で帰っていった。白輝が可哀想なものを見る目で紅牙を見ている。
「えーっと、とりあえず自己紹介する?」
気まずそうに紅牙が提案する。照屋もそれに、はい、と頷く。
「じゃあまず名前から。赤牙紅牙だ。能力はリンのB型だ。よろしく」
「日ノ浦照屋と言います。水素のB型です。あの、赤牙って炎月君と同じ苗字ですけど、もしかして兄弟ですか?」
「あー炎月のルームメイトは君か。そうだよ。炎月は俺の弟だ」
顔のパーツを見ると、確かにところどころ似ている部分がある。
「なあ紅牙、あのポンコツから無茶振りされたが、俺からも頼めないか?正直、6課のメンバーでまともに教育係ができるのはおまえくらいしかいないんだ」
まさかの真夜だけでなく、白輝までもが紅牙に頼み込んだ。
「いいですよ。しばらく手空いてるんで。ところで何教えたらいいんですか?」
紅牙は嫌な顔ひとつせず引き受けた。
「まず、仕事内容とその相手。あと能力の特訓も頼みたい」
「任せてください。明日からでいいですよね。いろいろと準備したいので」
「ああ、構わない。内容は全て任せる。照屋もそれでいいな?」
「はい、わかりました。がんばります」
照屋は元気よく返事した。今日1番の声だ。
「それじゃヒノ君、明日からよろしくね」
次の日から、照屋の特訓がスタートした。
続く
迷子になる前の車内にて
真夜 (ナビってどうやって使うんだ?わからん。まっすぐ行けばいいや)
数分後
真夜 (えーっと、ここ右かな?)
さらに数分後
真夜 (あれ?これどっち?さっき右行ったから今度は左か?)
この調子で進み続け、迷子の完成。
次回、バリバリ能力使っていきます。




