H 発見
全世界の人間が元素を操作できる能力を持つ世界。
キングオブバカこと主人公、日ノ浦照屋は学校の成績、能力でもバカっぷりを発揮。いつまで経っても能力が発現しない彼はどうなるのか。
ボンッ!
「なんだ今の爆発音は?」
「さあな。誰かの出した気体に引火でもしたんでしょ」
ここはどこにでもある普通の高校。先ほどの爆発は生徒の1人が能力によって生み出した水素に静電気が反応して起きた爆発らしい。割と日常的に起きていることなので、皆の反応は薄い。
放課後、教室では教師と生徒がマンツーマンで補習中のようだ。
「‘能力’ってのはな、全世界の人間が持っている元素を扱う力のことだ。そこまではわかるよな?」
「はい...なんとなく?」
「不安だなぁ。じゃあ、1人の人間が扱える元素の数はわかるか?」
「え〜っと、人による?」
「違う、1人1個だ。個人で違うのは元素の種類だ」
「うわ〜惜しかったっすね」
「どこがだ。だいたいここ中学の範囲だぞ」
「いやぁ、僕って中学の頃から人類元素学苦手で」
「それ以外もだろ。続けるぞ」
訳50分後、勢いよく教室に1人の生徒が入ってきた。
「やっほー照屋、補習終わった?」
「おいせめてノックして入ってこい。それにまだ終わってない」
突撃してきた生徒に対して、注意する教師の声は、50分間バカの相手をしていたからか、少々疲労を含んでいた。
「どうもすいませーん」
突撃者は全く気にしてないようである。
「まあいい。今日はこれで終わりにしよう。また明日な」
「えー明日もですか!」
「当たり前だ。3年にもなって中学のとこやってる方がおかしいんだよ。とりあえず今日は解散。忘れ物無いようにな。鍵は返しておくから」
「はい。じゃあ先生、また明日」
補修から解放された帰り道、日ノ浦照屋は愚痴っていた。
「まじで能力ってどんなもんなんだよ。いいかげんまともに教えてくれよ」
横にいるのは補習中に突撃してきた深江ノア。照屋の幼馴染だ。
「何度も教えてるじゃん。感覚よ感覚」
「いやわかるか!」
「そんなこと言われてもね、私だったらそこの鉄をヒョイって」
ノアがそう言うと、近くの公園のブランコがいきなり動き始めた。
「まじでどうやってんの?」
「んーヒョイって」
「まじでわかんない。いいや、この間病院で検査してもらった結果がまだだ。それが帰ってきてから考える」
「..先延ばし癖」
ボソッとノアがつぶやいた。
「やかましい。さっさ帰るぞ」
「あたしこっち〜。じゃあね」
「おう、また明日」
ここは、国の元素研究機関。その一室。
「あ、元素出ましたね。水素です」
研究員の見つめるモニターにはHの文字が浮かんでいる。
「水素か。なかなか扱いにくい元素だな」
横にいた別の研究員が口を挟む。この研究室には2人だけだ。
「ただちょっと面白いのがですね、この検査した日ノ浦って人、事前申告でA型って申告してたんですけど、実際はB型だったんですよ」
「え、まじで?自分の血液型間違えてたの?」
「能力発現不善ってことだったんですけど、そりゃあ発現しないよなってかんじですよ。超おもろい」
「あんま笑うなって。フッ」
「笑ってんじゃないすかw」
その時、モニターが赤い警告文を出してきた。
「おい、なんだこれ?」
モニターに映ったHの文字の隣に数字が出てきた。
「H4?こんなの見たこと無いぞ」
次の瞬間、モニターにはエラーの文字が映った。検査室との通信が途絶えたのだ。
「これは、いったいなんなんだ?ともかく、すぐ上に連絡だ」
「はいっ」
この検査結果によって、照屋の人生は大きく変わった。
高校では、後期中間考査の全教科が終わった。
「ヒノちゃん、テストどうだったよ?」
照屋のクラスメイトが話しかける。
「今回は結構いいよ。特に人類元素」
「まじか!32点くらいか」
「いや低すぎるわ!たぶん38ぐらいは行った!」
「どのみち赤点じゃねえかよ!」
そんなくだらない話をしていた。
『ピンポンパンポ〜ン 生徒呼び出しの連絡です。3年2組24番、日ノ浦照屋君、校長室まで速やかに来てください。 ピンポンパンポーン』
...数秒の沈黙後、教室中がどっと沸いた。
「おいw照屋何やらかしたんだよw」「待ってwお腹いたいw」
「おいお前ら笑いすぎだろ!何も思い当たることねーよ!」
「ほらw文句言わないでw校長室にぶっはははw」
「せめて最後までしゃべれ!」
周りからの声援?を背に、照屋は校長室へ向かった。
照屋が校長室へ呼び出される30分前。1台の高級車が高校の駐車場へ入ってきた。入り口に1番近いところに止まったその車からは、2人の男が出てきた。
「なあなあ、僕がここに来るのはいいとしてだ、なんで車で15時間もかけなきゃいけないの?」
助手席から出てきた若い男のため息と、かすかな苛立ちの混じった声は、長旅の疲れをそのまま表したようだった。
「しょうがないだろう。帰りのことがあるんだからな」
運転席から降りてきた、背の高い男からは、対照的に疲労が感じられなかった。
「あっそ、じゃあすぐ終わらせようか。行こ」
「ああ、間違いないな」
2人は見た目だけで、年齢差が感じられるが、若い男からの発言には、まるで年上向けの態度は感じられない。ただ背の高い男の方も、そんなことを気にする容姿はない。
校長には事前にアポを取っているため、校長室へ迷いなく向かっていく。
「誰だあの人達?」「さあ?」「背高いな」
さすがに、校舎内を歩く2人の姿は浮いている。生徒たちから、さまざまな小声が聞こえる。だがそんなことは気にもせず、校長室へ入っていく。
「あーわざわざ遠いところからお越しくださりありがとうございます」
やけに腰の低い校長である。
「さあさあ、どうぞお掛けになって、コーヒーでもいかがです?」
2人は勧められるがままにソファーに腰掛けた。
「そうだな、校長、コーヒーは何があるの?」
若い男が尋ねる。
「えー今あるのが、ケニア、インド、キリマンジャロ、そしてネスカフェでございます」
コーヒーは校長の趣味のようで、本格的な器材まである。
「じゃあネスカフェで」
「へ?」
拍子抜けである。おそらく客人にコーヒーを淹れるの楽しみにしていたのであろう。校長が少ししょげている。
「すまないな校長」
すかさず背の高い男がフォローを入れる。
「いえいえ、お気遣いなく」
「いや、そうではなくて、灰皿をもらえるか?」
校長が固まる。フォローではなく、ただ灰皿が欲しいだけであった。
「すいません。おたばこはちょっと控えてもらってよろしいですか。それとお二人とも、こちらネスカフェです」
「そうか、では迷惑をかけるな」
コーヒーが机に置かれた直後、断りを入れると同時にタバコを取り出した。
「え、ちょ、えー」
校長がものすごく狼狽える。しかしそれ以上言い返せない。
若い男が切り出す。
「それじゃあ校長、今日の本題の彼は?」
「..そうでしたね。今お呼び出しいたします」
こうして呼び出し放送へ繋がる。
照屋は校長室の前へ立った。一度深呼吸をして、覚悟を決める。
コンコン。校長室のドアをノックする。
「どうぞー」
中から校長の声がしたのち、ドアを開けた。
「失礼します..うっ」
中に入ると、普段は嗅がないタバコの匂いに顔をしかめる。校長を見ると、顔がこわっばっている。それがタバコによるものか、それともこの2人組の存在によるものなのか、照屋にはわからなかった。
「日ノ浦照屋君だね。どうぞ座って」
若い男に言われて、ようやく椅子に座る。
椅子に座ってすぐ、若い男が自己紹介を始めた。
「はじめまして。僕は明日真夜。CEA6課長だ。そしてこっちのおじさんは、菱炭白輝って名前で6課副長だ。今日僕らが来たのは、君がこの間受けた検査の結果を伝えに来た」
CEAとは、中央元素当局(central element authority)のこと。日本における元素能力による犯罪の取り締まり。また元素能力の研究を行う機関である。日本における、元素能力の全てを取り扱う最高機関だ。
「検査ってこの前病院で採血したあれですか?」
「そう、それの結果だ」
「どんな結果でした?」
照屋が前のめりになって聞く。
「まず、君の元素がわかった。水素だよ」
-あ、あっさり言うんだ。もっとドキドキさせてほしかった。
普段ははっきりものを言う照屋も、さすがに今回は心の中だけでつぶやいた。
「けど僕、確か水素動かせなかったですよ。毎年ある能力発達検査の時試しましたけど」
「...何言ってんの?」
真夜がものすごく困惑した顔をしている。
「え、だから、今年の春にあった能力発達検査の時に、水素も試しましたけど、動かせなかったですよ」
向かいに座っている2人がキョトンとしている。校長はコーヒーを飲んでいる。真夜と白輝は数秒固まっていたが、初めて白輝が口を開いた。
「おまえ、まさか自分がA型とでも思っているのか?」
「え、違うんですか?」
「おまえはB型だぞ。そりゃあ動かせるわけないだろ」
「え、え、まじですか?」
照屋は今まで、自分がA型だと本気で思っていた。だが実際はB型であった。
「ところで、なんでB型だったら動かせないんですか?」
「「「えっ」」」
真夜、白輝、そして校長の3人が同時に驚いた。
「あのー校長、照屋君って大丈夫なの?」
真夜が困惑しながら校長に尋ねる。校長は目を瞑り、首を捻ってうーんと、なんとも言えない様子である。
「1から説明してやろう。まず操る元素は1人一つ。ここはわかるよな?」
「はい、この間習いました」
ちょうど補習でやったところだ。
「この間って、これ中学の範囲だぞ。まあいい。それで、元素を操作する方法は血液型に依存するんだ。まずA型、これはその場に存在している元素を動かしたり、形を変えたり、温度を変えたりする」
「A型についてはよく知ってます。幼馴染がそうなので」
「そうか。で次にB型。おまえのことだ、よく聞いておけ。B型は自然に存在している元素の操作は全くできない。ただし、自分の体から元素を生み出すことができる。そしてこの生み出した元素の形を変えたりが自由にできる」
「あーなるほど」
初耳のような反応をした照屋だが、もうすでに学校で何十回も聞いている。照屋の反応を見た3人は全員呆れ顔だ。呆れながらも、白輝は説明を続ける。
「AB型は、さっき言ったA型とB型の特徴を両方持っている。だから説明は省くぞ。最後にO型だ。これは特殊でな、自分の体自体を元素に変えられる。俺みたいにな」
そう言うと白輝はスーツの袖をまくって腕を出した。その瞬間、白輝の腕が黒い粒子に変化した。
「えー何これ!」
照屋が、ものすごく驚いているのを見て、真夜はニヤニヤしている。反応が面白いのだろう。
「まあ驚くのも無理はない。O型なんて滅多にいないからな。俺の元素は炭素だ。と言ってもダイヤモンドなんかじゃなく、黒鉛だがな」
白輝の腕が元に戻る。照屋はまだ驚きが収まらない。
「あれ、僕らって授業しに来たわけじゃないよな?もっと重要なことがあるんだけど」
「バカですいません」
「本当にな」
真夜の発言は照屋にグサグサ刺さった。だが照屋の様子など気にせず、本題に戻った。
「今回僕らがわざわざやってきたのは、検査結果のせいだ。実は、検査の際に君の血液から出た水素が核融合を起こしたんだ」
「つまりどうゆうことですか?」
「超簡単に言うと、君の生み出す水素は特に手を加えなくても勝手に核融合を起こしてバリ危険ってこと。理解できる?」
「核融合ってあれですよね、太陽の」
「そこは知ってるんだ。意外だね。それで合ってるよ。検査中に発生した水素が微量でかつ、検査室が完全自動化してるおかげで誰もいなかったから人的被害はゼロ。部屋が一つ吹き飛んだだけで済んだよ」
「もしかして今回の目的ってその部屋の損害賠償請求ですか?」
「その程度なら紙で済ませてるよ」
「今回の目的はおまえの身柄の確保だ。そして今後は能力を完璧にコントロール出来るようになってもらう」
とんでもない話だ。そう照屋は思った。だが、そんなことを気にするような人間でないことは、この数十分の会話ですでにわかっている。
「わかったか?まあわかってなくとも来てもらうが」
「あの、どこにいくんですか?」
「6課の本部だ。場所は大阪だ。今すぐいくぞ」
「今すぐですか!さすがにそれはちょっと。親とかに連絡とかもしないと」
「安心しろ、家族にはここに来る前、すでに伝えた。公務員に就職だって」
「待ってください。脳が追いつかない」
「じゃあ車の中で追いついてね。おっさん、先車行ってるから。早く来てね」
そう言うと真夜は校長室を出て行った。照屋はまだ聞き足りないことがいっぱいある。
「あの、さっき親に公務員に就職って言ったって言いましたよね」
「ああ、言ったな」
「つまりCEAに就職ってことですか」
「ああそうだ」
「いつからですか」
「明日だ」
「親はなんと?」
「喜んでたぞ。公務員になれてよかったなって」
「そうですか。わかりました。行きます」
そう言って、照屋は白輝より先に校長室を出て行った。
「それでは校長、お騒がせしました。照屋は、我々が、責任を持って預からせていただきます」
「はい、彼を頼みます」
「それでは、失礼します」
校長室を後にした白輝は照屋の後を追い、共に今日乗ってきた車に乗り込んだ。
「おまえら、シートベルトは締めろよ」
「ちゃんと締めてるよ。さっさと帰ろうぜ」
出発後、しばらくして照屋はある違和感に気づいた。
「あれ、なんで駅の方行かないんですか?」
ゆっくりと真夜が振り返る。その顔はものすごく不機嫌そうである。
「なんで駅に行かないかって?なぜなら車で帰るからだよ照屋君」
てっきり新幹線を想像していた照屋は、軽く絶望した。
「ちなみに何時間かかるんですか?」
「15時間だよ」
-終わった〜トイレ行きそびれた。
「絶望してるとこ悪いが、途中寄り道する。だから18時間ほどかかる」
「えうそでしょー!」
真夜の不機嫌顔が更に歪んだ。照屋は後部座席で真っ白に燃え尽きたようになった。
続く
3人が出て行った後の校長室にて
校長「ネスカフェ、置いとくんじゃなかった。嫌いな人用に置いてたけど、まさかお偉いさんがネスカフェって。コーヒー淹れてあげたかったな。ん、なんだこの紙」
“モカがよかった。あとネスカフェおいしい” 真夜
校長「モカも置くか」
まずは読んでいただきありがとうございます。これが初投稿です。少々汚い文章ですが、今後ブラッシュアップしていければなと思います。
今回は物語の出だしの部分だけですが、異能力バトル系に仕上げていくので、どうかお付き合いください。




