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人生ってこんなもん?他人事な百年終えたら、最強神だったと判明しました〜お疲れ元人間はかつて愛したもふもふと怠惰を謳歌したい〜  作者: 瑠璃玉ねむ
【第2章】拠点づくり

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第19話:神隠しにあった人間

 

「シャフ君はネット使えないと、御神木様のとこ(あっち)行く意味ないよね?

 一応、1階に続いてる離れに部屋用意しといたから、必要なもの書き出しといてー!」


 そう伝え、私は転移を試してみる。あの『外の応接間』にいる自分をイメージする。


 パッ!


 お!できた!目を開くと着いていた。

 あれ、でもそういえば私、規律神たちがどこで仕事しているのか知らなかった!しまった…と思っていると、大きなドンが走ってくるのが見えた。


 さすが!案内に来てくれたのねー!


「靴!忘れてるぞー!!」


 ほんとだ、部屋からそのまま裸足で来ちゃった。


「ついでにドン、規律神が御神木様の中のどこにいるかわかる?」


 匂いでわかると言うので、背中に乗って案内してもらった。

 規律の神はまだ仕事中のようなので、規律神の部屋で、元のサイズに戻ったドンと遊びながら待った。


 わぁああぁ!もみくちゃぁ!よだれが!ドンさんよだれが!


「あー!!もう!!!戸籍ですね!!

 本人も良いって言ってましたよ!でも代わりにお願いしたいことがあるとかで、1度直接お話したいそうです!」


 我々は絵面的にも騒音的にもうるさかったようだ。


「ほう!じゃあ本人のとこに連れてってよ」

 どんな人か楽しみにしつつ、規律神に案内を頼む。


「え?神が出向くんですか?」


「え?そもそも無茶な頼み事するのはこっちじゃん?」


 どうも規律神とはちぐはぐする。グチグチ言いながらも、本人のところに案内してくれた。


「リーマン君は?」


「え?新しい眷属のことですか?今は魂の管理の仕方の詳細を事務員たちと詰めていますよ」


 働き者なようで何よりです。


 1人の女性のデスクにやってきた。

 どうやら見た感じ、私と同じ国の出身ではなかろうか。


「初めまして。葉露凪です。あ、元人間の怠惰の神です」

 思わず人間の頃の名乗りをしてしまった。


「あ、初めまして、北尾根 咲と申します。私のような者が直接お話ししたいなどと申し訳ありません」


「とんでもない。無理をお願いしているのはこちらなので。規律こ神の部屋で話しましょう」


「え!?」

 規律の神はこちらを見たが、他にどこで話せって言うんだ。とねじ伏せた。


 ひとまず応接用のソファに座り、あちらの世界を完全に捨てられるとは、どんな暮らしをしていたんだろうと興味半分で聞いてみた。

 彼女は、2週間前までは元の世界で暮らしていたらしい。両親は早くに事故で他界し、田舎の祖父母の元に身を寄せ、通信制の高校を卒業したそうだ。

 ところが、祖父母の介護と勉強、日雇いのバイトとの両立で友達もできなかった。そんな祖父母も看取ったところで、親戚との遺産相続の揉め事が始まり、疲れ切って全て放棄した。

 その後も就職は難しく、細々と孤独に暮らしていたが、耐えられなくなってきていたところで神隠しにあったそうだ。


 絵に描いたように不幸である。


「た、大変でしたね…」

 としか言えない…コメントしづらい…。こう言う時人間時代の他人とのコミュニケーションの経験不足を痛感する。


 しかし、彼女は明るく笑った。

「まぁこちらで返り咲いて見せます!親からもらった咲って名前の通り!」


 やっぱあの世界線、人間をタフにするな。

 私はさっそく本題に入ることにした。


「それで、あなたの戸籍を貸してくれる代わりに、お願いがあると聞いたのですが…」


 すると、咲さんはとても気まずそうに言った。


「あの…こちらのトイレ事情をご存知ですか…?」


「いや、それが私たち神々はトイレ要らないみたいで知らないんですよ。まさかぼっとん便所とか…?」


「そんな生やさしいもんじゃなくて…バケツに貯めるんです…!!」


 ぎぇえええぇえええ!!!!


「ま!!まじでか!!」


「そうなんです…!!私たちの国って、どこよりもトイレ綺麗な国だったじゃないですか!?堪えられなくて…」


 それはそう!


「それでお願いというのは…?」

 天界のトイレ改革だろうか。それはちょっとまだ荷が重いぞ。


「現世をご存知の怠惰様の領地で暮らさせてもらえないでしょうか…?きっとトイレも現世に近いですよね…?」

 彼女の願いはささやかなものだった。しかし、申し訳ないことにトイレどころか、住民ゼロである。


「自分の領地に、神隠し人間に住んでもらうことは問題ない?」

 念のため規律の神に確認すると、問題ないとのことだった。芸術の神なんかは、いろんな刺激が欲しくてスカウトしてまで住まわせているらしい。


「よし!うちの領土に家を作りましょう!記念すべき第1領民です!」


 トイレの浄化槽に邪悪スライムを入れておけば良いんじゃないかな?

 いや、でもさすがに邪悪といえど魂が可哀想か…?


「ねぇ、あの邪悪な落魂って何した魂なの?」

 私が聞くと、規律の神はひどく陰った顔をした。


「私も、それが気になって一度、調べたことがあるのですが、色が濃いほど…口にするのも躊躇われるほどの悪辣非道な人間たちだったようです。

 地獄というものがあれば、間違いなくそちらに堕とすべき魂です。

 もしかすると、あれらは浄化しきれず、転生させないために落ちているのかもしれません。正直他の神々も扱いに困っています」


 よし、永遠にトイレの浄化槽に堕ちてもらいましょう。邪悪な落魂の転生先は私が決めた。

 あとは私の希望を叶えるだけだ。


「こっちに来てまだ2週間ということは、まだ銀行口座やクレカも人間界に残ってる?」

 そう尋ねると、口座どころか曰くつきアパートの契約も残っているはず、とのことだった。


 ネットは残念ながらスマホのみだった。


「よし!じゃあ一度現世に戻って、そのアパートでインターネットの開通の契約をしてもらえませんか?

 お金は現金があるので、あなたの口座に入れます。Wi-Fiのルーターも買いましょう」


 これで規律の神も文句はないはずだ。


 しかし、またも咲さんが気まずそうに口を開く。


「あの…そのアパート…出るんです…だからあまり長居したくないというか…」


「え…?G…?」


「いや、幽霊の方です」



 どっちにしろ嫌だな。



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