第19話:ネット開通を目指して!
規律神が「Gって何ですか?」と聞いてきたので、「太古から存在している、人間からすると世にもおぞましい虫です」と答えると、
「あぁ、こっちにもいますよ」と言うので、私は自領内の駆逐を誓った。
幽霊って何で出るんだろう…
天界の話じゃ御神木様が、死者の魂を吸い上げるって話だったけど…
『死んだ』と言うことよりも、その場にしがみつく感情の方が強くて死んだとカウントされていない、
もしくは、死んだことに本人が気づいていなくてこれも感情があるために死んだとカウントされていない、あたりだろうか…
まぁ何でも良いや
「天界にさらってこれたってことは、天界から現世にさらうこともできるんだよね?」
と聞くと、規律神はうんざり顔で「できます。お好きにどうぞ」と言った。
言質は取ったぞ!
私は次の日に咲さんとまた御神木様の下で会う約束をして、その日は解散した。
トイレ…やばいな…
その日はそのことで頭がいっぱいだった。
ハクちゃんとロウくんに話すと、とんでもないという顔をしていた。
どうも眷属は私の記憶と感覚にも引っ張られてしまうようだ。
次の日、私は現金を握りしめて、ちゃんと靴を履いた。
長すぎる髪はポニーテールにし、キャップを被った。
稀に見えてしまう人がいるらしいので、現世風ファッションにした。
普通に人間のふりをしようと思えば、姿を見せることもできるらしいが、神力をかなり消費するらしい。
きなこに「お金持った?神力水水筒持った?メモ帳とペンも持った?」と確認された。
全部持った!!
「よし、行ってらっしゃい!」とみんなに見送られた。
御神木様に転移すると、すでに咲さんがきていた。
「お待たせしましたー」と近寄ると、昨日の制服ではなく、こちらにきた時の服装とバッグであろうプチプラファッションをしている。
家の場所を聞くと、あまり行ったことない場所だったが、都心の方なので近くの場所ならよく知っているところがあるので、そこにまず咲さんと手を繋いで転移した。
一応突然現れてもおかしくないように駅のトイレの個室の中にした。
咲さんが「これですよこれ!!トイレはこうでなきゃ!!」と荒ぶっている。
咲さんをトイレから引き剥がして、ATMに連れて行き、私の現金を振り込んだ。
ネットバンクも使っていたので、これで問題はない。
私たちは次に家電量販店で最新ルーターを買いつつ、咲さんの家に向かった。
そこまでボロくもなく、立地と家賃を照らし合わせるとやはり、よほど問題のある物件なんだろう…
「さ、咲さんは見たことあるんですか?」
「はい…1度だけ…なんかパソコンに向かっている姿が見えました。うち、パソコンないのに。夢だったかもしれませんけど…」
で、でも今の私は神だ!魂相手なら勝てるのでは!?
「咲さんはここに一旦いてくださいね!」と声をかける。
一応神力水飲んどこ…
いざ!
ガチャっ
いるー!!半透明だけどめっちゃ見えるー!!
パソコンでめっちゃ暴言吐きながらゲームしてるー!!
これは死んだことに気づいてないのかな…
「すみませーん、おーい」
イヤホンしてるから気づかないのか?
後ろから肩を叩くと、驚いて椅子ごとひっくり返った。
実際にある家具と、幽霊自身が見ている家具が違うようで、半透明に重なって見える家具が彼の部屋なのだろう。
「だ、だれ!?何で家に!?」とパニックになっている。
咲さんからしたら、そっくりそのままお返ししたいセリフだろう。
「あなたもう、死んでますけど気づいてます?私は神です。あ、お迎えに来たとかではないです。」
「………は?」
「咲さーん!大丈夫そうなので入ってきてください」
そういうと咲さんがそろりそろりと入ってくる。
「うわ!!すごい見える!!誰!?」
どうやら一度天界に関与したことで、見える人になったらしい。
「彼女が現住民で、あなたのせいでここは曰く付き物件になり、家賃は何と他の部屋の半分以下です!
咲さんは何でここが曰く物件かって聞きました?」
「前に住んでいた方が、脳梗塞だか心筋梗塞だかで孤独死されたとかで、それから不可解なことが起きるとかで住民の入退去が続いたそうで…」
とのことです、と幽霊くんに伝えると、唖然としていた。まだ信じられないようだ。
幽霊君に名前を聞き、咲さんがスマホで調べると、ニュース記事が出てきた。
それを幽霊くんに見せると、「嘘だろ…」と言いながらも認めざるを得ないと言った様子だった。
だが、これは都合がいいかもしれない。
自作ゲーミングPCのようだし、ネットの配線やら諸々には強いだろう…
このまま咲さんの名義で借り続け、幽霊くんにはここに居座ってもらうのも良いのではないか?
「幽霊君、物理干渉ってできる?例えばこの窓を開けたり、ドアを開けたり」
幽霊くんは立ち上がり、窓やドアに触ろうとしたが、すり抜けてしまった。
うーん…物理干渉できないのは困る…
何か依代でもあれば良いのだろうか。
ふと、ベッドに置かれた大きなクマのぬいぐるみが目に入った。
「あれは大事なもの?」と咲さんに聞いてみる。
「いえ、商店街の福引で当たったんですけど置き場所がなくて…」
「ちょっと幽霊君、気落ちしてるとこ悪いけど、あのぬいぐるみに取り憑けない?
たぶん、なんかイメージが大事っぽい!『俺はクマ!』って気持ちで身体を合わせてみて」
しばらく試してもらってみると、腕が動いた。
次第に全身が動かせるようになった!
ここに動くクマのぬいぐるみ爆誕である。
動くたびにモッモッという音がしている。
あの手なら台パンしても音が鳴らないだろう。
「本当に俺死んだのか…しかもクマって…キーマウで操作できないじゃん…」
気にするとこそこか。
ひとまず私は幽霊君に事の次第を説明した。
「君は家から出なくて良いから、なんか誰かが生活してるな、みたいな痕跡だけ残してくんない?電気使ったり水出したり、物音だしたり。あとはこれまで通り、遊んでくれてれば良いよ」
というと、まだクリアできていないゲームがたくさんあるらしく、引き受けてくれた。
「咲さん、裁縫セットある?」というと出してくれたので、クマのぬいぐるみの手と思しき部分を5等分に縫ったり切ったりして指を作った。
よしよし、これでゲームできるだろう。
私は咲さんのスマホからネットの契約をしてもらう。
回線の工事は済んでいる建物なようで、機械が届いたらそのままケーブルを繋げば良いようだった。
置配指定にして、設置とWi-Fiルーターへの接続系は幽霊クマに任せた。
「オンラインでマッチングゲームとかするなら
咲さんの名前でやってね!」と釘を刺した。
天界に戻って数日、契約したインターネットの無線の電波をたぬきがキャッチして、ネットは無事開通した。
やっほーい!
私は咲さんにサブスクでアニメが見られるように登録してもらったりして、順調な引きこもり生活をスタートしていた。
「まさかこんな展開になっていたとは…」と最新話まで見た時に、咲さんがやってきた。
「すみません、トイレ問題と住むところを…」
そうだった!!




