表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

【第1話】聖女召喚!


 ここは、この物語(ものがたり)舞台(ぶたい)となる日本(にほん)のとある(まち)高天原市(たかまがはらし)

 

 今宵(こよい)は、不気味(ぶきみ)なほどに(かが)満月(まんげつ)()らされて、(まち)(しず)まり(かえ)っていた。

 

 その住宅街(じゅうたくがい)一角(いっかく)両親(りょうしん)海外(かいがい)赴任中(ふにんちゅう)一人暮(ひとりぐ)らしを満喫(まんきつ)している神代(かみしろ)和希(かずき)部屋(へや)だけが、(あや)しげな(むらさき)(いろ)(ひかり)(つつ)まれている。

 

 和希(かずき)は、()(つよ)(まる)眼鏡(めがね)位置(いち)人差(ひとさ)(ゆび)()ててぐいと(なお)した。

 

 ボサボサの(がみ)をかきむしり、古本屋(ふるほんや)(すみ)()つけた「(しん)異世界(いせかい)召喚(しょうかん)(しょ)」を必死(ひっし)()んでいる。

 

 「……いでよ、(おれ)運命(うんめい)(みちび)(もの)! (おれ)(なか)(ねむ)勇者(ゆうしゃ)()が、(いま)こそ目覚(めざ)めを(もと)めているんだ!」

 

 中二病(ちゅうにびょう)全開(ぜんかい)(さけ)びとともに、和希(かずき)(ゆか)(えが)いた図形(ずけい)(はげ)しく発光(はっこう)した。

 

 突風(とっぷう)()()れ、(つくえ)(うえ)の|フィギュアがバタバタとなぎ(たお)される。

 

 「うわっ、本当(ほんとう)成功(せいこう)したのか!? これ、本物(ほんもの)魔法(まほう)じゃないか!」

 

 和希(かずき)()(ほそ)めて天井(てんじょう)(あらわ)れた(ひかり)中心(ちゅうしん)凝視(ぎょうし)すると、そこには(しん)じられない光景(こうけい)(ひろ)がっていた。

 

 (しろ)法衣(ほうえ)()(つつ)み、宝石(ほうせき)のように(かがや)銀髪(ぎんぱつ)をなびかせた、絶世(ぜっせい)美少女(びしょうじょ)(ちゅう)()いていたのだ。

 

 彼女(かのじょ)は、()()った黄金(おうごん)(つえ)(にぎ)(なお)し、(おごそ)かな(こえ)(くち)(ひら)いた。

 

 「――()()はリリシア・セレスティア。精霊(せいれい)加護(かご)Luminous(ルミナス)Judgement(ジャッジメ)!?……ン……ト……!?」

 

 リリシアと名乗(なの)った少女(しょうじょ)は、そこで言葉(ことば)()り、周囲(しゅうい)困惑(こんわく)したように見渡(みわた)した。

 

 つい数秒(すうびょう)(まえ)まで、彼女(かのじょ)勇者(ゆうしゃ)パーティーと(とも)に、魔王(まおう)討伐(とうばつ)最中(さなか)だったのだ。

 

 「ここ、は……? 魔王(まおう)(じょう)では……ない? それに、魔力(まりょく)(から)っぽになって……くっ!」

 

 リリシアは空中(くうちゅう)姿勢(しせい)(くず)し、(おれ)へと()かって()ちてきた。

 

 「こ……これは……(ゆめ)にまで()(そら)からおんなってくるあのシュチュエーションじゃないか!」

 

 理想的(りそうてき)な|キャッチに成功(せいこう)してリリシアと名乗(なの)っていた美少女(びしょうじょ)視線(しせん)()ける。

 

 「……あ、あの、(おれ)(きみ)()()した、勇者(ゆうしゃ)素質(そしつ)()神代(かみしろ)和希(かずき)です。よろしく、聖女様(せいじょさま)!」

 

 和希(かずき)(かお)(あか)くしながら、挨拶(あいさつ)をかわす。

 

 しかし、リリシアの(あお)(ひとみ)和希(かずき)(とら)えた瞬間(しゅんかん)、その(うつく)しい(かお)()()えて(ゆが)んだ。

 

 「……は?」

 

 (つめ)たい(こえ)部屋(へや)(ひび)く。

 

 「ちょっと、なんですの、その(どろ)まみれのジャガイモが、悪意(あくい)のある加工(かこう)をされたようなツラ(がま)えは? (わたし)(なに)をしたの!?……ここはどこ!?……貴方(あなた)はどなたですの?……魔王(まおう)はいったい……」

 

 「え、ジャガイモ……? あ、いや、これは(おれ)普段(ふだん)姿(すがた)で……」

 

 「そんなことより(はや)()ろしてくださらない!」

 

 リリシアの言動(げんどう)気圧(けお)され(しず)かに(したが)う。

 

 リリシアは(あたま)(かか)え、(ひざ)をついて絶望(ぜつぼう)した。

 

 しかし、絶望(ぜつぼう)している(ひま)はなかった。

 

 この世界(せかい)には魔力(まりょく)存在(そんざい)しないため、彼女(かのじょ)存在(そんざい)維持(いじ)するための「マナ」が、急速(きゅうそく)(そこ)()こうとしていたのだ。

 

 「うっ……身体(からだ)が、(おも)い……。このままでは、(わたし)(からだ)粒子(りゅうし)となって()えてしまう……」

 

 「ええっ!? ()えるって、そんなの(こま)るよ! どうすればいいんだ!?」

 

 和希(かずき)(あわ)てて()()ろうとすると、リリシアは「近寄(ちかよ)らないで、ジャガイモ(きん)がうつるわ!」と拒絶(きょぜつ)する。

 

 だが、同時(どうじ)彼女(かのじょ)(からだ)()(とお)(はじ)めた。

 

 「くっ……屈辱(くつじょく)だけど……()(はら)()えられないわ。ジャガイモ……いえ、カズキ! (いま)すぐ(わたくし)と|パスを(つな)ぎなさい! 召喚主(しょうかんぬし)である貴方(あなた)生命(せいめい)|エネルギーを補給(ほきゅう)しないと、(わたし)消滅(しょうめつ)してしまうのよ!」

 

 「パス? どうやって(つな)けばいいんだ?」

 

 リリシアは(かお)をリンゴのように()()にし、小刻(こきざ)みに(ふる)えながら()った。

 

 「……く……(くち)づけよ! それも、粘膜(ねんまく)(とお)した(ふか)い、その……濃厚(のうこう)なやつ!」

 

 「えええええっ!? いきなりKiss(キス)!? しかも濃厚(のうこう)って!」

 

 「細胞(さいぼう)レベルで(たましい)(つな)がるには粘膜吸収(ねんまくきゅうしゅう)しか手段(しゅだん)がないのよ!|キスならまだマシなほうよ!!……」

 

 和希(かずき)心臓(しんぞう)爆発(ばくはつ)しそうなほどの(はや)さで脈打(みゃくう)つ。

 

 リリシアは涙目(なみだめ)になりながら、()えかかる()和希(かずき)(むな)ぐらを(つか)んだ。

 

 「勘違(かんちがい)するんじゃないわよ! これはあくまで、(わたし)という存在(そんざい)維持(いじ)するための事務的(じむてき)作業(さぎょう)なんだからね! はやく……はやくしなさい、この不潔(ふけつ)ジャガイモ!」

 

 「そ、そんなこと()われても……」

 

 「(だま)りなさい!」

 

 リリシアは()をぎゅっと()じ、和希(かずき)(くちびる)自分(じぶん)(くちびる)強引(ごういん)()()おれなかふかはいってきた。

 

 その瞬間(しゅんかん)和希(かずき)脳内(のうない)(いなずま)()ちたような衝撃(しょうげき)(はし)る。

 

 童貞(どうてい)和希(かずき)には刺激(しげき)(つよ)すぎた。

 

 リリシアが(おれ)(なか)()けていく……ドクン、と体内(たいない)生命せいめいエネルギーが逆流(ぎゃくりゅう)し、リリシアへと(なが)()んでいく感覚(かんかく)

 

 同時(どうじ)に、リリシアの魔力(まりょく)和希(かずき)(なか)へと(なが)()み、(かれ)身体(しんたい)構造(こうぞう)一変(いっぺん)させた。

 

 「おおお……なんだ、この(みなぎ)(ちから)は……! 視界(しかい)が、視界(しかい)鮮明(せんめい)すぎるぞ!」

 

 供給(きゅうきゅう)儀式(ぎしき)()え、リリシアが(いき)()らしながら(はな)れる。

 

 和希(かずき)は、自分(じぶん)(くちびる)(のこ)余韻(よいん)と、(からだ)から(あふ)()黄金(おうごん)のオーラに驚愕(きょうがく)した。

 

 (いま)自分(じぶん)は、間違(まちが)いなく「本物(ほんもの)」だ。

 

 眼鏡(めがね)(おく)(ひとみ)(するど)(ひかり)(はな)ち、全身(ぜんしん)筋肉(きんにく)(はがね)のように()()まっている(本人(ほんにん)主観(しゅかん))。

 

 「()ろ、リリシア! (おれ)のこの雄姿(ゆうし)を! もはやジャガイモなんて()ばせないぞ!」

 

 和希(かずき)(まど)()(はな)ち、夜風(よかぜ)()びながら(つき)()かって格好(かっこう)よくポーズを()めた。

 

 その(とき)である。

 

 「……ちょっと和希(かずき)くん、こんな夜中(よなか)(なに)やってるの?」

 

 すぐ(となり)(いえ)二階(にかい)から、(あき)れたような(こえ)がした。

 

 そこには、パジャマ姿(すがた)(まど)から(かお)()した少女(しょうじょ)がいた。

 

 和希(かずき)幼馴染(おさななじみ)にして同級生(どうきゅうせい)学級委員(がっきゅういいん)の、**瀬戸際(せとぎわ) 咲季(さき)**である。

 

 彼女(かのじょ)は、学園(がくえん)でも評判(ひょうばん)優等生(ゆうとうせい)であり、(むかし)から和希(かずき)心配(しんぱい)して世話(せわ)()いている。

 

 「咲季(さき)か! いいタイミングだな。()てくれ、(おれ)のこの勇者(ゆうしゃ)のオーラを! ついに(おれ)は、この世界(せかい)(すく)(ちから)()()れたんだ!」

 

 和希(かずき)は、自分(じぶん)背後(はいご)()(さか)黄金(おうごん)(ほのお)背負(せお)い、自信(じしん)満満(まんまん)微笑(ほほえ)んだ。

 

 しかし、咲季(さき)()(うつ)っていたのは、(まった)(べつ)光景(こうけい)だった。

 

 (くら)部屋(へや)(なか)寝癖(ねぐせ)だらけの(かみ)眼鏡(めがね)(くも)らせ、ハァハァと(あら)鼻息(はないき)()きながら、全力(ぜんりょく)(へん)なポーズをとっている(いた)い|オタク。

 

 それが、咲季(さき)から()和希(かずき)真実(しんじつ)姿(すがた)だ。

 

 「……和希(かずき)くん。もしかして、また夜中(よなか)まで(へん)なアニメ()てたの? 明日(あした)一限目(いちげんめ)からテストなんだから、もう()なさい!」

 

 咲季(さき)(ひとみ)に、(ふか)い、本当(ほんとう)(ふか)同情(どうじょう)(あわ)れみの(ひかり)宿(やど)る。

 

 「(ちが)うんだ! (うそ)じゃない! ここには本物(ほんもの)聖女様(せいじょさま)もいるんだ!」

 

 「はいはい。おやすみ……」

 

 咲季(さき)はパタンと(まど)()めた。

 

 その瞬間(しゅんかん)和希(かずき)足元(あしもと)に、キラリと(ひかり)(かがや)くピンク(いろ)結晶(けっしょう)(ころ)がった。

 

 「あ……これ、『(あい)Drop(ドロップ)』だわ!」

 

 (ゆか)(すわ)()んでいたリリシアが、()(かがや)かせてそれを(ひろ)()げる。

 

 「咲季(さき)さんが、貴方(あなた)(たい)して『(こころ)から同情(どうじょう)して(すく)いようがないと(おも)った慈愛(じあい)(こころ)』が具現化(ぐげんか)したんだわ!これを(あつ)めていけば、その膨大(ぼうだい)なエネルギーを使(つか)って(もと)世界(せかい)(かえ)ることが出来(でき)るかもしれないわ!」

 

 「……手放(てばな)しで(よろこ)べない理由(りゆう)があるんだが、(おれ)のこの勇者(ゆうしゃ)威厳(いげん)はどこへ()ったんだ?」

 

 黄金(おうごん)のオーラ(本人(ほんにん)主観(しゅかん))を(まと)ったまま、和希(かずき)はガックリと(かた)()とした。

 

 こうして、不潔(ふけつ)なジャガイモ(あつか)いのオタクと、毒舌(どくぜつ)聖女(せいじょ)による、勘違(かんちがい)だらけの救世主(きゅうせいしゅ)生活(せいかつ)(まく)()けたのである。

 

 ((だい)2()(つづ)く)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
先が楽しみです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ