受験生厳禁!!ポマードの湯!
ポマードが
シリアルキラーになるとは
思わなかった話。
子供達が小学生の頃
よく、温泉に行っていた。
自宅から車で
1時間半ほどの山の中にある
古びた温泉旅館だ。
近くには
道の駅もあり
そこにも温泉はあったが
なぜか
湯船の淵の杉板に
ボコボコに穴が開いている
その温泉がよかった。
女湯には2・3人しかおらず
私が1人でゆっくり入れるからである。
自営業だし
いやでもずっと旦那ちゃんと一緒だし
家にいるので
子供達の世話もある。
それから解放される時間でもあったからだ。
いつものようにお風呂の時間を堪能し
ゆっくりとお風呂を出る。
出る時間は合わせているので
慌てて出る必要もない。
3人は先に男湯から出ていたようだ。
「いい湯だったね〜」
と声をかけると
3人が珍しく微妙な顔をした。
「どうしたの?」
車に移動して
帰りがてら話を聞いてみた。
どうやら
次男氏がお風呂で滑り
旦那ちゃんも長男氏も
危なかったらしい。
なんで3人して滑るのか?
それはおじ様たちのせいだった。
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この古びた旅館には
近くにゴルフ場があり
”ゴルフ宿泊プラン”という
週末限定プランがある。
これが盛況で
最近は来るたびに
おじさま達の集団がいたのを知っている。
1台のバスに20名近くの
おじさまたちと
玄関ロビーよくハチあった。
なぜかおじさま達は
似たような服装に香りを身につけている。
皆さんから漂う香りは
ゴルフを嗜まれるおじさま方が
好んで付けられる
強烈な整髪剤の主成分だ。
そう
ポマードである。
それが、汗と体臭と混ざり
それはそれは
独特な芳しい香りが
辺り一面に充満する。
バスは当然
2台から3台は必ずきていた。
毎回、苦笑いしながら
玄関ロビーを通り過ぎたものだ。
どうやら男湯には
その香りを纏ったおじさまが
大量発生していたようで
その体に染み付いた
汗や汚れと体臭などを落とすのと
同時に
頭につけたポマードも洗って落とす。
1人や2人ならどうでもいいこと。
だが
このおじさま方が
20人以上発生すると
予想以上の香害・・・・。
&
アクシデントが発生した。
まず、脱衣所から
ミント系の香りの
濃厚な香り・・・。
爽やかすぎる香りの予告がある。
5人も立てば窮屈な脱衣所に
おじさま達が立っていた。
当然、皆さんが
香りの発生源だ。
テカテカに輝くポマードの輝き。
そして
そのポマードは
浴室でサイレントキラーと化すのだ。
ポマードには
大量のグリセリンが使われている。
グリセリンとは
お肌の保湿剤になる
無色無臭の粘りけのある液体である。
グリセリンが洗い流される。
20人以上のおじさまが一斉に
ポマードを落としたら
温泉の洗い場がトゥルトゥル滑る。
水が流れても
入れ替わり立ち替わり
おじさま達が来ては
ポマードを洗い流す。
エンドレスに流れ込む
トゥルトゥルなグリセリン。
そして
お風呂に充満する
ポマードの香りとおじさま達の香りMIX。
男湯は完全にポマードの湯となった。
恐らく
いつもより濃厚すぎる香りに
次男氏は油断してしまい
洗い場で滑った。
思いっきり滑らなかったのは
不幸中の幸いだった。
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いやーーー!
なにその温泉!
入りたくないわー!
おっさんの体臭と
ポマードの香りMIXなんて
耐えられんわ!
次男氏は油断して
ポマードで滑った。
旦那ちゃんと長男氏は
気をつけて歩いてことなきを得たらしい。
3人はあまりにも強烈な匂いと
ポマードの滑りが怖くて
いつもより早く上がったらしい。
女湯とは完全に仕切られているので
女湯はいつものように静かだった。
私だけゆっくり出来たようだ。
けれど
子供達も旦那ちゃんも
ポマードの湯に懲りて
あれからあの温泉には行っていない。
「あの温泉には
受験生は行っちゃいけない!
絶対滑るもん!」
旦那ちゃんが笑って言ってた。
あの温泉は特別だし
他の所と比べると古すぎるから
行く受験生はいないと思うけど
確かに縁起が悪すぎるよね。
別の温泉に行くようになった。
さすがに
また同じことになったら
嫌すぎるだろう。
それよりも
帰りの車の中で
私は大爆笑だった。
山の中の薄暗い怪談話のあるトンネルに
差し掛かった時
旦那ちゃんが思い出したように
「そういえば次男氏がね
お風呂の桶にお湯を入れて
縦に3つ重ねてさ
『AKB48』と言いいながら
抱きついてたよ。
変態だよね〜」
と、暴露してきた。
どうやら
ポマードのおじさま方の前で
行動していたようで
眩しそうに次男氏を見ていたそうだ。
桶にお湯を入れ
それを重ねて
暖かい桶を抱きしめる。
妙に生々しいお話に
車の中は大爆笑。
お化けもびっくりの笑い声で
そのトンネルを通って行った
夏の日の思い出である。




