第三章 44話 山崎の戦いと天王山
1550年9月2日
足利勢八百五十はまだ暗いうちに出陣した。
大将はもちろん義輝様、副将は晴元、幕臣で来ているのは三淵藤英殿、細川藤孝殿の兄弟と、和田惟政殿、一色藤長殿、そして六角家からの援軍、蒲生定秀殿、賢秀殿の親子。
なんと、六角定頼殿、六角義賢殿の親子も援軍として来てくれることになった。
城にはわずかな人数と、幕臣達が残り、万一に備えている。
今回は忠頼、日吉丸、小竹丸、半兵衛も残した。
忠頼の南部馬には義輝様に乗ってもらった。
俺たちも出陣した。俺は義輝様の近くにいる。又兵衛と采女が交互に情報を伝えてくれる。
大峰隊は竹千代、辰千代に任せてある。
今日は甲冑を貸してもらってつけている。自分のものより重い。
この調子で行けば、人数も少ないので、昼過ぎには着くだろう。
山崎には、既に先行して大岩衆、戸隠衆、出浦衆、蜂須賀党に行ってもらい、陣を作ってもらっている。天王山も確保した。
三好勢には、これも戸隠衆が入り、内通の噂を流している。それによって、まだ摂津の富田から動いていないようだ。
今のところ順調。
晴元が怖いが、今はおとなしくしている。
京市中を通り、桂川を超え、桂、向日、長岡と進み、いよいよ山崎まで到着した。
大軍の気配がしている。
又兵衛、采女によるともう一刻もすると敵も到着するということだ。
内通したと噂を流した者は、陣の後ろの方へ配置換えになったらしい。
そのため時間が掛かったらしい。またもや成功だ。
足利勢の布陣は、右に天王山、左に淀川を見て、先鋒に和田惟政殿二百五十、蒲生定秀殿、賢秀殿三百、その後ろに大峰隊、本陣に義輝様百、晴元百。本陣に義輝様の護衛として、細川藤孝殿、一色藤長殿がいる。別動隊に三淵藤英殿が天王山に兵百と登った。
六角定頼殿、義賢殿は三百の兵で近くまで来ているらしい。
軍議をしたが、敵を迎え撃つという大まかなことしか決まらず、そうこうしているうちに、南側に三好勢の大軍が見え出した。
三好勢は、右に淀川、左前方に天王山を見て、先鋒安宅信康殿が二千、次鋒三好実休殿二千、岩成友通殿千、松永久秀殿二千、本陣三好長慶殿千五百。
まだ布陣しただけで動いていない。
まだ天王山の重要性にも気付いていないようだ。
天王山には三淵藤英殿の隊と一緒に戸隠衆が五十程入っていて、淀川の東側には蜂須賀党が準備している。敵が前進してきたら両側から、援護射撃をする予定だ。天王山の戸隠衆に五丁、蜂須賀党に五丁、大峰銃を渡してある。蜂須賀党には十分に撃ち方を教えたので、効果を発揮するだろう。
大岩衆は俺の周り、出浦衆は竹千代の周りで戦闘部隊として戦うためにいる。残りの戸隠衆には敵の後方を襲い、兵糧を奪ったりすることをお願いした。
残りの大峰銃はまとめてここに持っている。俺たちはそれぞれ南部馬の自分の愛馬に乗っている。戦力としては大峰隊が主力だろう。
三好勢が動き始めた。天王山に気付き、そこを登り始めたようだ。
さあ始まるな。
腰には義輝様から頂いた九字兼定と不動國行を差している。今日は槍も持っている。
後から声が聞こえるな。
六角勢が到着したか。
前に見える三好勢が前進を始めた。安宅信康殿の隊が動き出した。
その次の三好実休殿の隊も動いている。
それだけで四千だ。こちらの四倍。
と、その時、右の天王山で鉄砲を撃つ音が戦場に響いた。
ドーン、ドーン。
あの音はうちの大峰銃じゃない。
三好勢が持ってきた火縄銃か。煙が風に乗ってこちらに降りて来る。
どうなったかな。
目の前の安宅隊が近づいてくる。
弓を射だした。
こちらも少ないが、和田隊、蒲生隊が射返す。
その時、ズドーーーン、ズドーーーンという音が響いた。
これは大峰銃の音だ。右の山が騒がしくなった。
成功したな。
そしてまたすぐにズドーーーン、ズドーーーン、と響く。
前にいる安宅隊は驚いたようだ。降ってくる矢が少なくなった。
それを見た和田隊、蒲生隊が敵に突進を始めた。
自分たちより数が少ない部隊が突進してくるのを見て、安宅隊はさらに動揺した。
そこに和田隊、蒲生隊がぶつかる。
また右でズドーーーン、ズドーーーン、と鳴る。
その度に、敵は少なからず動揺している。
和田隊、蒲生隊の勢いは止まらない。
安宅隊が崩れ始めた。
いけるかな。
と、思ったら止まった。実休隊が援護を始めたようだ。
松若丸「采女、後方撹乱始めて。又兵衛、三好長慶殿の本陣の状況見てきて。」
采女・又兵衛「ハッ。」
今度は後ろから部隊が動いてきた。
六角隊が援護に入るようだ。義輝様の指示か。
俺らの右を通って前に進んでいった。
今のところまだ俺らは何もしていない。
天王山では鉄砲の撃ち合いが終わったようだ。おそらくこちらが勝ったのだろう。
序盤は勝っているな。
六角勢が前の乱戦に入って行った。
三好勢も岩成隊が後ろから来ているようだ。
しばらく続くな。
少し様子を見よう。




