第三章 35話 竹中家への恩と近江
1550年7月20日続き
又兵衛が戻ってきた。
又兵衛「戻りました。」
松若丸「何だった?」
半兵衛「我が父の家臣ではなかったですか?」
又兵衛「はい、そうでした。もうすぐこちらに参られますが、今夜は泊まって行かれてはどうかと、お迎えを出して下さったみたいです。」
松若丸「そういうことか。じゃあそうさせてもらうか。半兵衛いいかな?」
半兵衛「はい、おそらく父は稲葉山に出仕しており不在ですが問題ないと思います。」
その後、竹中家の好意で菩提山城に泊めてもらった。大峰館より少し小さいくらいの城というか砦のような感じ。飯山城に近いかな。
そこで竹中家家臣の方に夜盗について聞いてみた。それは夜盗だとは言っているがどうやら隣の浅井家の家臣であるらしい。浅井家もそこまでまとまっているわけではなく、家中の中でも色々あるらしい。
夜盗ならお礼に、鬼退治とばかりに成敗してもいいかなと思ったのだが、浅井家を刺激しないでほしいと言われてしまった。
竹中家は、当主重元殿が稲葉山上に詰めていることが多く、領地は見れないことが多い。
半兵衛が成長するのを待っていたのだが、半兵衛の才ならこの領地に縛り付けるより、今伸張している大峰家にいた方がゆくゆくはいいだろうとのことだった。
そうですか。半兵衛、これから竹中家の家臣の皆さんの思いも背負って頑張ろうな。
一宿一飯の恩だな。
1550年7月21日
結局ただ泊まらせて頂いただけで翌朝握り飯までもらって出立した。
お礼に商品を渡そうとしたが断固として断られたため渡すことができなかった。申し訳ない。
半兵衛が無事育ったら家臣として呼んでほしいと言っていた。是非呼ぼう。
ここから関ヶ原を通り、近江に入りなんとか日が沈む頃に甲良村の西明寺に入った。
ここでは長居するつもりはないので多くもなく少なくもない寄進をした。
そして一泊し、次の日、ここでは時間短縮のために、こちらから訪問して勧誘を行うことに。
既に結構時間経ってるからな。
1550年7月22日
翌日から、事前に又兵衛、采女に頼んで集めていた情報を元に、付近を歩き回り、大谷吉房殿、増田仁右衛門、藤堂虎高殿、脇坂安明殿、甲良光広殿を『勧誘』を使い家臣にすることに成功した。とりあえず全て俺の家臣で。
毎回のやり取りをまたやったが、特別面白いこともなかったので省略。
この時、大谷吉継の父大谷吉房30歳、増田仁右衛門長盛4歳、藤堂高虎の父藤堂虎高34歳、脇坂安治の父
脇坂安明20歳、東照宮の甲良宗広で有名な甲良大工の棟梁甲良光広26歳だった。
この近江勢も八善屋にお願いして先に大峰領に。
そして次は日野の蒲生家に行こうと思っていたら、京で今戦しているから日野にはいないらしい。
京で戦やってるって。それも市街戦。そんなのあったかなと思って『検索』で調べたら中尾城の戦いというのを銀閣寺付近でやっている。足利家側と三好家側で。
え、将軍、戦中じゃん。ちゃんと調べてから来たらよかった。てっきり戦なんかはなくて、京と近江をただ行ったり来たりしてるだけかと思ってた。ちょっと後悔。どうしようかな。
蒲生家は、南近江を治める主家六角と近江坂本辺りにいるようだ。
蒲生家には坂本に行けば会えるかもしれないけど、さすがにそこまで行って、「家臣になって」は、ないから今回は蒲生家諦めよう。
鶴千代生まれてないしそのうち機会もあるでしょう。
京の周りは三好勢一万八千がいる。中尾城も囲まれるのは時間の問題。
将軍助けるか。そしたら貢物するより印象良くなるよな。
足利幕府はあと数年で終わるし、足利義輝は、今は義藤か、は数年後に松永と三好三人衆に攻められるのも知っている。
俺が将軍助けるか。そして三好の手の届かない信濃に連れていくとか。
さすがにそれは将軍が納得しないか。
とりあえずここから、六角領を西に進むと、瀬田に至って有名な瀬田の橋を渡って京に入る。
六角家にも話通しておいた方がいいかな。
将軍家のことは一応皆に聞いてみるか。
結論を出すのはそれからにしよう。
松若丸「明日は琵琶湖沿いに西へ進んで京に入る。京では皆も聞いたように足利家と三好家が戦をしている。ここからは六角の領地。六角は足利に味方しているが手は出していない。相手の三好は今京を牛耳っていて、一万八千の軍で京に来ているらしい。我らは三十人足らず。大岩、戸隠、出浦衆を入れると百五十人くらいか。あと蜂須賀党もいるな。大峰銃が十五丁。さあ今後の動き方をどうしようか?」
竹千代「将軍に会いに来たんだろ?単純に将軍に味方したらよくない?」
辰千代「味方するのはいいけど、味方したら一万八千と戦うことになるだろ。」
千凛丸「それは避けたいですね。我々は軍を連れてきていませんから。」
長福丸「そもそも軍を持っていないのに味方とかいうのでしょうか?」
鷹千代「我らの戦力があれば戦にはなると思いますよ。」
源太郎「大峰銃もありますしね。」
秀胤「二百や、三百なら一人でもなんとか。」
満親「私も百くらいなら。」
忠頼「私は数に入れないでください。」
源四郎「私も大峰銃を覚えましたし、百くらいなら大峰銃なしでもなんとか。」
信房「若に従います。」
源左衛門「同じく。」
正左衛門「皆さんすごいですな。私もまあ戦いますよ。」
三左衛門「若に従います!任せてください。」
市兵衛「何でもやりますぞ!」
つっこむところはあったけどとりあえずいいか。
松若丸「皆の意見だと、将軍家に味方して、六角のように見ているだけじゃなくて戦おうって感じかな。」
日吉丸、小竹丸、彦右衛門、作左衛門は話してないけど同意しているな。
こういうときは静かなんだな。
半兵衛は何考えているかわからん。天才の考えることはわからん。
松若丸「将軍家に味方するって言った方が、六角領を通りやすいしな。じゃあそうしよう。実際にいつどうするかは京に付いて状況見て指示するから従ってね。」
一同「ハッ。」




