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戦国野望  作者: 丸に九枚笹
第三章
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第三章 33話 美濃侍と個性の強さ

1550年7月1日


信濃の大峰館を出て二ヶ月。

俺たちは美濃に入ろうとしている。


美濃ではまだ逗留先を決めていない。


なぜかというと、堀掃部大夫という人が僧となっている寺を探してそこにお世話になるつもりだからだ。


美濃に入るため岩倉から北上し木曽川を渡っているときに、竹千代の『探索』で探してもらったある寺に来た。


木曽川を渡るのに時間がかかったため、もう夕方になっている。



松若丸「ここ?あんまり裕福な寺でもなさそうだね。」


竹千代「ここだね。堀掃部大夫殿はここにいる。」


辰千代「どうやってお願いするの?松源寺とか大樹寺、熱田神宮と違って、大きくない所だと俺らよそ者は入れてくれないかもよ?」


松若丸「そこは久々に『諸勢力への伝手』の出番さ。あと、和尚様が出てきてくれたら『交渉』して。寄進はたくさんするから。」


竹千代「なるほど。尾張では全くだったからな。」


辰千代「確かに。いいとこ見せて!俺も『交渉』するから!」



予定通り和尚様に話して寄進をたくさんしたところ、当然驚かれた。


こうして泊めてもらえるようになった俺たちは部屋を貸してもらえた。が、かなり狭い部屋だった。けど、無理言って泊めてもらったんだ。文句は言うまい。

でも早々と決めてしまおう。


松若丸「千凛丸、堀掃部大夫殿という方とお話しがしたいんだけど、聞いてきてもらっていい?」


千凛丸「わかりました。」



竹千代「その人勧誘しても仕方なくない?欲しいのはその人の弟の子と、姉だか妹の子だろ?」


辰千代「堀秀政と堀直政ね。堀直政は今はまだ奥田だっけ?昨日とりあえず、堀掃部大夫殿と堀秀重殿、奥田直純殿には言われた通り『神託』やったよ。」


松若丸「そう。ありがとう。とりあえず堀掃部大夫殿を『勧誘』して堀秀重殿と奥田直純殿を紹介してもらって、『勧誘』するという方法。色々考えたんだけど、これがいいかなと思って。」


竹千代「なるほどね。じゃあそれで行こう。」


辰千代「わかった。その二人は松若丸が欲しいんだよね?」


松若丸「うん、ごめん、欲しい。あっ来たみたいだね。」


千凛丸が戻って来た。


千凛丸「若、堀掃部大夫殿お越し頂きました。」


堀掃部大夫「失礼します。堀掃部大夫と申します。」


松若丸(もう『勧誘』使って。)


竹千代(了解。『勧誘』)


松若丸「お忙しい中お呼びたてして申し訳ございません。大峰松若丸と申します。本日こちらに参りましたのは、堀殿の噂を聞きまして、もしよければ我が家にお越し頂けないかと思い伺った次第です。」


堀掃部大夫「私の噂ですか?聞いたことないですが…。それより大峰様の噂は聞いております。そのようなお方にお誘い頂けて光栄です。しかし、私は足のせいでもう武士としてはお役に立てません。代わりにと言ってはなんですが、せっかくの機会なので、私の弟、義弟とその子を家臣としてやっては頂けませんでしょうか?」


松若丸「そうですか。掃部大夫殿は残念ですが、是非その方々はお願いします。」


堀掃部大夫「ありがとうございます。明日ここへ家族も連れて来るように伝えますので宜しくお願いします。本日は、狭い所ですがゆっくりされてください。では。」


堀掃部大夫は頭を下げて出ていった。





竹千代「上手くいったな。驚く程。『神託』の効果か?」


辰千代「全くそれについては言ってなかったけど、どうなんだろね。」


松若丸「まあ上手くいったからよかったよ。紹介してもらって、また『勧誘』してって手間も省けたし。」


千凛丸「上手くいったようで、よかったですね!」



1550年7月2日


翌日、予定通り堀秀重18歳、奥田直純27歳、奥田三右衛門3歳を家臣とし、この寺を後にした。


そして、稲葉山城下の井ノ口の町にある大きな寺に入った。


ここでも『諸勢力への伝手』と『交渉』で泊まらせてもらうことになった。


ここには何日か逗留するので、多めに寄進をした。


大部屋に通され、隣の部屋も使っていいと許可をもらった。


こちらも何回も同じことをやっているので慣れてきた。



堀、奥田の一族は別の部屋を用意してもらった。




ここでは以前、斉藤家にいたことがある正勝と蜂須賀党に動いてもらうことにした。


松若丸「正勝、お願いがあるんだけどいい?」


蜂須賀正勝「はい、何なりと!」


松若丸「斉藤家に仕えた時に知り合った人たちに大峰に仕えないか声掛けてもらっていい?」


蜂須賀正勝「わかりました。誰か特定の人はおりますか?」


松若丸「森可行殿とその子の可成殿、加藤清忠殿と弟の清重殿、竹中重元殿とその子の半兵衛殿と久作殿は特にお願いしたい。」


蜂須賀正勝「よくご存知だ。森親子と加藤兄弟なら、今の状況に満足していないはずですので、すぐ来てもらえると思います。竹中重元殿は城持ち故、難しいと思います。が、重元殿は斉藤家の譜代でもなく、道三殿一代だけに仕えているつもりだと言っていたことがあったので、その子らだけなら、きっと大丈夫でしょう。」


松若丸「じゃあそれでお願いします!」


蜂須賀正勝「ハッ!」


竹千代(森可成も加藤清正の父親も斉藤家に仕えてる時があったって言うもんな。)


辰千代(正勝いてよかったね!明智光秀とか斎藤利三とかいいの?)


竹千代(『探索』したら美濃にいるみたいだけどどうする?)


松若丸(どうする?)


辰千代(光秀とか『神託』ハマりそうじゃない?イメージ的に。)


竹千代(何となくわかる。戦に行く前に何回も御神籤引いてるくらいだもんな。)


松若丸(じゃあ二人がいるならやって。)


辰千代(俺は別に。)


竹千代(じゃあいいか。)


松若丸(ここではもう噂流すのと募集するのやめるわ。あんだけたくさんの人と会うのもう疲れるし。)


竹千代・辰千代(確かに。)


松若丸(じゃあ、正勝を待つということで。一応、森可行殿、森可成殿、加藤清忠殿、加藤清重殿、竹中重元殿に『神託』やっておいて。)


辰千代(了解。)




1550年7月4日


千凛丸「森可行殿、森可成殿が参られました。既に隣の部屋にお通ししてます。」


蜂須賀正勝「よし来ましたか。私も行きましょう!」


松若丸「千凛丸、ありがとう、よくわかってるね。正勝、じゃあ頼んだよ。」


松若丸(二人も一応来て。状況見て『勧誘』よろしく。)


竹千代・辰千代(了解。)




松若丸「失礼します。」


森可行殿と向かい合って座った。

森可行殿の少し後ろに森可成殿が座っている。

俺の後ろに竹千代、辰千代。

俺と森可行殿の間に横向きに蜂須賀正勝が座った。



蜂須賀正勝「森殿、久しいですな!よくお越し下された!こちらが大峰松若丸様です!」


松若丸「お待たせして申し訳ございません。大峰松若丸と申します。」


蜂須賀正勝「松若丸様、こちらは森可行殿、森可成殿です!」


森可行「森越後守可行と申します。これは倅の三左衛門可成と申します。」


蜂須賀正勝「早速だが森殿、松若丸様への仕官の件、お考え頂けたであろうか?」


森可行「はい、松若丸様、お申し出は大変嬉しいのですが、わしはもう56。そろそろ隠居を考えておりました。故に、愚息三左衛門の仕官をお許し頂けませんでしょうか?これが叶いましたら、わしは郷里で隠居しようと思います。」


蜂須賀正勝「さようか。松若丸様!」


松若丸「そうですか。それでしたら、よろしければ我が大峰領で隠居して頂くというのはいかがでしょうか?もちろんお言葉通り、三左衛門殿には仕えて頂きます。越後殿も私の祖父の話し相手や、下の者たちの育成に力を貸してください。」


蜂須賀正勝「おう!それはいいですな!森殿、共に大峰家のために働きましょう!」


森可行「そんな。よろしいのですか?」


蜂須賀正勝「松若丸様が仰っているのですからいいのですよ!ですな、松若丸様!」


松若丸「ええ、是非。」


蜂須賀正勝「松若丸様もこう仰ってます!森殿!」


森可行「では、ご厚情に甘えさせて頂くとしますか。ありがとうございます。宜しくお願い致します。」


森可成「よろしくお願いします!」


蜂須賀正勝「おう!よかった!」


松若丸「では、まだ数日この寺におりますので、ご家族をお連れ下さい。」


森可行「ハッ。畏まりました。では一度失礼致します。」


蜂須賀正勝「森殿!よかったですな!これからもお願いします!」


森親子は一度帰っていった。




松若丸「正勝、ありがとう。」


蜂須賀正勝「とんでもないです!お役にたてましたな!次も楽しみですな!加藤兄弟もそろそろ参ると思います!」


よかった。森親子はほんとしっかり真面目タイプでよかったよ。重用しよう。

森可行56歳、森可成27歳。真面目な忠臣親子を家臣とできた。





それにしても一つ思ったことがある。


お気づきでしょうか。


正勝、うるさい。


小説とかだと秀吉の影となって、秀吉のために黙々と働いたって感じだったのに。


いや感謝はしている。森親子も、これから来るであろう加藤兄弟も、竹中兄弟も間違いなく正勝のおかげなのはわかっている。


ただ、黙々とはしていない。


これは、辰千代、日吉丸と一緒に働いてもらった方が力を発揮しそうな気がする。


そうか。だから秀吉と上手くいったのか。


決めた。


と、そこまで考えたとき。



千凛丸「若、明智十兵衛光秀と申される方がいらっしゃいましたが?」


松若丸「明智光秀?あれ?何かしたっけ?」


竹千代「いや何も。『神託』使った?」


辰千代「いや全く。」


松若丸「何だろ?じゃあ通してもらっていい?」


千凛丸「ハッ。」




明智光秀「突然失礼致します。明智十兵衛光秀と申します。」


松若丸「大峰松若丸と申します。」


明智光秀「本日参上しましたのは、我が主、斉藤山城守様の命です。この美濃は、斉藤山城守様とご子息義龍様とに割れており、今後どうなるかわかりません。私は斉藤山城守様の正室の一族で、斉藤山城守様から義理の甥にあたります。そこで斉藤山城守は一族の中でも優秀な私に、斉藤家の親子の争いに関わらないように、大峰松若丸様が許して下されば、家臣として仕えよ。との命で参りました。どうか、大峰家の家臣として頂けないでしょうか。」


これは秀吉とは違ったタイプだけど、勝手によく喋るな。


斉藤道三の命令を聞いてここに来たから家臣にしろってことだろ。それもごちゃごちゃ説明が長い。


イラッとするけど、光秀なりに説明しているんだろう。


松若丸「つまり、主人の命令だから仕方なく当家に仕えるとそういうことですか?」


明智光秀「いえ。きっかけは今の主人の命によってここに参りましたが、もしお許し頂けましたら大峰様のために全力でお仕えします。私ならきっとお役に立てるでしょう。」


いちいちムカつくな。でもまあきっと役には立つんだろう。


松若丸(どうする?)


竹千代(まあここまで言ってるならいいんじゃん?)


辰千代(まああんまいい感じしないけど家臣にしたら?)


松若丸(わかった。)



松若丸「そうですか。では、宜しくお願い致します」


明智光秀「お許し頂けますか。ありがとうございます。では、一度、斉藤山城守に一言挨拶し、家族とも話し、家臣を引き連れ、三日後に参ります。宜しくお願い致します。失礼致します。」


そう言って颯爽と帰って行った。



松若丸「あれムカつかない?ずっと自分は賢いって言い続けてるみたいじゃん。俺にはそう感じた。」


辰千代「俺にもそう聞こえたけど、優秀なのは確かだろ。色々助けてくれそうじゃん。」


竹千代「まあ間違ったことは言ってないからな。嘘ついてるよりはずっといいだろ。」


松若丸「うーん、まあね。じゃあいっか。」


辰千代「うーん。いいか。」




こうして、予想外ではあるが明智光秀を家臣とした。このとき22歳。


本能寺の変は勘弁してほしい。気を付けよう。



しかし、信長って本当にすごかったんだなと思う。


尾張からここまで家臣にした者たち全員個性が強すぎる。

皆優れているのは確かだがまとめるのはめちゃめちゃ大変だったろう

尊敬するわ。



結局、今日は加藤兄弟来なかったな。

明日は来るかな。

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