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戦国野望  作者: 丸に九枚笹
第三章
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第三章 31話 犬と猿

1550年5月27日


俺たちは色々と処理を終え、やっと大樹寺を出立した。


三河で家臣にした者たちは無事、八善屋が用意してくれた船に順々に乗って行った。


次の熱田神宮には、既に八善屋からまた荷物と資金を運んでくれていると甚兵衛に聞いたので、大樹寺に更に寄進をした。


岡崎松平家にもお詫びの気持ちで、八善屋から追加で届けてもらい、うちの商品と資金を大量に贈り物として届けてくれるように大樹寺にお願いした。


これが後々に影響してくるとはこの時は思いもしなかった。


岡崎松平家としては、家来になるかもしれないが現時点での三河平定の障害となる者を排除してくれたばかりか、困窮している岡崎松平家に対して、家臣たちの次男、三男以下を家臣として雇ってくれ、酒や薬、食料、高級品である砂糖や生糸の贈り物や、資金まで援助してもらえたと感じたらしい。


まあそれは後々の話。




大樹寺から熱田神宮までは、矢作川を渡れば平坦な道なので、南部馬を飛ばしたら昼には到着した。


ここでも八善屋の者が既に寄進して話をつけてくれていたので、すぐに案内してもらえた。

部屋は大部屋。


ここにも数日逗留する予定だと話すと、甚兵衛は一度大湊の支店に行って、出立する頃にまた戻ってくることになった。大湊に甚右衛門が来ているらしいので、今回の協力のお礼を伝えてもらうようにお願いした。



松若丸「ここでは、前田家、佐々家、福島家だ。三河で後からやった方法をそのまま使おう。又兵衛と采女は、大峰松若丸が熱田神宮にいること、次男でも三男でも四男でも五男でも武士でない者でもかなりいい待遇で家臣となれる可能性があること、三河でも多くの者が家臣として召し抱えられたことを宣伝してくれ。また何日か逗留する。集まった人が多ければ、皆にはまた集まった者たちの対応をお願いすると思う。千凛丸は宮司に頼んでどこか場所を使う許可を取ってくれ。忠頼はまた名簿を作ってくれ。あれはかなり役に立つ。皆頼んだよ。」


一同「ハッ」


忠頼「お役に立てて光栄です。」


松若丸(辰千代はまた『神託』で、前田利春、前田利家、佐々成宗、佐々成政、福島正信にお願い。竹千代は『探索』でまた有名武将いないかお願い。)


辰千代(わかった。)


竹千代(やってみるわ。)



竹千代(織田家の家臣って信長が本当に取り立てた者ばっかりなのかもな。明智光秀はまだ美濃、秀吉は本当に中村にいるわ。日吉丸。秀長もいる。小竹丸。滝川一益はわからん。名前もどうなってるのか。柴田勝家は末森城にいる。丹羽長秀は清州にいるな。斯波家家臣か。あとは、池田恒興は信長の乳兄弟だから無理だろ。他誰かいる?)


辰千代(秀吉の家臣だった人たちは?蜂須賀正勝とか前野長康とか加藤光泰とかは?)


竹千代(蜂須賀正勝は近くにいるな。他はいない。名前もわからん。今の名前がわからんとどうしようもない。)


松若丸(俺も『検索』使って探してるけど、信長の家臣って信長に仕えるまでが謎って人が多くて、現時点ではどこで何をしてたのかわからない人が多いな。)


竹千代(そしたらどうしようもないな。集まって来た人の中にもしかしたら、有名人がいる可能性もあるから、名簿はいい考えだったな。)


辰千代(じゃあどうする?誰が欲しい?)


竹千代(柴田勝家欲しいな。)


松若丸(俺は丹羽長秀欲しい。)


辰千代(じゃあ俺は秀吉もらっていい?)


竹千代(いいよ。辰千代と合いそう。)


松若丸(日吉丸は噂聞いて来るかもね。柴田勝家と丹羽長秀は『神託』かな?どっちも信長の弟の信行と、斯波家から信長に仕えてるから、もしかしたら来るかもね?)


竹千代(そうだな。辰千代宜しく。日吉丸にもやっておけば?)


辰千代(そうするわ。)



その日はそれで終わり、次の日は待っていたけど、誰も来なかった。




1550年5月29日


朝、また様子を見に行った千凛丸が戻って来た。


千凛丸「若、前田利春殿、犬千代殿、藤千代殿、村井長八郎殿、福島正信殿がお越しです。」


松若丸「おー、たくさん来たね。場所は?」


千凛丸「隣の部屋を使っていいと許可をもらってます。」


松若丸「ありがとう。じゃあそこに通して。竹千代、辰千代行くよ。」


竹千代「どうなるかね。」


辰千代「まあ行けるっしょ。」


一度廊下に出て、隣の部屋に入り座る。


松若丸「失礼します。大峰松若丸と申します。」


前田利春「突然申し訳ございません。海東郡荒子城主、前田縫殿助利春と申します。本日は、松若丸殿が次男、三男以下を家臣にして下さっていると噂を聞いて参りました。そのお話、誠にございましょうか?」


不器用な人だとは聞いていたけど、包まずに話すな。真面目なのか。冗談が言えないというか、とにかく真面目な人なのかな。


松若丸「はい、有能な方であれば是非我が家で家臣として働いて頂きたいと思っております。」


前田利春「そうでしたか。申し遅れました。ここにおりますのが、我が子犬千代、藤千代と申します。四男、五男ですので、家を継がせることは難しく、他家に養子に行かせようかと考えていましたところ、噂を聞きまして参りました。もしよろしければ家臣として頂けませんでしょうか?もし使えない様でしたらいかようにして頂いても構いません。宜しくお願い致します。」


おー、余計な話は一切しないんだな。


犬千代・藤千代「お願いします。」


二人は躾がしっかりされているらしい。


松若丸「そうですか。こちらこそ宜しくお願いします。おいくつですか?」


犬千代「はい、私は11です。弟は9です。」


真面目、好印象。


松若丸「11でしたら、私と同い年ですね。これから色々とお願いします。」


犬千代「お役に立てるよう精進致します。色々とご教授下さい。」


真面目。いいね。


前田利春「何卒息子たちを宜しくお願いします。」


松若丸「こちらの方は?」


前田利春「はい、これはまた申し遅れました。こちらが犬千代の小姓である村井長八郎と申します。この者も宜しくお願い致します。」


さては、忘れてたな。


松若丸「そうでしたか。わかりました。こちらは?」


前田利春「はい。この者は我が城下の桶屋、福島正信と申す者。我らが本日、松若丸殿の所に行こうとしていることが、なぜかわかったらしく、一緒に連れて行って欲しいと言うので同行しました。」


こっちもきっと忘れてたな。それもついでみたいに。


松若丸「そうなんですか。」


福島正信「はい!福島市兵衛正信と申します!今は桶屋ですが、元は武士でございました!武士でない者も家臣として頂けると聞いて参りました。少しでもお役に立てるよう、何でもやります!よろしければ家臣として頂けませんでしょうか?」


松若丸「そうですか。そこまでの気持ちでお越し下さったのでしたら、こちらこそ宜しくお願い致します。」


福島正信「よろしいのですか!ありがとうございます!宜しくお願い致します!」


竹千代(福島正則の親だよね?もらっていい?)


辰千代(どうしたん?急に。)


竹千代(何か正則のためだけに家臣になってもらうにはもったいない気がした!)


松若丸(じゃあいいよ。)


竹千代「市兵衛殿。私は大峰家譜代家臣の山下家嫡男竹千代と申します。もしよかったら私の家臣となって頂けませんでしょうか?」


福島正信「松若丸様、どのようにしたらよろしいですか?」


松若丸「市兵衛殿、山下家は我が譜代の家臣で、竹千代は優れた我が家臣です。よろしければ、竹千代に仕えて頂けませんか?」


福島正信「畏まりました。竹千代様、宜しくお願い致します。」




こうして、前田犬千代11歳、藤千代9歳、村井長八郎7歳、福島正則の親である福島正信25歳が家臣となった。



特に信託のこと話してなかったけど、効果はあったんだろう。気付いていたけど、皆が皆、神のお告げがありましてとか言うわけではないらしい。



まずは利家と正則と、ラッキーで佐脇良之と村井長頼も手に入れた!

ここで何かゲーム的な音楽が鳴ってほしいところだな。



犬千代は信長に仕えた後、小姓を斬って信長の逆鱗に触れ、一度放逐されたことがあるとか、傾奇者で暴れ者だったという話があるが、今見た感じ、めっちゃ真面目で、まさに忠犬って感じ。


信長の影響でそうなったのか、それとも真面目な犬千代は、自分をそう見せようとしていたのか。同僚を斬ったのも余程その斬られた方が腹の立つ奴だったのだろう。


真面目な忠犬、とても気に入った。


今後の旅に連れて行こう。



福島正信は俺の家臣にするつもりだったけど、まあ二人にも有能な家臣がいた方が結果、俺も助かるから二人の家臣もどんどん増やしていこう。




1550年5月30日


次の日、何人か来たけど、ちょっと使える人はいないかもなと思っていた時。


松若丸「あっ!」


竹千代「あれは、そうだろうな。」


辰千代「本当に猿みたいに見えるな。」


松若丸「千凛丸、あそこの陰で見てる人と話したいから呼んできてもらっていい?」


千凛丸「わかりました。」



日吉丸「ハハーッ!」


松若丸「そんなに恐縮しないで。顔を上げてください。そちらは?弟さん?」


日吉丸「はい!中村から参りました木下弥右衛門の子、日吉丸と申します。こちらは弟の小竹丸です。父は昔、侍でありましたが、怪我をして中村にて百姓をしており、今は亡くなりました。継父と母、姉、妹と私とこの弟と暮らしております。日々暮らしが楽にならず、色々な商売をしたりして凌いでいます。私は、武士になることが夢でしたので、今回、松若丸様が、武士でないものも才があれば家臣にしてくださると聞いてこちらに馳せ参じました。私はご覧の通り、体は大きくありませんが、何でもやります!どうか宜しくお願いいたします!」


松若丸(これ、秀吉で間違いないな。よく喋るし、話も上手い。ただ、尾張弁がすごいって聞いてたけど、ちゃんと話すじゃん。)


竹千代(すごいな。よく喋る。)


辰千代(いいね!明るくて楽しくて!もらっていいんだよね?)


松若丸(いいよ。俺と竹千代にはこの日吉丸は明るすぎる。ね?)


竹千代(そうだな。ずっと一緒にいれないな。)


辰千代(じゃあ俺から話すよ。)


松若丸(わかった。じゃあ俺は形だけ。)


松若丸「日吉丸殿、よくお越し下さいました。ありがとうございます。」


松若丸(どうぞ。)


辰千代「日吉丸殿、私は大峰が譜代の家臣、中村家の嫡男、辰千代と申します。もし日吉丸殿がよければ、私の家臣となって頂けませんでしょうか?」


日吉丸「よろしいのですか!是非とも宜しくお願い致します!」


そう言って日吉丸は輝くばかりの笑顔を見せた。

これは眩しい。明るい。辰千代じゃないとこの明るさには耐えられない。


辰千代「こちらこそ。では、弟の小竹丸殿も一緒に我が家臣として宜しくお願い致します。」


小竹丸「ハッ。宜しくお願い致します。」


日吉丸「これはめでたいですな!尾張中村出身の我らが中村様にお仕えするのです!」


松若丸(何がめでたい?)


竹千代(わからん。)


辰千代「そうですね!ご縁ですね!」


日吉丸「これを機に私も木下の姓を改め、中村と名乗りとうございます!お許し頂けますか?」


辰千代「いや、それはやめよう。ややこしい。」


松若丸(それはだめなんだ?)


竹千代(わからん。)


日吉丸は少しおとなしくなった。


辰千代「では、家族に挨拶してきたらどうですか?これはご家族の暮らしの足しにしてください。」


辰千代が手持ちの資金を渡した。


日吉丸「そんな!ありがとうございます!辰千代様に一生ついていきます!では、親に挨拶してすぐに戻って参ります!小竹、行くぞ!では!」


また元気になった。切り替えが早い。


そして走って行った。


慌ただしい。落ち着かない。明るい。声が大きくてちょっとうるさい。

最初は見た目が、と思ったけど、挙措動作が騒がしい猿みたいなんだと思ってしまった。

信長には禿ネズミとかも言われていたらしいし、見た目より、その雰囲気というかキャラクターが猿って呼ばれてた理由なのかなと思った。



木下日吉丸13歳、小竹丸10歳。日吉丸は色々と商売をしていると言っていたが、この時はちょうど尾張にいたらしい。


辰千代は波長が合ったのかめちゃめちゃ気に入ったらしい。


まあよかった。

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