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戦国野望  作者: 丸に九枚笹
第三章
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第三章 26話 対決!川中島の戦いと大峰銃

1550年3月15日


井上、村上、武田連合が北上して来る進路を確認し、迎え撃つために現代においての川中島古戦場の辺りに布陣した。まあこの辺りに来るだろう。


長篠の戦いを参考にして、敵が来る南側から、東西に長く落とし穴を二重に掘って、一番こっちになる北側に幅3m、深さ2mくらいの空堀を掘っておいた。柵はこの後の追撃戦に邪魔なので作らなかったが、空堀を掘ったときの土を盛って射撃に邪魔にならない程の低い土塀を作った。ここに鉄砲の先を置いて撃てば、より命中率が上がるだろう。この土塀があるだけで、兵たちに気持ちの余裕も生まれるはずだ。



こちらの布陣は鉄砲隊を横一列に並べている。

西側から安倍隠岐、山下兵庫、室賀備後、中村主計、安倍主水。

その後ろに本陣。


そのさらに後ろにちょっと距離置いて槍隊と騎馬隊。



大峰銃は後装式で、かつ、紙製薬莢を大量に作っているので、一段目が撃ち、弾込めをしている間に二段目が撃ち、二段目が弾込めをしている間にまた一段目が撃ちと、二段撃ちでずっと撃つことができる。今回は上手くいけば千二百五十発の弾がずっと戦場を飛んでいることになる。

更にライフリングと円錐形弾のおかげで飛距離が長く、銃床を肩につけて撃つため命中率も高い。

なるべく、兵の足や馬を撃って動きを止め、捕らえるように指示を出した。捕らえる段階では戸隠衆にも頼んである。




本陣には父上と俺、小姓衆。大峰館の留守は祖父。


松若丸(来たね、川中島。)


竹千代(嫌がってたじゃん。)


辰千代(史実と全然違うし。)


松若丸(まあ勝てるからいいじゃん。)


辰千代(まああの鉄砲あれば勝てるだろうけど。将を捕らえるってなかなか難しくない?誰くるの?)


松若丸(誰が来そう?『探索』で有名な武将来てないかざっと探してみてよ。)


竹千代(わかった。)



竹千代(かなりすごいな。この時代の名前で、飯富兵部、原虎胤、馬場信房、飯富源四郎、春日弾正、工藤源左衛門だってさ。これ捕らえても『勧誘』いけるかね?)


辰千代(馬場信房は馬場信春、飯富源四郎は山県昌景、春日弾正は高坂昌信か。工藤源左衛門って?)


竹千代(内藤昌豊。)


松若丸(すごいな!馬場信春と山県昌景と高坂昌信と内藤昌豊欲しいな!)


辰千代(それできたらすごいな。)


竹千代(長篠みたいにみんな殺さないようにしないとな。難しいだろうけど。)


松若丸(まあ家臣にできたらラッキーってことで。)


竹千代(平定戦するんだろ?捕らえていつ『勧誘』使う?)


松若丸(皆には先に平定戦行ってもらって、『勧誘』やったあと、俺らも追おう。)


辰千代(松若丸いないとまとまらなくない?)


松若丸(まあ大丈夫でしょう。村上義清は討ち取ってもいいな。)


竹千代(そうだな。別にいらないな。)


辰千代(じゃあ捕らえたらちょうだい。)


松若丸(いいけど、もう50歳くらいだよ?)


辰千代(そんなか。まあ捕らえたら考える。)


竹千代(そうだな。)


松若丸(よし、そろそろやるか。)




敵情視察に行っていた又兵衛が帰ってきた。


松若丸「そろそろ来た?」


又兵衛「はい、来ました。」


松若丸「じゃあ、隼人殿、挑発のために戸隠衆お願いします。」


戸田隼人「わかりました。」


今回は隼人殿も来ている。




敵が見えるところまで近づいてきた。

敵方の先鋒は井上勢、その次が村上勢、武田勢の順。



落とし穴の向こう側に行った戸隠衆二百人が石礫を投げ始める。

三方ヶ原の戦いの武田の戦法を使わせてもらった。



あっさり井上勢が挑発に乗り突っ込んできた。

戦略も何もあったもんじゃない。

こう見ると、高梨秀政は戦上手かったんだな。改めて惜しいことをしたと思う。まあ仕方ない。


井上勢に釣られて村上勢と武田勢も走ってきた。



ここで戸隠衆撤退。退路を塞ぐために敵の後ろへと廻り込みに行った。



井上勢が雄叫びをあげ、近付いてくる。

地響きがすごい。


うおー!

敵の雄叫びが徐々に近付いてくる。


焦るな。


もう少し。


あと少し。


………よし!


松若丸「放てー!!」


ズドーーーーン、ズドーーーーンと雷が落ちたような音が響き渡った。煙があがる。


一瞬で世界が変わったようだ。

今までの喧騒が嘘のように静まり返った。


よく見えないが次を命じた。


松若丸「次!放てー!」


俺の声に我に返った鉄砲隊の二段目が一斉に撃つ。


調練はずっと行っているが実戦で鉄砲を使うのは初めてだ。

兵たちも将たちも一瞬呆然としていた。



ズドーーーーン、ズドーーーーンとまた雷のような音がして、煙が上がった。


その時、風が吹き、白い煙を吹き飛ばした。


その時見た光景に驚いた。


落とし穴までも辿り着いていない。


なるべく下を狙ったのだが凄惨な光景が広がっていた。


息を飲んだ。戦争をやっていることを実感する。



敵はある種の興奮状態になっている。

自らを奮い立たせるためにまた雄叫びを上げて走り始めた。

辺りにうおーという声がまた響き、また地響きが。

後ろからも続々と村上勢、武田勢も前進してくる。



が、先頭が一列目の落とし穴にはまる。

それを超えようとしたところにまた一斉射撃。


もう俺の手を離れた鉄砲隊たちはそれぞれの指揮官の指示で射撃をしている。




しばらく、戦と呼べるかわからない一方的な射撃が続いた。



圧倒的だった。





もう戦意が失われたのか雄叫びが聞こえなくなった頃、射撃をやめさせた。


松若丸「射撃やめよ!将を捕らえよ!行けっ!」


それまで何もせずに待機していた槍隊、騎馬隊が走り出した。



将を捕らえ始めた。少しの抵抗はあったが、すんなり何人も捕らえることができた。


幾人かは逃げたようだ。将でも討死した者もありそうだ。





本陣に捕縛した将たちを連れて来た後、すぐに各隊は各地の平定戦に向かった。


本陣では、捕らえた将たちを丁重に扱うように指示し、手足を縛ったりせず、用意した床几に座ってもらった。



予定通り、飯富兵部、原虎胤、馬場信房、飯富源四郎、春日弾正、工藤源左衛門、それに村上義清が並んだ。他にも侍大将級の者もいる。


飯富兵部と原虎胤が怪我をしているようだ。


何が行われるかわからず、戸惑っていたり、怒っていたり、警戒していたりする。


信秀「大峰民部大輔信秀と申します。」


父上が頭を下げた。


それぞれ戸惑っていた者はさらに戸惑い、怒っていた者は余計に怒り、警戒していた者は余計に警戒する。


村上義清「何のつもりだ!」


信秀「皆様、勝負は時の運です。この度は当方に運があったようです。が、我が大峰家は確実に力を付けています。今回使った鉄砲は我が家で設計開発製造した物です。」


声は出さないが驚いている。


原虎胤「何が申されたい。」


信秀「はい。もう少し聞いて頂きたい。製造した鉄砲は開発した鉱山で取れた鉄鉱石を使っています。その鉱山開発をするための資金は産業を興し作った資金で、そして善政をしいたことにより集まった者たちによって掘っています。今回の兵たちも農民を徴兵したのではなく、専属の兵士たちです。当家はこれからまだまだ大きくなります。その当家に皆様の力を貸して頂けませんでしょうか。」


松若丸(よし。やって。)


竹千代(『勧誘』)


辰千代(こんないけるの?)



少しの沈黙が続いた。



馬場信房「そのように我らのことを。私は民部大輔様のために働きたいと思います。」


辰千代(おー!ってか竹千代にではないの?)


竹千代(何でだろうな。俺が殿の家臣にって思って使ったからかもな。)


松若丸(そんなことできんの?大発見じゃん!)


飯富兵部「何を言う!お館様を裏切るか!」


竹千代(お?ってかお前もゆくゆく裏切るじゃん)


春日弾正「民部大輔様、お気持ちは嬉しいが私はお館様を裏切れませぬ。」


飯富源四郎「兄上、私は民部大輔様の元で働きとうございます。お館様には兄上がおります故、飯富は兄上で十分でござろう。」


飯富兵部「そういう問題ではなかろう!」


工藤源左衛門「飯富様、私も大峰家に仕えさせて頂きます。」


松若丸(やっぱり全員ってわけじゃないんだな。高坂昌信は武田信玄の特別だろうし。飯富兄弟は仲良くないんだな。まあこんなもんか。)


原虎胤「飯富殿、落ち着かれよ。民部大輔殿、家臣になりたいと言う者はしてやってくだされ。しかし、我らはお館様に忠誠を誓っておるため、仕えることはできませぬ。すぐに首をはねよ。」


信秀「さようか。それは残念でござるが、家臣となって頂くことがかなわない方は帰って頂いて構いません。また戦場であいまみえることもござろう。」


飯富兵部「なんと!ではお言葉に甘えよう!皆帰るぞ!源四郎!帰るぞ!」


飯富源四郎「兄上、先程申しましたように私は民部大輔様に仕えます。」


飯富兵部「何!では勝手にしろ!原殿行きましょう!」


信秀「外まで送って差し上げろ。」


残ったのは、馬場信房、飯富源四郎、工藤源左衛門、村上義清とその側近、それからその他侍大将たち。



松若丸(高坂昌信は残念だったけど、馬場信春、山県昌景、内藤昌豊は大きいな。あとこの名前知らない侍大将たちも結構使えるよね。よかった。村上義清残ったけど?発言してなくない?どういう状況?『勧誘』効いてる?)


竹千代(もう一回やってみるか。辰千代の家臣でやってみよう。『勧誘』)


村上義清「わしは民部大輔様の家臣にはなれぬ。これだけ鮮やかに負け、家臣もほとんど失った。領地は民部大輔殿の好きにされよ。もはや治めることもできぬ。わしの余生は大峰家ではなく、そこの小僧の家臣にでもなろう。小僧、名は何という?」


松若丸・竹千代・辰千代(おー!)


辰千代は父上を見た。父上が頷く。


辰千代「中村辰千代と申します。」


村上義清「よし、辰千代殿、この村上義清がお主の家臣となろう!」


辰千代「よろしくお願いします。」





こうして、この時の名前で馬場信房、飯富源四郎、工藤源左衛門、その他侍大将を家臣にすることができた。

村上義清は辰千代の家臣になった。

馬場信房は35歳、工藤源左衛門は28歳、すぐに一手の将として評定衆として参加できるだろう。

飯富源四郎は21歳、満親や秀胤と同じく俺の小姓衆に入ってもらおう。


村上義清はこの時49歳、辰千代もいい家臣ができたな。



今回発見した『勧誘』の機能は使えるよな。

全国巡って三人で話しながら家臣増やしてもいいな。

今回のが落ち着いたら上京でもするか。



その後、俺は小姓衆と騎馬隊五百、新しく家臣となった馬場信房、飯富源四郎、工藤源左衛門を連れて、平定した埴科郡、更級郡、小県郡の上田原を数日掛けて検分して廻った。


辰千代の家臣となった前領主の村上義清も共に行き、今後は大峰領となることを話してくれたため平定は何も問題なく済んだ。


村上義清、潔いな。

武田勢は早々と退いたようだ。今回こちらで引き抜いた者たちの他にも武田にはまだ優秀な家臣たちがたくさんいる。


そういえば井上氏の当主ってどうなったんだ。そもそも誰だったんだ。話題にもならなかったな。まあいいか。



川中島の戦いは大勝利で終わり、想定していた以上の成果を得ることとなった。



大峰銃めっちゃ強い。

これあればあっという間に天下統一できるんじゃない?

と一瞬考えたが、そんなに甘くないと思い直した。

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