第三章 27話 築城と西からの客
1550年4月20日
川中島の戦いから一カ月。俺は上田原にいる。ここにあの有名な上田城を築くためだ。
上田城が建てられるのは約30年後だが、俺は『検索』で調べ、『技術開発』で築城可能となった上田城を築こうとしている。
さらに『技術開発』があるので、耐震性や耐火性を上げ、規模も大きくし、ここにも菜園や薬草園を作ろうとしている。
その土木工事のために集まった人は二万人。安倍隠岐殿が頑張っている。
新領地の開拓もしなければいけないので、安倍家大忙し。
安倍主水殿もあっちこっちで開拓の指揮をしている。
現在の領地を全て先日立てた予定通りに開拓できれば六十万石くらいになりそうだ。
3年くらいはかかりそうだが。
『検索』で調べると、当時の川中島四郡で十三万石、上田で六万石だから、『技術開発』の効果がすごい。
当時、領地としてはあったが何も出来なかった山間部を開拓し、不可能だった場所に田畑を作ったりもしている。だからこの石高となる。
一万人を投入して川中島の戦い後すぐに建て始めた上田城は少しずつ形になりつつある。こっちは2年も経たずに完成しそうだ。
初めて大峰家として建てる城だ。
大峰館も新しい場所に城を建て直す必要を感じている。これだけの領地を治める中心の城としては小さすぎるのだ。町も人が集まり手狭だし。
まあ、こっちができてからだな。
飯山城ももう少ししっかりしたものを建てないとだしな。
あの川中島の戦いは信濃の勢力を一変させた。須田氏、高梨氏に続いて、村上氏が大峰に倒されたのだ。これには各国反応は様々だった。
まず、武田家では、当主晴信殿がブチ切れ。帰った飯富兵部と原虎胤は怪我をしているのに内通を疑われ、大峰家家臣となった馬場、飯富源四郎、工藤を殺そうと透波を一度送ってきた。もちろん戸隠衆が撃退したが、武田家とは敵対することになった。ただ武田は今、諏訪郡、伊那郡へ侵攻中のため、すぐには直接戦にはならない。春日弾正はお咎めなしだったらしい。やっぱり特別か。
次に上杉憲政様が、また手紙を送ってきた。また贈り物の礼と、戦勝祝い。そしてまた頼りにしていると書いてあった。北条に圧迫され続けているので何かあったら頼むとも書いてあった。
越後の長尾は、兄晴景殿が同盟を打診してきた。これは使えそうだから受けた。対等の同盟として。景虎殿が家督を継ぐのは困るからな。
相模の北条や駿河の今川、越中の神保からも友好を深める使者が来た。それぞれに使者を送り、現状は友好関係を維持するようにした。
この間に俺は同盟や友好の使者に会いながら、中村の鍛冶集団にお願いして土木工事用の道具を作ってもらった。川中島の戦いで穴を掘ってもらっている時にあったらいいなと思った、先が四角い形の鉄でできた大きめのスコップや、大きめのツルハシ、工事現場でネコと呼ばれている重い物を運ぶ一輪車だ。これのタイヤはゴムで作った。
大した発明ではないが、安倍家土木工事集団には大好評を頂いた。
また、土木工事集団にも大量生産している軍靴を配り、土木工事用にゴム軍手を作って配ったところ、作業効率がぐんと上がった。
これら土木工事道具やゴム軍手は今後、戦の時にも持って行こう。
前に思った除雪作業にも使えるかもしれない。
軍の兵士も募集を掛け続けているのだが、こちらは厳しい調練に耐えられる者が少なく、思うようには増えていない。
川中島の戦いや大峰家の評判を聞いて、人はどんどん集まり、兵士の募集で来る者も多いのだが、結局、鉱山や土木工事の方に落ち着いたり、町で様々な職人になったりする。
まあ、そのおかげで鉱山開発や、開拓、築城の土木工事は人に困らないし、他にも甲冑師、鍛治師、彫金師、木地師、塗師、鋳物師、彫物師、絵師、石工、番匠、瓦師などが増え、とても便利になっている。
町の人口も増えているのでやはり大峰館と町を大きくしないとな。
あと、武田より先に佐久郡、安曇郡、筑摩郡を抑えたい。諏訪郡、伊那郡はある程度諦めるとしても。
そしてその次は海が欲しいな。具体的な戦略はまた考えよう。
色々と考えながら上田城の築城を見ていると、誰か来たようだ。
俺を囲んで守っている小姓衆の中から、この前家臣にした飯富源四郎が対応し、千凛丸に何か話している。
千凛丸「若、よろしいでしょうか。若がこちらにいると聞かれて、仁科盛政殿と名乗る方がいらしてますが、いかが致しますか?」
松若丸「仁科殿が?会おう。向こうの小屋がいいかな。俺も行く。」
千凛丸「畏まりました。」
連れ立って小屋の中に入る。
大きな小屋ではなく、床几を置いて座ると結構距離が近い。
仁科盛政殿は見た目、背が高く筋肉隆々で爽やかな感じ。まだ結構若い。
仁科盛政「突然押し掛けて申し訳ございませぬ。拙者、仁科盛政と申します。」
松若丸「大峰松若丸と申します。まあ場所が場所なのであまり堅苦しいのはやめましょう。」
ここであまり堅苦しく話してもと思い笑い掛ける。
仁科盛政「はい、さようでござるな。それが拙者の狙いでもあったのですが。」
盛政殿も笑って答える。
松若丸「早速ご用件をお伺いしましょう。」
仁科盛政「はい、我が仁科家、大峰家に臣従致します。つきましては拙者に男児がいないため、大峰家から拙者の娘に婿を頂き、仁科家を継いで頂きたい。所領の安堵もお願い致す。須田満親殿を家臣とされた時の噂で、大峰家の開拓技術があれば元の石高が何倍にもなると聞きました。旧領を安堵頂ければ、その増えた分はもちろん大峰家で取って頂いて構いませぬ。どうぞ宜しくお願いします。」
松若丸「ハハハ!そのような大事なお話しをさらっとこのような小屋で申されるとは!そのお話、お受け致しましょう!私は盛政殿がとても気に入りました!」
肝の据わった人だ。供も少なくこんなところに乗り込んでくるとは。面白い。それにまだ若いんだからまだ男児も生まれるだろうに。
仁科盛政「ありがとうございます!やはり噂通りの若殿ですな!信濃の神童でしたか!拙者も若殿のためならばと思いましたぞ!この仁科盛政、若殿のために働きましょうぞ!」
松若丸「よろしくお願い致します!父には私から話しますが、一度、父ともお会い頂いてよろしいですか?」
仁科盛政「よしなにお願い致す。全てお任せ致します。」
松若丸「では本日はこの辺りの民家にでも泊まらせてもらい、明日の朝共に出立致しましょう。」
仁科盛政「畏まりました。若殿の下知に従います。」
松若丸「では明日の早朝にこの場所で。」
仁科盛政「はい、では失礼します。」
思わぬ展開。先程考えていた安曇郡がもう手に入った。そして仁科盛政殿はかなり良さそうだ。多分戦上手いな。兵の信頼も厚いだろう。敵にならなくてよかった。
次は筑摩郡かな。
翌日、仁科盛政殿と共に大峰館に戻り父上に話したところ、父上も喜んで了承した。
高梨や信濃島津と違って、盛政殿が健在なことや、娘がまだ幼いこともあり、盛政殿の娘と同い年の、父の弟、大峰半四郎6歳が仁科半四郎となった。
仁科盛政殿は34歳。俺からの提案で、もし今後、盛政殿に男児が生まれたらその子を仁科家の宗家跡継ぎとし、半四郎には別家を建てさせることにした。
これには盛政殿は感激し、俺に忠誠を誓ってくれた。
これにより安曇郡五万石が増え、水内郡、高井郡、埴科郡、更科郡、小県郡の一部、安曇郡を加え、現時点で三十万石、開拓を見込むと七十万石くらいにはなるか。
千石につき兵士二十五人だとすると、兵一万七千五百人が動員できる。
ただ、商売の売り上げや鉱山からの金、銀、銅の産出もあり、蓄えもあるためもっと動員できる。
全てが兵士ではなく、浅川園、鉱山開発、土木工事、鍛冶村、等の家臣も抱えているので、専属の兵士は一万五千くらいがいいところだ。
調練に耐えられる者が多くないので、現時点では本拠に一万のすぐ動かせる兵と、飯山城の兵二千となっている。
数年かけて開拓が進めば、頑張って本拠の兵を二万くらいにはできるか。
あとはそれを動かす将も欲しいよな。全国廻って引っ張ってくるか。
よし!そうだ!京へ行こう!
これみんな一度は言ってみたい台詞だよね。
計画を立てるか。




