6/6
上巻
「それだけだと、弱いです」
---
黒瀬は、しゃがんだまま言った。
---
さっき開けたスティックシュガーを、指についたまま舐めている。
---
「弱い?」
---
「はい。まだ足りないです」
---
適当な調子のまま続ける。
---
「もう一個くらい欲しい」
---
「例えば?」
---
「体調とか」
---
あっさり言う。
---
「胃が弱ってるとか」
---
「あと、一気に飲む人」
---
社長の顔が浮かぶ。
---
「タイミングもあります」
---
指についた砂糖を、もう一度舐める。
---
「全部、バラバラなら大したことないですけど」
---
「たまたま同じタイミングで重なると」
---
少しだけ間を置く。
---
「まあ、普通に倒れることもあるんじゃないですか」
---
軽い言い方だった。
---
でも、それだけで十分だった。




