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ほんの少しのこと
社長は嫌われていた。
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「温度が違う」
コーヒーを一口飲んで、顔をしかめる。
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頼んでもいないのに、細かい。
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「ちゃんとやれよ」
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距離も近い。
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「最近の子は肌きれいだな」
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冗談みたいに言うが、笑えない。
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そういうのが、積み重なっていた。
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だから。
少しくらいなら、いいと思った。
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その日、帰る前。
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誰もいない給湯スペース。
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コーヒーメーカーのタンクを開ける。
そしてほんの少し市販のコーヒーの粉を入れただけ
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水は、少し濁って見えた。
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……少しくらい、いいだろ。
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ほんの少し混ぜただけだ。
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味が変わるかどうかも分からない。
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それで、何か起きるはずがない。
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――そのはずだった




