第二十一話『東奔西走』
雪は街を薄っすらと白色に染め上げる。各所に立っていた火の手は勢いを失い、煙は薄暗くなった空で目立たないまでに減っていた。
喧騒の声も止み、どこからか聞こえてくる啜り泣きが目立つようになってきた。
「……こちらです、神父様」
一人の兵士に連れられ現れたのは、ローブを被った恰幅の良い中年男性だった。人のよさそうな笑みを浮かべ、厳戒態勢のまま警備を行っている兵士へ会釈しながら進み出る。
「お気を付けください。狂乱状態だった市民が落ち着いたとはいえ、その理由が確定したわけではありません。この先にいるものが元凶か近い位置にあるものである事は確かだと思われますが」
「うん、まあそうですね。警戒することはいいことですね、うん。ま、賊も目的は達成したでしょ。こんなしがない神父一人を狙うなら、やり方はいくらでもありますからね、うん」
重そうな体をゆっくり進ませ、たどり着いたのは一つの死体の前だった。
壮絶な苦痛と感情に塗れて亡くなったことが伺える、酷い形相をした褐色の難民。
カンドの死体を前に頷く神父。
「うん、ハルパ伯の前に現れたという暴漢と特徴は一致してますね。人づてなので確証はありませんが。うん、それで、この男が伯の一撃を受けてなお暴れていたらしいですね」
「はっ。近くで見た者は現在昏倒している為聞き取れませんでしたが、遠目で見た者全員、胸部以外に目立った外傷はなかったとの事です」
「……うん、何でも杭が刺さってたとか」
かつて盛んに行われていた処刑方法に串刺し刑がある。見せしめの意味が強いこの処刑方法は、荒れた戦乱期において盛んに行われていたという。
東部方面ではまだ串刺し刑が盛んに行われており、こいつは処刑から命からがら逃げてきた罪人だとか?考察するには情報が少ない。
ただはっきりしているのは狂乱した市民が次々と気絶していった時と、暴漢が動きを止め恐らく死亡した時が同時刻らしいことだ。そのため神父は彼を騒動の元凶と位置づけ対処している。
「うんうん、伯爵へはまだ連絡していませんね?」
「まだしておりません。ですが襲撃者撃退後の落下地点は推測されています。周辺に使者を向かわせているようで、こちらも問い合わせの使者を待たせている状態です」
「ふーむ、考えている時間はありませんね。取り合えず我々が止めを刺したことにして、死体は買い取ってもらいましょう、うん。恩も売れるしそれが一番いい、うん」
ただ、と神父は傍らに目線を移す。
「近くにいた難民の子供、彼はどうしましょうかねぇ、うん。……状況から推測するなら、この少年が伯爵の一撃を耐える程の男に止めを刺したことになるのですが」
「し、失態を申告するようで申し訳ありませんが、我々が確認したのは遠目でしたのではっきりとした状況を見た者はおりません。それに奴の平然とした態度が演技、実際は伯の一撃に瀕死の状態だったかもしれません。十にも満たないような少年がまさかそんな……」
動揺した兵士の言葉を聞きながら、神父は少年の顔を見続ける。
元凶と目される男の傍で見つかった少年は同じ難民の子のようで、ボロボロの服に特徴的な白髪をしている。腕には大事そうに誰かの腕の断片を抱え、離す様子はない。
彼は現在、全身隈なく傷を負い気絶していた。壮絶な体験をしたと思われるが、確かに普通の大人一人さえ殺せそうには見えない。この場にいたのは偶然だと思えた。
ただ、事実などどうでも良い。重要なのは子供が自分の利益に貢献できるか否かだ。
それこそ、ハルパ伯爵に何かを匂わせ高値で売ることも……。
その時、教会の方から兵士の一人がやって来る。
「失礼します。神父様、客人から言伝を預かってきております」
「うん?そんなのは後でも良いでしょう?スタンディ伯領への通行推薦状はすぐに発行できるのですから」
「それが子供の方の噂を聞き付けたらしく、自分の商会の従業員だと主張しているのです」
「ううん?難民の子供をですか?」
「はい。胸元に鶏を象った首飾りがあるはずだ、と」
神父が良く良く見てみれば、露わとなった少年の首元には確かに鶏の首飾りがしてあった。今まで白髪の方に注目が行き誰も気づいていなかったが。
「うんうん、確かに首飾りがしていますがねえ。彼は重要な参考人ですし、流石に流石に――」
「従業員を保護していてくれたなら、聖餐用にボルデックス産のワインを寄付させていただくと」
「人の命を守ることは聖職者として当然の事、うん。丁重にお返ししてあげなさい」
柔らかな声色と共に神父の肩書に相応しい笑みを浮かべる。
神父の死角に立っていた兵士はいつもの光景に、同僚と一緒に肩を竦めた。
――――
ハルパ伯爵は領館に戻り、忌々し気に舌を鳴らした。
襲撃者を退け本拠に戻ったハルパ伯爵の元に舞い込んでくるのは、今まで滞り耳元まで届かなかった街の現状の報告だった。
街の西半分は大半が焼失、倒壊。東へと避難した市民も逃走の過程で暴行、落石、転倒、火事による怪我や火傷で死亡者多数。暴徒と化した市民は現在気を失って騒動は沈静化しているが、目覚めるのか、後遺症はないかなどの不安材料は尽きない。
幸いロア持ちを囲う鍛冶地区は損害が軽微だったが、冬を前に備蓄食料を幾ばくか失ったのは痛い。至急、近隣の街へ食料を手配しなければならなかった。
そしてそれら全てより痛かったのは、エルダヴァニア公爵旗下、岩兜騎士団団長ブレスト・レブランを失った事。
公国最大戦力の一角を失った意味は大きい。近年、急に頭角を現したことで名を揚げていた有名人の死は周辺各国へ速やかに伝わるだろう。東への戦争が近くにあるかも知れない時期に、だ。
ハルパの街滞在中に起こった事件という事で公爵との関係悪化も懸念される。
またハルパ伯爵自身の問題として周辺地域への影響力低下が挙げられる。西方のスタンディ伯の領域伸張も、東に築いた砦周囲の防衛能力低下も勘案しなければならない。
「失礼いたします。閣下、バーニゲッゼ司祭から襲撃者の遺体引き渡しが終わりました」
「うむ。一先ずの体裁は整えられるか……。司祭からは何か言っていたか?」
「はっ。相談ならいつでも受け付けております、と」
「ふん、守銭奴め。助かるのは事実だが、やはり好かん」
バーニゲッゼ・ダモン・ヴォルトナシュ司祭。教国から派遣されてきた司祭だが、聖職者としてあるまじき拝金主義者。ハルパ伯爵領を出るにはハルパ伯爵の認可が必要だが、他領への通行は領地ごとの許可が必要となる。金銭がかかるのは当然として、異教徒との最前線であるこの周辺は身元審査に時間もかかる。
バーニゲッゼ司祭の推薦状があれば、その煩わしい通行審査を支障なく通過できるようになる。寄付金という名目の代金は必要だが。
最近は公証人としての活動も行っているらしく、時間を作るためミサも助祭に任せているとか。
「しかしおかげで教国への猶予が出来ます。下手人の遺体もあるため、求心力低下も抑えられそうですが……」
そこで側近の言葉が詰まる。顔に疑問符を浮かべ、聞くべきか聞かざるべきか悩む素振りを見せる。
ハルパ伯爵は手ぶりで先を促した。
「閣下、何故ハサムを始めとした難民の放逐、いえ、放免を認可したのでしょうか」
「お前も言いかけたが、放逐だ。街で暴れた不穏分子を留めておくことは出来ん」
「わざわざ縛り上げた暴徒から難民を選別して、ですか?下手人と共に吊り上げれば民の不満をもっと逸らせたと思いますが……」
ふぅ、とハルパ伯爵が一息つく。そんなことも分からないのか、という失望のため息ではない。随分と疲れ切った、老人のため息だった。
「まず第一に、騒動を企てた者の目的が見えん。騎士団長を殺せる戦力を用意しておきながら、それ以外の戦果はお粗末だ。主要産業の鍛冶地区は人員も施設も被害軽微、西地区はボロボロだが街を放棄するほどやられた訳じゃない。都市機能がマヒするほどの騒動とは引き換えに、現れた刺客は能力だけ高いバカな素人。ふざけているのか!?本気でハルパの街を落とすつもりなら、やり様があった筈だ!少なくとも異教徒どもやオストリヌス公国のような周辺国家のしわざでは――痛っ、づぅ……!」
「閣下!」
カンドにやられた左肩を抑え、執務机に突っ伏すハルパ伯爵。側近は慌てて駆け寄り手を差し出す。
「止せ。治療は粗方済んでおる。くっ、情けない……。そんな稚拙な策に好い様にやられたことが何よりな……」
「閣下……」
「――私の持っている情報の中では、一国だけ心当たりがある」
ハルパ伯爵の言葉に驚きの顔を向ける側近。彼に視線を向けず、真っすぐどこかに目線を向けたハルパ伯爵は呟く。
「アーセディア教国だ。東方との戦争を求めるため、騒動をハルパで起こした可能性がある」
「!?まさか」
「バーニゲッゼは関わっておらんだろう。良くも悪くも金を稼ぐことしか考えておらん。本国の誰か……、枢機卿位にある者が裏に潜んでいるならば……」
過去の経緯において、アーセディア教東方圏は教国と仲がいいとは言えない。各未開領域侵攻を指示した神命広布に乗り気ではないかもしれない。
それに発破をかける事も含め、東方との戦争の火種とするべくハルパの騒動は引き起こされた。その可能性がある。
「全ては私の憶測だ。確証はない。しかし憶測が当たっているなら、我々が黒幕の思い通りに動かされるわけにはいかない」
「更なる陰謀に襲われるかもしれません」
「ふん。下らぬ陰謀など来たら、今度こそ打ち砕いてくれるわ。とりあえず東方砦の息子を呼び戻す。ブレスト団長の騎士装が回収できたのは幸いだが、下手な代官で返却するわけにもいかん。街の戦力を至急、集める必要もあるな」
「はっ、分かりました」
頷く側近。そのまま命令を実行すべく退室しようとするが。
「そういえば閣下。先ほど理由の第一は聞きましたが、第二もあるのでしょうか?」
「……まあ、な」
ハルパ伯爵は痛む左肩を抑え、苦々しい表情を浮かべる。
「借りを借りたままにするのも好かんと言うだけの話だ」
「はっ、……は?」
「良いから行け。これから忙しくなる」
ハルパ伯爵を追い払うように手を振り、側近に退室を促した。
一礼した側近は頭を下げたまま後退し、やがて重厚な音と共に扉は閉まった。
――――
長い、長い夢を見ていた様だ。
それもとびっきりの悪夢だ。まだ小さい頃、物心付くか付かないかという頃からの悪夢。
乳母として育てて来てくれた女性は滑落し、峡谷へと消えていった。
たまに訪れ外の世界を教えてくれた門番は追手を感知し、戻っていったきり帰ってこなかった。
お爺様と同じ年配の法学者だった老師は歩行困難になり、嘆きと共に置いて行かれた。
商人の伝手をたどり西方へ辿り着くも、なけなしの財産を騙し取られ。
何とか置いてもらえた異国に地では貧困と労苦と蔑みに塗れ。
常にどうにもならない怒りと共に育ってきた。
周囲から慕われるお爺様でもどうにもならない現状に。
力なく幼い子供であるどうにもならない自分に。
消えゆき戻って来ないどうにもならない命に。
悪化し明るさの見えないどうにもならない未来に。
だから自分なりにどうにかしようと藻掻いて。
苦しみ怒りのまま何かしようと動いて。
果てに何がしたいのか分からなくなり。
胸に燻る炎に従い襲って。
ただ感情のまま暴れて。
……そして唐突に炎がかき消され、靄がかかった思考は晴れていった。
「……気がついたかね」
「――っ!お爺、様?」
目を覚ますとジャリドはハサムに背負われ、複数の難民とともに歩いている最中だった。
何人も気絶した人々がいるようで、ジャリドの様に背負われている人や台車で運ばれている人もいる。
「な、何、が、い、ったい……?」
「ああ、無理に喋らんでよい。順を追って説明しよう」
歩きながら説明しだすハサム。ジャリドは降りようと身を捩るが、痛みと倦怠感で動かない体では大した抵抗にならなかった。
その内ハサムに持ちにくいと叱られ、大人しくさせられる。
説明を聞くと、ジャリド達複数の難民が街で正気を失い暴れだし、様々な損害を与えたと聞いて顔を青ざめる。
記憶にあるのは街に避難を求めた際、駐在した兵士と話している最中までだった。そこから先の記憶はすっぽりと抜け落ちている。
いや、僅かにだが、夢で何か見ていた感覚が残っていた。思い出したくもない嫌な感覚だけが。
「そ、それ、で、は……」
「いや、ハルパ伯爵との交渉で死体となった難民は引き渡し、我々は速やかに東方へ帰還する事で合意した」
「!?そ、んな」
「街に齎した被害からしてみれば望外よ。時間の猶予もくれるそうでな。物資をかき集める時間も、居住地の遺体を埋葬する時間もある。儂の首一つで収まれば御の字と思って負ったからの。それ以上は望めまい」
一足先に居住地の状況を調べたそうだが、獣の襲撃で十数名が亡くなっていた。留守を任せていた、護衛のセナクも。
それに加え街まで付いていったハサムの護衛もほとんどが亡くなり、わずか二人が生き残るのみとなった。
略式であるが、彼らを埋葬しなければならない。
「……うぅ。で、も。ゆゅ、ゆ、き」
「降雪か。ナドゥルー地方を出れば降雪量も少なくなる。急げば冬が本格化する前に間に合うかもしれんの」
簡単に言うが、それはあの多数の死者を出した逃亡劇を繰り返すという事だ。東方がどういう状況になっているかも分からないのに。
西域を脱出し、すぐに敵陣営に囲まれる危険がある。ジャリドから見ても危険な行軍だ。
「う、うう、うぅ」
「何、そう心配はいらん。トゥフルー家やサマニダフ家の簡単な勢力図も聞いて来た。かつてのような悲惨な状況にはならん、いや、させん」
「?」
ハサムの声にはかつて聞いた覇気が戻っているようだった。あの幼い頃の憧れ、周囲の者に指示し動かす責任を負った指導者の頃の。
「お、じ、い」
「一先ず休みなさい。これから大変なのは確かだ。色々と教えなければならん事もある。時間はそう長くないだろうが、追いていかれるでないぞ」
その言葉に体が休みを欲している事を自覚する。襲われる眠気のまま、次第に瞼は重くなり微睡んでいく。
「――そう、時間は長くない」
ハサムの真っ赤に染まった服に気づかないまま、ジャリドは眠りへと落ちていった。
「――どうか、我らの希望が無事でありますように。フォイス様」
――――
一際大きく跳ねた馬車の中。
衝撃を受けた頭の鈍痛と共にカナンは目を覚ました。
「いっ!……あ、あれ……」
「あっ、カナンが目を覚ましたぞ」
その声に横を向くと、そこには同じように横たわったフレンがこちらを見つめていた。布に包まれぐったりしているが、顔色は良さそうだった。
「フ、フレン?あ、あれ。ここは?」
「西に向かう馬車の中だ。お前、一日以上寝てたんだぜ」
帰ってきた言葉に衝撃を受け起き上がろうとするが、体は全く動かない。
見れば被せられた布の下。全身に包帯が巻かれ、真っ赤に染まっている。既に出血は止まっているようだが、傷を自覚する事で痛みも遅れて襲ってくる。
「いっ、いだっ!ぐうぅぅぅっ……!」
「何やってんだよ……。そんな傷で動けるわけないだろ……」
呆れ顔のフレン。
そのやり取りに業者台の方から声が掛けられる。
「いやいや、悪くない。その様子だと命に別状はなさそうですね」
「ヒュ、ヒューイさん」
「すみません、何も告げずに西へ出発して。しかしあのままだと物資供与やらに運びの依頼やら、面倒ごとに巻き込まれるのは目に見えてましたからね。特にカナンは市民の悪感情の受け皿になりかねない出自をしていますから。今のうちに出発するのが最善でした」
「は、はあ」
彼の声で思い出す。街の東へ向かったのは確かヒューイを迎えに行くためだった筈だ。
それがこうして傷を負い、逆に助けられてしまったようだ。
「す、すいません。助けて頂いて……」
「いえいえ、とんでもない。私の方こそ大いに助かりました。あのままだとすぐ商会には戻れませんでしたからね」
私の方こそ。
その言葉に何のことかと疑問を抱くが、横のフレンが布を掴んできた。
「あ、ありがとう……。そんなになってまで、わた、俺のお願い聞いてくれて……」
「あ、う、うん……」
傷を負った理由はヒューイを迎えに行くのとは別の所にあるのだが。特に後半はヒューイの為の奔走と言うより、必要に駆られて自分の為にという意味が強い。
結局、傷を負ったも原因も誰かの為ではなく、怒りに駆られた自分の……。
「!?えっ、ど、どうした!?」
「?――あ」
フレンの慌てた声。気づけばカナンの目から涙が零れていた。
現実味のなかった光景と傍若無人なカンドへの怒りで実感が今までなかったが、落ち着いた状況になった今、イザクが死んだと心で理解した気がする。
そう、もうどこにもイザクはいない。
悲しみから拳を握り、そこで気を失う前まで抱いていた筈の感触がないことに気づく。
「あ、あれ?イ、イザク、イザクの腕は?」
「カ、カナン?」
戸惑うフレンに反応もせず、周囲を探し回るが見つからない。
もしかしてあの場に落としてきてしまったかと思ったカナンに、ヒューイの声が掛けられた。
「落ち着いてください。あなたが握っていた腕は既に埋葬しています」
「あっ、そ、そうですか……」
「あのままだと腐りますからね。教会に頼んだのでアーセディア教の無名墓地ですが、野晒しにするよりはいいと思いまして。ああ、槍の穂先は保管してあります。余計なお世話でしたでしょうか?」
「いえ、ありがとうございます。自分では碌な墓も立てられなかったでしょうから……」
せめて形見が残るなら、それで良い。
自分は忘れない。自分を守って亡くなった、一番の親友の事を。
――そして、騒動を起こした元凶。あの仮面の男の事を――
あいつが何者なのかは分からない。これから先、再び会うか否かも。
それでももう二度と、弱さから悲劇に見舞われたくはない。
歯を食いしばり、溢れ出そうになる感情を抑えるカナン。
今の自分には何の力もない。唯一自慢できるギアの力も、強者の前では友の力を借りて逃げ延びるのが精々でしかない。
力を手に入れる。そしていつか戻ってくる。
それまではこの感情を忘れないように。焦がすような怒りを身に抱いて。
『そして、どうか、――――――この世界を壊してしまって』
何故かふと、母の最期の言葉が思い出された。
馬車は一路西へ。
待ち受ける運命が如何なるものか。まだ知らぬ人員を乗せて。




