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女子的な趣味をオープンにしたら似たような趣味の女子達と仲良くなれて親友まで出来ちゃったお話  作者: いちくん
第二章:女子的な趣味をオープンにしたら魔王と呼ばれてしまった話(仮)
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西村亜子

 こんなことがあってもいいのでしょうか?


 私は今、大好きな遼太と一緒のお店で働いていて、高額なお給料をもらいました。


 私は今、夢を見ているのでしょうか?


 約5年前、ここで行われていた手芸教室。


 たった1年で終了してしまった手芸教室。


 私はここに1年間通っていました。


 店先にはいつも、私と同年代くらいの男の子がいて、教室には入って来ませんでしたが、いつも何かのお花を作っていました。


 教室で教わる手芸よりも遙かに綺麗な造花を作る彼を見て『彼はもう教わる必要が無いんだろうな』などと考えていました。


 名前も学年も知りませんでしたが、顔だけはしっかりと覚えました。


 中学校に上がると、後に親友となる『村上詩織』と出会いました。


 すぐに意気投合して、やがて本気の恋バナもする仲になりました。


 私は『杉見手芸店』で見た不思議な男の子に心を惹かれている事を話しました。


 名前も学年も知らない事を話すと、詩織は『同じ学校かもしれないから探してみようよ』と言ってくれて、全学年・全クラスを何日もかけて一緒に探し回りました。


 残念ながら彼は、同じ学校の生徒ではなかったようです。


 私は時々、杉見手芸店に足を運び、彼と再会できないかと期待して、作りもしない造花の材料を買いに行くようになりました。


 遼太には『去年の夏ころから通うようになった』と言いましたが、実は中1の頃から月に2回ほどは顔を出していました。


 お店のおばさん『カオリさん』とは、実はこの頃から結構お話しする仲になっていました。


 ただ、あの男の子の事は恥ずかしくて尋ねることはできませんでした。


 でも、このお店に通っていればいつかは必ず会えると信じていました。


 中3の夏から通うようになったのは、実は詩織なのです。


 私があの男の子を探すために手芸店に通っていることを話したら詩織も付いてきてくれるようになりました。


 やがて、私はあの男の子の背中を追うように造花を作るようになっていました。


 詩織は初心者向けの説明書付きのビーズアクセのセットをたまに買っていきました。


 あの男の子とは全く会えないまま高校生になりました。


 ところが、ここで奇跡が起こりました。


 あの男の子と同じ高校で、同じクラスになっていたのです。


 でも、最初は確信がありませんでした。何と言っても5年前の記憶です。


 顔の面影はありましたが、かなり背が伸びていました。


 それに、『竹中遼太』という名前もこの時初めて知ったのです。


 確信を得るための会話のきっかけにでもなればと、私はカバンに薔薇のコサージュをアレンジして取り付けました。


 もし、竹中遼太くんがあの時の男の子ならば、きっと興味を持ってくれると考えたからです。


 ある日の昼休み、詩織が私のカバンのコサージュに気が付きました。


 私は心持ち大きな声で、斜め後ろの竹中遼太くんに聞こえるようにと願いながら『コサージュ』『オリジナルアレンジ』といった言葉を強調して話しました。


 上手くいったと言って良いと思います。


 詩織が竹中遼太くんの反応に気付き、話かけるまでは……


『ねえ、キミたしか竹中くんだよね? なんかずっとニヤニヤしていて気持ち悪いよ? どうしたの?』


 実はこの時、私は『詩織、よくやった』などと思っていました。


 まさか、この後あんなことになるなんて予想もしていませんでした。


『そうか、気持ち悪くて申し訳ない。俺は消えるからどうぞ』


 無表情で感情のない声で話し、彼は立ちあがりました。


 私の体から一気に血の気が引きました。眩暈すらしました。


 詩織が謝っても、許してもらえる気配はありませんでした。


 逆に、『謝ってるのはオレの方なんですけど』と言われました。


『詩織ッ!』と、私は詩織を叱りました。怒ることなんてできません。だって、わたしもさっきは『よくやった』などと思い、詩織を褒めようとしていたのですから。


 何と言って叱ったのかは覚えていませんが、私は必死で言葉を選び、彼に許してもらえるように謝りました。詩織にも謝らせるために誘導した事だけは覚えています。それだけ必死でした。


 謝罪を受け入れた彼は、それでも教室から出ていきました。


 その後、教室では遥香さんをめぐる騒動が起きましたが、私には遠い世界の出来事のように感じられていました。


 詩織が興味津々でその様子を見物しているのを見て、とても腹が立ちました。


 その日の放課後、私は詩織を連れて『杉見手芸店』に行きました。


 竹中遼太くんがわたしの探していた男の子なのか確かめたかったからです。


 それに、もしその男の子が竹中遼太くんならば、詩織を怒ってやろうとも考えたからです。


 私は『カオリさん』に、ウインドウの見本作品の作者の名前を聞きました。


 絶対にこの作者こそがあの男の子だと思ったからです。


 違う名前ならば竹中遼太くんは別人。私の勘違い。


 でも、カオリさんは教えてくれませんでした。


 どうしても知りたくて「竹中遼太くんですか?」と、直接聞きました。


 カオリさんは「遼太を知ってるのかい?」と、ひどく驚いていました。


 この反応で私は確信を得ました。


 でもカオリさんは「待て! アタシからこの名前を聞いたと思われたら困る。少し話を聞け」


 そう言って、私たちを引き留めました。


 カオリさんは、「遼太は手芸が趣味だってことを誰にも知られたくないと思っている。だから絶対に遼太の名前は言わないと約束させられているのさ。だからオマエ達もアタシから聞いたっていうんじゃなくて、状況から推測したって事にしてくれ」


 と、早口で捲し立てました。


「は~…アイツの母親は竹中夢子。夢子ちゃんだ。アタシの親友だよ。この作品の作者はその息子。いいね? そう言う事だ。後は上手くやんな」


 長年の心のつかえが取れて私はスッキリしましたが、隣にいた詩織がガタガタと震え始めていました。


 詩織は、「ご、ごめんなさい……亜子ちゃん……竹中くんが、まさか、亜子ちゃんの……ずっと探していた男の子だったなんて……どうしよう……わたし、今日……」


 と、言うなり四つん這いになって顔面を蒼白にし、だらだらと大量の汗をかき始めました。


 慌てたカオリさんが「どうしたんだい? ちょっと奥まで連れて行くよ」と、詩織を以前手芸教室だった大きな部屋に連れて行って寝かせてくれました。


 事情を聴かれた私は正直に全てを話しました。


 カオリさんは私に「遼太と友達になれたらここにもう一度一緒に来い」そう言って詩織が落ち着くまで傍にいてくれて、遼太の昔の話を少しだけ聞かせてくれました。


 次の日登校すると、遼太のカバンに黒薔薇のコサージュがさりげなく飾られているのが見えました。


 もしかしてこれは私へのサインなのでは? と、内心胸が躍りましたが、流石に昨日の今日です。嫌われているかもしれないと思うと話かける勇気はありません。


 お昼休みは詩織の席で食べることにしました。


 私の席だと、遼太の席に近すぎるから、またどこかに行かれたら嫌だと思ったからです。


 お弁当を食べながら、詩織と相談しました。


 私は「なんとか、遼太とお話がしたい」


 そう言うと


「嫌われてるのはわたしだけの筈だから、亜子ちゃんが一人で話かけたらいいよ」


 と、詩織の元気がありません。


 仲直り。あるいは和解。出来るかは分からないけれど、私は詩織を大好きなので、嫌われたままにしておくのは嫌でした。


 だから、「付いてきて」そう言って遼太に話かけることを決意しました。


 私から彼に話かけるのは初めての事で緊張しましたが、これで嫌われるのなら仕方ない、そういう運命だったんだ。そう自分に言い聞かせました。


「竹中くんのカバン。それ、薔薇の花だよね? 造花?」


 普通に話かけるための演技が必要でした。


「あぁ、そうだよ? それが何か?」


 彼はつっけんどんな対応だったけれど、認めました。認めてくれました!


 黒薔薇は、凄く綺麗だし精巧な作り。細かい所にも工夫とか配慮とかが見える。


「もしかして竹中くんが作ったの?」と、知っているのに知らないふり。すごく難しい演技。


 彼は「答えられない」と答えたけれど、それってもう答えになってる!


 その後の私はもう、無我夢中で彼に話かけていました。


 私が昨日、全力で作った『ヒマワリの安全ピンブローチ』見せたら褒められました。すごく嬉しい。


「ねぇ、なんかアドバイスくれない?」


 困っている彼。きっと、周囲にクラスメイトが数人いるのが気になっているんでしょう。


 昨日、カオリさんが言ってました。遼太は、自分の趣味を人に知られたくないって。


「しおりの席で話そうよ」


 森口さんが近くにいるけど、森口さんが私たちに話かけてくるはずないもんね。違う世界にいる天使様なんだから。


 でも、結果は違った。私の予想をはるかに超える事態が起こりました。まさか、遥香さんが彼に、興味を持ってしまったみたいなんです。


 放課後、「森口さんと話がしたい」


 遼太のその言葉を聞いて、私はかなりショックを受けました。


 でも、そんな気持ちを顔に出すわけにはいきません。


「竹中くんとは気が合うね」などと話を合わせて杉見手芸店に遥香さんを誘う計画を立てました。


 昨日、「遼太と友達になれたらここにもう一度一緒に来い」とカオリさんに言われたことを思い出したからです。


 遼太は、趣味を馬鹿にしない人を友達にしたいと思っているみたいです。


 私は遼太を馬鹿にしていないよ?


 それなのに、詩織は『趣味友達』だと言い切りました。


 遥香さんには『友達になりたい』と言いました。


 でも、私には……何も言ってくれていません……


 ついに遥香さんを悪意や悪口から守る作戦が始まりました。


 詩織の役割はとても大切でしたが、私の役割はほとんどありません。


 遼太の凄さだけが伝わってきます。


 あの時の状況の説明も、詩織が的確にしてくれましたが、私にはできません。だって、私はあの時、遼太の事ばかり考えてて、口論の内容なんて、気にも留めていませんでしたから……


『黒シャムの招き猫』


 遼太の会心のビーズアート。そしてお守り。


 遼太は躊躇いもせず、これを遥香さんにプレゼントしました。


 悔しいと思いました。悲しいと思いました。


 詩織が「いいな~~」と真っすぐな表現で羨ましがりました。


 私だって羨ましかったです。


 翌朝のHR前


『西村さん、昨日の造花のアドバイスなんだけど……』遼太に話かけられましたが、私は緊張してしまっていて『え、うん』としか答えられませんでした。


 それなのに、詩織がどんどん遼太と仲良くなっていきます。


 私は? 私はどうしたらいいの?


 焦りが募りました。


 詩織が遼太に、たくさん褒められていました。


 私にも話かけてくれましたが、何か、何かが心に刺さっていました。


 遥香さんが『黒薔薇』を作って欲しいと遼太に求めました。


 私も欲しいと思っていましたが、素直に欲しいとは言えませんでした。


 次の日の昼休みに、遼太は、目の前で『黒薔薇』を作ってくれました。


 マミちゃんとさゆちゃんに「薔薇の設計図って、こんな感じなんだ」


 と、話かけた遼太に嫉妬しました。


「竹中くんは集中しなさい」


 実はこのセリフ、八つ当たりでした。申し訳ありません。


 遼太の造花技術は、もの凄いというか、想像以上でした。


 私も造花を作るようになっていましたから、型も使わず、圧倒的な速度で、正確に作っていく遼太に見とれてしまいました。


 遼太は、見えない所にも手をかけていました。


 おしべとめしべです。


 隠れてしまうため、やらなくてもいい部分。ハッキリ言って無駄な作業です。


 遥香さんには「金色」私には「銀色」。


 ああ、そう言う事か……私は遥香さんには及ばない。そう言う事なんですね……


「あ、ありがとう……」


 お礼の言葉が、吃音(ども)ってしまいました。


 この差は、絶対に詰められない。そう思いました。


『黒薔薇同盟』


 遥香さんが呟いた言葉に、遼太は『いいね』と言って、喜んでいました。


 また、私の中で、嫉妬心が疼きました。


 それでも、私にも転機が訪れました。


 日曜日の午後です。


「西村さん! サポート頼む」


 ブーケを作らされている遼太に頼られて、私は全身全霊をこめて頑張りました。


 その後のブログの大量注文の件でも、遼太の隣のポジションを確保して、全力でサポートしました。


 とても幸せでした。


 私は、遼太に『亜子』と呼ばれるようになりました。


 今、呼び捨てにされている女子は私だけです。


 これは、喜んで良いのでしょうか?


 遼太に、特別を望んでも良いのでしょうか?


 遥香さんも詩織も『手芸部』に入部して、遼太からは少し、距離が空きました。


 私は今、遼太を……


 遼太と……


 特別な関係になりたいと、真剣に悩んでいます。


 だから


 ごめんなさい。


 私は


 遼太に


 告白します!



















「遼太……私と、付き合ってください。特別な、彼女として……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここのところ、やや存在感の薄かった西村さんの背景が語られて終わりかと思いきや、告白?!と言う展開は良かったです! [一言] なるほど、こういう風にラブコメって書くんだな、なんてぼんやりと思…
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