一つの恋の……暁天
メイド長は項垂れて正式な取り調べを受ける為に引き渡された。
「王太子殿下、大丈夫ですか?」
何か難しい顔で考え込んでいるエドモンドに側近のロイドが心配そうに声を掛ける。
「みんながみんな、何の罪もないリリアナを寄ってたかって追い詰めたんだと思うと心が潰れそうだ」
「そうですね、もう時間は戻りませんからこれからリリアナ様を幸せにしてあげて下さい」
「時間が戻せるのなら彼女に降りかかる災難を全て振り払うのにと思うよ」
リリアナの小さな肩にそれだけの重責と悪意の篭った嫌がらせがのし掛かっていたのだと分かってはいたが実際に聞くと辛かった。
「リリアナには味方が必要だ、私や家族だけでなく彼女の今後の力になってくれる者達が」
「王太子殿下、もう沢山のリリアナ様ファンが居りますよ」
「陛下と王妃様、教会の聖職者達、王太子妃教育に携わった教師や助手達、文官やメイド達、かく言う自分もリリアナ様を尊敬してお慕いしております」
「そうか、そうだよな。私があれこれ心配せずともリリアナを知れば慕って来る者が多いよな」
「それだけの魅力のあるお方です」
「今後、もし私が助けられない状況になったらロイドが力になってくれ」
「勿論力の限りお助けしますよ」
「頼もしいな、宜しく頼むよ」
ロイドは嬉しかった、王太子殿下の大切な方を頼まれたのだ。
この時を一生忘れないだろうと思った。
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エドモンドはリリアナの元を訪れていた。
あれからメリッサ夫人から謝罪と花やカードに対するお礼の手紙が届いたのだそうだ。
「メリッサ夫人からの手紙には何と?」
「これまでの謝罪とハワード様の葬儀に届けた花とカードのお礼です。立ち直られるにはまだまだ時間が必要でしょうけどもう少し元気が出たらお会いして謝罪をしたいと書いてありましたわ」
「そうか」
「一日も早く元気になられる事を願っています。今はとてもお辛いでしょうから」
「あんな事をされて許せるのか?」
「仕方なくなのは分かっていますから。愛する人を奪われまいとした彼女の苦渋の選択です。悪いのは彼女ではなく弱みを巧みに突いた人です」
「そうだな」
「裁判はいつなのですか」
「行くつもりか?あの女が何を言い出すか分からないぞ」
「当事者ですから、勿論行くつもりですが」
「辛い事を思い出したら、また倒れるのではないか?」
「大丈夫です。もうあの様な事は起こりません」
「心配なんだ」
「私にとってもケジメをつけたいのです。裁判で全てが明らかになってこそ気持ちの整理をつけられると思います。少々思うところもありますし」
「思うところ?」
「アリーシャ被告が私に悪夢を見せた様に、私もキチンと裁判を傍聴して立ち直って幸せになる姿を見せたいのです」
「⋯⋯」
「見せつけたいとかではありません、私の姿を見て彼女自身の心に何か響いて欲しいと思うのです」
「心に⋯⋯か」
「彼女と私には決定的な違いがあります、でもそれを他人がいくら口で言っても彼女の心には届かないし響きもしないでしょう。彼女が自分で考えて感じないと解らないのです。それを望むのは私のエゴでしょうか?」
「アリーシャ被告は他の人とは違うからなぁ」
「それでも心の中に少しのさざ波が立てばと思います、人に全て責任転嫁しただけでは救いがないと思います」
「救いか」
「本当の意味で罪を受け入れ無ければ救いは訪れません。だから自分のした事を受け入れ認めてそして悔いて欲しいのです」
「そうだな。そうしてこそ本当の償いの道を歩めると言うことか」
「はい」
「太々しいよ、君に罵声を浴びせるかもしれないし嫌な思いもするかも知れないよ」
「だから、大丈夫ですって」リリアナが笑うと
「私がぶっ飛ばしますから!」横から今まで黙って聞いていたアンが拳を握って言う。
「二人っきりで話したいのにサイモン兄さんはよほど邪魔したいらしい」
お邪魔虫と化したアンを見ながらため息が出る。
「結婚まで二人っきりにしない様にサイモン様からのご命令です!浮気の前科があるからとの事です」
アンがツンとすまして言う。
エドモンドは心の中でアンにお邪魔虫二号と命名した、一号は言わずと知れたサイモンだ。
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