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一つの恋の……悔恨

 王太子のエドモンドはリリアナの次兄サイモンから預かった手紙を元にアリーシャの動向を探らせていた。


 手紙の主は同じ修道院でシスターを目指す少女であった。

 元々大人しく言葉数の少ない少女を脅しつけ無理矢理レターセットを奪った事から始まっていた。


「モントーレ修道院では俗世に未練を必要以上に持たない様にレターセットは月一回必要分を申請して配給されるのだそうです」

 内情に詳しい者からの報告を受けていた。


「随分厳しいのだな」


「辺境で連絡手段が余程の事が無い限り手紙のみとされている為と、問題のある貴族子女の受け入れをしている刑務所的役割からの決まり事であるそうです」


「成る程」


「しかし中途半端な時期に入所したアリーシャ嬢はその月の配給に間に合わず、大人しい彼女に目を付け有無を言わさず取り上げたそうです」


「……」



「そして先日どちら宛だったのかが判明しました」


「それで?」


「親と亡くなった婚約者の両親、そしてその……ハワード様です」


「ハワードか」


「……はい」

 エドモンドとの関係を知っている側近は言いにくそうに答えた。


「彼女が毎月親とそれぞれの祖父母に手紙を欠かさず送るのを条件に入所して居る事を知らなかったアリーシャ嬢はその三通を取り上げ自分の親と亡くなった元婚約者の親、そしてハワードに支援を求める為に送ったと言う事で間違い無さそうだな」


「その通りだと思います……」


「……ん?」


「何ともはや逞しい方だなと」


「口先だけのペテン師だよ、彼女はね」


 そう言って報告書に目を落とす。

 少女を心配していた家族の元に手紙がやっと届き、その時の事情と共にその人物がどうも大金を使って不正をしている事が書かれていた。


「勇気を振り絞って書いたのか、良いシスターになりそうだな」


 場所が修道院なので気軽に侵入して⋯⋯と言うこともできず、院長と信頼できる人物に調べるよう依頼した。エドモンドは眠り続けるリリアナの為の教会100日祈祷の最中であり、辺境のモントーレ修道院は遠方で自ら動く事が出来なかった。

「支援が金銭だけなのか、脱獄を画策しているのか」


 そして暫くアリーシャが支援者にどの様な頼みごとをしたのかを探る為、泳がせている状態だ。


「それにしても己の罪に向き合っていないばかりか、はかりごととは」


 婚約破棄の際サインこそ父親の代筆であったが、己の犯した罪は書類に明記されており読み上げて理解した筈だ。

 それにも関わらず己の犯した罪の重さを悔い改める機会を蔑ろにしている。

 それによって人生を狂わされた者、傷ついた者、騙された者など沢山の不幸を生み出した。


 せめて修道院で罪を悔い祈りを捧げる事を償いとしたのだがとことん裏切ってくれる。

 そんな女にうつつを抜かしていたとは本当に人を見る目が無かった。


「ペテン師か、ぴったりだな」


 エドモンドは失望を込めてアリーシャをそう呼んだ。




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