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一つの恋の......悪辣

 それからの事は我儘放題だったアリーシャにとって受け入れ難いものだった。

 気がついた時は髪はベリーショートに整えられ諦めざるを得なかった。

 アリーシャの美しい髪はカツラとして病気の人物に寄付されることとなるらしい。

 これも奉仕の第一歩だと忌々しい事にシスターは言う、それは満足げに。


 夕食時には食堂に案内され他の者に紹介を受けた。

 本当は暴れてでも拒否したかったが空腹に耐えられなかった。


 それはそれは長い祈りの後、これは一体何?と聞きたくなるほど粗末な物で口にするのも恐ろしかった。

 しかし背に腹は代えられず恐る恐る口にしたがパンは釘が打てる程硬く割るのにも力が要る。

 スープの肉も筋張っていて硬く、どうしたらこんなに不味いものを食べられるのかと眉を顰め飲み込むのにも苦労してようやく食事を終えた。


 そして食後の祈りを皆で唱え其々が自分に割り当てられた仕事に戻っていく。

 アリーシャは初日と言う事で沢山のテーブルを拭く作業を言い付けられボロ雑巾の様な薄茶色の布を手渡された。

 これでテーブルを拭いていると聞きあまりの不潔さに眩暈を起こした。



 それから癇癪を起こしては眩暈を起こしたり気を失ったりを繰り返して学んだ事は、作業をしないと食事が出ないと言う事だった。気を失っているうちに食事時間が過ぎてしまい食べ損なうのだ。

 親切にとっておいてくれると言う事もなく、始終空腹を抱えることとなり早くも限界を迎えていた。


 アリーシャはどうにかして欲しいと院長に待遇改善を直訴したが無駄で頭を抱えた。


 そして各所に藁にもすがる気持ちで手紙を書くことにした。

 子爵領に居る両親と可愛がってくれていた元婚約者家族、そしてハワードに自分の置かれている窮状について訴えお金を要求して王太子殿下に取りなしを頼んだ。


 あくまでも自分は無実でありこの様な扱いを受ける事は理不尽だと切々と書き上げた。

 家族の住所は領地替えの為分からず大まかな地域名を書き届くのを祈った。


 直ぐに手紙が書けなかったのは便箋と封筒さえも月一回の支給品で希望者のみの予約制で次回から予約するようにと冷たく言われて持っていなかった。

 なので気の弱そうな年下の修道女を見つけ好意で譲って貰うと言う名の強奪をしてやっと書き上げた。

 その修道女は泣いて抵抗したが懇々と言って聞かせ黙らせた。



 しかしいつまで経っても返事は無くイライラして洗濯桶を蹴りあげたら足の小指を骨折した。

 それを良いことに歩けない芝居をし部屋でゴロゴロする日々を過ごした。

 そしてそれに味をしめて怪我や病気を理由に上手くサボる事を思い付いた。


 あからさまな奉仕活動の放棄に他の修道女達は不満を募らせアリーシャに注意するが鼻で笑って取り合わなかった。



 そうこうするうちに待ちに待ったハワードからの返事があった。

 自分の愛妾とならないか?と言う打診だった。


 結婚式が早まりもうすぐ結婚するが時期を見て愛妾として貰い受けたいと書いてあった。

 そうすれば中央に働きかけ尽力しようと書かれていたのでアリーシャは一も二もなく飛びついた。


 ハワードは将来公爵となる。

 最初は愛妾でも本妻になる方法ならいくらでもあるではないか。

 なにせ本妻はあのメリッサである。

 以前の関係性ならば幾らでもやりようがあるし、やり込める自信もあった。

 不慮の事故や病気になって貰いさっさととって代わろう。


 贅沢に暮らし社交界に返り咲く自分の姿に想いを馳せ、同封されていたお金で先ずは買収から始めることにした。


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