一つの恋の⋯⋯盲信
「あ、悪魔だと?」
ハワードは耳を疑った。
「ええ、悪魔ですわ。アリーシャと言う名の」
メリッサはキッパリと言い切った。
「彼女は王太子妃に成られる方だぞ、何を言うのだ!」
ハワードはつい声が大きくなった事に気がつき、周りに人がいないか慌てて見回す。
「大丈夫、人払いは済んでおります。ご安心下さい」
「それにしても彼女をその様に言う事は許さんぞ」
「悪魔を悪魔と言って何の支障がありましょう?」
「いくら彼女が羨ましいからと言ってその様な口の利き方、無礼にも程が有る!国外追放か平民落ち良くて修道院行きだぞ」
メリッサはにっこり微笑んで小首を傾げながら
「痛くも痒くも御座いません。悪魔の事は何でも知っておりますから、どうせ呼び出されたのでしょう?」
と言った。
「何故彼女がその様に言われなくては成らないんだ!」
「ふふふっ、悪魔の全てを知りたい?長くなりましてよ。此方の馬車にどうぞ」
ハワードは重要な話があるからと馬車周りの人払いを従者に命じ公爵家の馬車に乗り込んだ。
公爵家の馬車は普通の物より広々とした作りだが、向かい合って座るメリッサの威圧感で息苦しい程だった。
「今迄敢えて注意しませんでしたが、これからは悪魔と距離を置いてください」
もう名前を呼ぶことも止めてしまいすっかり悪魔呼びになっていた。
「何故だ、彼女は王太子妃に成られる。そんな事不可能だろう」
「果たしてそうでしょうか?」
「⋯⋯?」
「私は彼女に弱みを握られこれまで散々こき使われてきた為に誰よりもよく知っております」
「よ、弱み?」
「えぇ、私の弱みは貴方です、ハワード様」
メリッサは寂しげに笑った。
あれから三日後にドクトール家に王城より婚約破棄の手紙と書類が届けられた。
リリアナの時は侯爵が王城に呼ばれて破棄が言い渡されリリアナはそれを自宅で聞かされた。
しかし今回は登城して申し開きする余地もない程目撃者があり誰一人反対する者が居なかった為、速やかに報告が上がり承認された。
これで書類にサインして王城に提出すれば婚約破棄は確定する。
でもアリーシャが暴れてサインを拒否、殿下にお会いすれば誤解が解けると信じているらしく連れてこいと聞かなかった。
娘のあまりの変わり様に家族は唖然とし、恥の上塗りをするなと諭すが収拾がつかなかった。
実はアリーシャはハワードを待って共にエドモンドを説得するつもりで時間稼ぎしていた。
そしてエドモンド殿下の寵愛があればこの難局をひっくり返せると信じて疑わなかった。
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