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一つの恋の……渇愛

 メリッサは公爵家の馬車に乗り王都に向かったハワードを追い掛けていた。

 途中で絶対に見つけ出す、王都になんか行かせてなるものか。


「辻馬車か馬よ。見落とさないで頂戴。馬車は必ず中を確認するのよ」

「馬なら何回か乗り換えるはずよ、水や餌やりも頻繁にしないといけないから注意して頂戴」


 あんなに慌てて取るものも取り敢えず王都に向かったのだ、あの悪魔に何かあったのだ。

 あと少しで結婚と言うところまで漕ぎ着け幸せの絶頂から奈落に落ちる様だ。


 厳しい王太子妃教育は最短でも2年掛かると言われている。

 本来なら幼い時に婚約するので時間に無理のないスケジュールでゆっくりそしてじっくり進めるものだ。


 それを横取りなんかするから。

 メリッサはアリーシャの現状がそこまで逼迫しているとは知らなかった。

 王太子妃教育の大変さに音を上げたか気晴らしでハワードを呼び戻したのだと思っていた。


 私達の結婚は1年後、先に結婚さえしてしまえば安心と思っていた。

 でもあの女は悪魔である。

 利用出来るものはたとえ絞りかすに成ろうとも構わず使う女だ。

 ハワードの気持ちは痛いほど分かっていた。

 自分と同じ切ない眼差しで見ているのだから、それを利用出来ない様に距離を置かせたのに……。


 ハワードの父に働き掛けたのはメリッサだった。

 常々何とかしなくてはと我が子の素行の悪さに頭を悩ませていた公爵はこの提案に乗った。

 メリッサに全幅の信頼を寄せてくれ、婚約者兼監視役として手綱を握れる様にしてくれたのだ。


 それなのにと、メリッサは悔しくて握り締めた拳に綺麗な爪がめり込んで深い跡をつける。

 どれだけ利用されれば目が覚めるのか、悪魔の何処がそんなにいいのか。


 王都まで後1日の所でメリッサはハワードに追いついた。


「メリッサ様ぁ〜見つけました。ハワード様が此方にいらっしゃいましたぁ」

 メイドが大声で手を大きく振って離れた場所のメリッサを呼んでいる。

 そして膝に両手を置いてはぁ、良かった助かったと呟いた。


 メリッサが此方にゆっくり近づいて来る、沢山の商人や旅人は空気を読んでかサッと道をあけた。

「ハワード様、公爵様の言いつけを破ってどちらに行かれるおつもりですか?」

 メリッサの何時も美しく整えられていた髪は乱れ目は座り声に至っては数段低い。


 メリッサの暗い執念が恐ろしい。

 血眼になって探したようだ、従者やメイドは疲れ果て姿を確認した時そう感じた。


「至急の用件が出来たのだ、父には私から申し上げるので君は公爵領に戻っておいてくれ」

 私の言葉に何の反応もせず

「お手紙拝見しますわ」そう言って手の平を差し出す。


「いや、これは極秘なのだ。何も言わずに済まない、さぞ心配したんだろう?」

 手紙から少しでも意識を逸らしたくて言った。

「どなたからのお手紙ですの?」

 一歩も引かないかの様に差し出した手の平を小刻みに震わせて要求する。

「公爵様より全権を任せられておりますの。至急の用件か私が判断しますわ、さぁ手紙を!」


「見せる訳にはいかないんだ、頼む何も聞かずに帰ってくれ、いや帰れ!」

 大声でメリッサを怒鳴りつける。


「そんなに大切ですの?私よりあの悪魔が」

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