一つの恋の⋯⋯俯瞰
エドモンドの元には続々と証言が集まっていた。
特に就職内定を取り下げられた者や決まりかけていた縁談を横取りされた者からは貴重な情報が得られた。
明らかにアリーシャの父親であるドクトール伯爵だけの力ではなく、もっと上の圧力によるものだった。
そうなると犯人は絞られる、モンタギュー侯爵の台頭を許せない対立一派と考えて良いだろう。
婚約破棄させてアリーシャにその座を盗らせ恩を売る事によって政治に介入しようと言うのか、もしくは発言権を高めたい思惑か?
リリアナとの婚約は母の勧めであったことから反王妃派とも考えられる。
皮肉な事に今回の一件が無ければ埋もれた事実、危うく手の平で踊らされる傀儡の王となる所であった。
奴らに気取られる訳にはいかない、アリーシャの前でも以前の自分を演じつつ慎重に考察していった。
そして王城での噂はハワードと親しい複数の女官達より広がったものと分かった。
アリーシャを好きだったはずの彼が何故リリアナを陥れて婚約破棄の後押しをしたのか?疑問が残る。
そこにリリアナに対しての悪意が存在していたのか、アリーシャに頼まれたのか?
女好きなので関心が別の女性に移ったのかとも思ったが、相変わらず同時進行で遊んでいる。
その様な病気であろうかと思うものの、自分とてリリアナと言うものがありながら他の人に心を移したと苦笑いをするのであった。
≪人の振り見て我が振り直せ≫頭の中にその言葉が沁みた。
その日エドモンドは王太子妃教育の様子を見に出かけた。
驚かせたいから内緒で、と言うと女官達は含み笑いをしながら快諾した。
休憩時間らしく教師陣の控えの間を窺った。
すると教師達が何やら難し気に話し合っていた。
「随分優秀との前評判は偽りでしたな」
「我々の事は取るに足りない一介の教師とでも思っておられるのでしょう」
「あの高慢な態度、不愉快ですわ」
「リリアナ様と比べてはいけないのでしょうけれど、学ぶ姿勢が余りにも違っておりますわ」
「短期間でこれでも最低限の重要事項のみですのに不満ばかり漏らされて」
「ここだけの話、リリアナ様とは品格が違いますな」
「それでもある程度の基準まで持って行かねば我々の評価が下がってしまう」
「どう致しましょう、ああも二面性を見せられては私達が進言してもこちらに非がありとされてしまいますわ」
「何とか宥めすかしてやり過ごしましょう、歯向かっても宰相殿が付いていらっしゃるから」
「しー。声が大きいですよ」
教師陣の本音が知れたところで、アリーシャの控えの間に向かう。
「お嬢様、こちらで宜しいでしょうか?」
「ちゃんと私の字を真似て書いたのでしょうね」
「はい、こちらで如何でしょうか」
「まぁ、良いでしょう」
「内容の確認は宜しいので?で、ではこちらを提出致します、次の概論の方はこちらで如何でしょう」
「貴方に任せるわ。質問を受けた際の要点だけメモしておいて頂戴」
「かしこまりました」
「ミーナお茶とタルトのお代わりを、それと髪のここが乱れてるわ直して頂戴」
豪奢な手鏡を片手に持ちながら菓子をつまんでいる。
淑女としてのマナーも成っていなかったのか!提出物も人に書かせていたとは。
気を鎮め声を掛けて部屋に入る。
「エドモンド様、急にどうなさったの?」
「愛しい人に会いに来てはいけないのかい?」
「まぁ、嬉しいですわ。今丁度休憩中ですの」
「どう?大変だろう、課題が」
「いえ、大した事はありませんわ。これくらいこなせなければ殿下のサポートもままなりませんもの」
「嬉しいね、王太子妃教育の進捗状況を聞こうと思ったが順調そうで安心したよ」
「ご安心くださいませ、全て順調でしてよ。でも」
「でも?」
「最近思いますの。エドモンド様もお忙しくて二人の時間が余り持てないでしょう?」
「それもそうだな」
「どうでしょう、結婚してからでも学ぶことは出来ますわ」
「ん?それは結婚を先にしようと言ってるのかい?」
「勉学は一生するものですもの。結婚前の忙しい時期に詰め込んでは勿体無いと思いません事?」
「流石アリーシャだね、勉学好きなら結婚後もそのように手配しよう」
「えぇっと、そ、そうですわね」
「じゃあ、そろそろ行くよ、頑張ってね」
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