一つの恋の⋯⋯予兆
そして親しくなってから驚いたのは、メリッサ様がハワード様の女性関係を殆んど把握されていた事だった。
時間が空けばハワード様の事を常に探してこっそり後を着いて回る、という事を繰り返して居るらしい。
ご自身が着いて行けない時は使用人や探偵を生業とする者に頼む事も有るのだとか。
婚約者になってからの習慣よと仰って居たけれど、女性を渡り歩く婚約者を見て確かに信頼は出来ない。
「其れではメリッサ様がお辛いばかりでしょう」
「もう慣れたって言ったら貴方は笑う?」
「笑うなんて、そんな⋯⋯」
「今までは其れでもほんの一時的なものだったのよ、だからまだ耐えられた」
悲痛な表情でメリッサ様が呟く。
「あの方は違うんですの?」
暫く沈黙が続いた後、
「チラッと見ただけでしょうけどあの方をどう思いまして?」
「私の感想?一瞬でしたし、よく覚えていませんの」
「第一印象って有るじゃない、案外的を射ているものよ」
「堂々とされていたからやましい事は無いのかしら、普通はもっと慌てるでしょうし」
「嫌な予感がするのです、あの方に限って」
「嫌な予感って本気だという事ですの?」
「⋯⋯」
メリッサ様はその問いに答えなかった。
でもあの図書館の一瞬で何と無くだがハワード様が必死で追いかけている様に見えたことは確かだ。
それ以上何も起こりません様に、とメリッサ様の為に祈った。
しかしその後年上だとばかり思っていたお相手の方が同級生だった事を知る。
あら知らなかったの?殿下とも同じクラスの方よ⋯⋯とメリッサ様に言われて心がざわついた。
殿下はお二人の事をご存知なのかしら?と思った。
お相手はアリーシャ様と仰る落ち着いた雰囲気の美しい方だった。
最近は殿下も交えて三人で仲良くされていると専らの噂らしい。
そう言えばここの所殿下と過ごす時間が減った事に気が付いた。
自分の事にかまけているうちに此方も疎かになってしまったらしい。
慌てて殿下の下に行くと何時も三人で楽しそうにされている。
噂は本当の事だったのだと自省し、アリーシャ様をご紹介頂いて共に仲良くして頂こうと近づく。
「お話中に失礼いたします、殿下、ハワード様ご機嫌よう」
「あぁ、リリアナか」
「リリアナ嬢、ご機嫌いかがですかな?」
「はい、皆様と仲良く過ごせておりますわ、所で此方の方は?」
「紹介していなかったか?アリーシャ嬢だ、アリーシャ此方は⋯⋯」
「存じ上げておりますわ、リリアナ様でしょう。リリアナ様アリーシャと申します」
「リリアナと申します、此方こそ宜しくお願いしますわ」
お互いにお辞儀をした。
「何か用だったのでは?」
「いえ、最近殿下と過ごす時間が少ない事に気が付きまして」
「そうだったか?」
「はい、自身の事にかまけてしまい申し訳ありません」
「いやいや、クラスも違うのだし仕方が無いよ。私の方こそ気が利かなくてすまん」
「あらあら。お互い学園に在籍中は自由で宜しいのでは?これから長いお付き合いになるのですもの」
「そりゃそうだな、四六時中何て飽きられちゃうよ」
ハワード様がアリーシャ様の言葉を肯定される。
「そ、そんなつもりでは⋯⋯」
言葉に詰まる、何故会いに来ただけでそんな話になるのか?
お邪魔だった?思ってもみなかった展開に思考がグルグル回る。
「おい、ハワード口が過ぎるぞ。まぁ確かに学園に居る時位お互い自由に良いのでは無いか?」
「殿下が宜しいのなら、その様に致しましょう」
私がしょんぼりしたのを感じたのか
「私も人の事は言えんな。時々は一緒に過ごす時間を作ろう」
「あら。殿下は生徒会の方もあって何時もお忙しいじゃありませんの、その辺も考慮して差し上げたら如何かしら?」
「流石アリーシャだね、気配りが出来てる。リリアナ嬢も手本にすると良いよ」
ハワード様に言われて何も言えなくなった、お会いしたかっただけなのに我儘だったのかしら?
「そのように致します、では次の授業の準備がありますのでこれで」
「あぁ、またね」
「ご機嫌よう」
三人の意識は既に此方には無かった。
リリアナは二人がアリーシャ様の事を呼び捨てにしている事に気が付いた。
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