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一つの恋の⋯⋯記憶

 今日私は帝国貴族が通うこの学園の生徒となる、婚約者である王太子殿下と共に。


 リリアナは期待で胸を膨らませていた。


 小さな貴族社会で生きて来たリリアナにとって初めての自由がそこにあった。


 今まで出来なかった、自分で選択出来る自由。


 教科を課外活動を選択する、ランチでさえも好きに選択出来る。


 用意された物をただ淡々とこなすのでは無く、其処(そこ)にはリリアナの意思が存在する。


 王妃になる前にその時しか出来ない経験をしたかった、そして心の拠り所(よ どころ)となるであろう沢山の友人が欲しかった。


 長兄であるルーカス兄様がいつも自慢気に言っていた、友は宝であると。


 ずっと王都暮らしのルーカス兄様には相談したり、助け合ったりする友人が沢山居るらしい。


 領地で育ち厳しい家庭教師が側にいたリリアナにとっては友人と言える様な人物は皆無(かいむ)だった。


 隣の領地といっても馬車で半日以上掛かる。


 お茶会に呼ばれるのも気軽にとはいかなかった。


 行けたとしても隣には厳しい家庭教師が居た。


 彼女はリリアナの一挙手(いっきょしゅ)一投足(いっとうそく)を見逃さないように厳しい視線を送る。


 リリアナの評判は(すなわ)ち自分の評価に繋がるのだから。


 宿泊も町の宿屋と決まっていて仲良くお泊りする友人関係をいつも羨ましく思ったものだ。 


 だから期待していたのだ、初めての学園でやりたい事が沢山あった。


 王太子妃教育と学園生活、息つく暇なく過ぎて行くだろう。


 だから有意義なものにするのだ、日々を大事にして。


 少しばかりの意気込みと勇気がいる、ポケットの中の髪飾りを無意識に握り締めた。


 初めは順調過ぎる程だった。


 殿下とはクラスが分かれてしまったが仲良く出来そうな女生徒が数人出来た。


 皆同じ心持ちだったのだろう、話が弾んで趣味の刺繍や読書の話題で花が咲いた。


 多くが自分の境遇に似た辺境の令嬢だった。


 しかしお洒落なアクセサリーや王都で話題の店舗には疎くそういった物が好きなグループとは話が合わなかった。


 殿下の婚約者として軽んじられる事は無かったが、幅広い分野での知識も必要かと情報収集する事にした。


 そして仲良くなったのが殿下の従兄弟のハワード様の婚約者メリッサ様だった。


 メリッサ様は無口であまり感情の起伏の無い方だったが博識で王都の城下にも詳しかった。


 何でも御姉妹や従姉妹が沢山いらして情報には事欠かないらしい。


 私には羨ましい限りである。


 ハワード様よりご紹介を受けてのお付き合いだったが面倒見が良いらしく仲良くなるのに大して時間は掛からなかった。


 そしてある事がきっかけで親友となった。

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