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一つの恋の⋯⋯忘憂

 エドモンドは自室でリリアナの遺書と(おも)わしき物と向き合っていた。


 帰ったと見るや文官からは政務の決裁(けっさい)書類が溜まっている事を報告されたが、緊急性の高いもの以外は明日に回す(むね)を伝え文官等も帰宅する様に指示した。


 これで邪魔は入らない。


 ところが向き合ってみると何が書かれているのか、本当に怖くなった。


 ふぅ……と息を整え、恨み(つら)みも(あま)んじて受ける心づもりで蜜蝋を()がす。





 エドモンドは目を見開く。


 部屋に備え付けられている城の便箋、まさかあの部屋で書いたのか?


 そう言えば侯爵が言っていたではないか、あの日リリアナは知らなかったと。


 文字は乱れインクは(にじ)み、所々に涙の跡がある()()なのに悪感情が感じられない。



 婚約当時からの想い出が(つづ)られリリアナとの事を忘れてしまっている身としては自分のしたことを客観的に見られて却って気恥ずかしい心持ちになりながら読み進める。


 メイドのアンの言っていた事にも符合(ふごう)する。


「これは遺書じゃない?」


 まるで文面はラブレターの様だ、しかしながらクシャクシャでリリアナの血が付いたものだ。


 遺書と呼ぶには余りにもそこに確かな愛情が存在した。



「婚約破棄したんだぞ、()()()を選んだんだぞ?」



 涙が零れ落ちた、金色の飾りの付いた安物の髪飾り。

 あれは大人の真似して自分が城下の露店で買い与えたもの。


 忘れていた記憶の奥底に確かにあった信頼と愛情。


 零れ落ちた涙のかけらがリリアナの涙の跡に重なった。


 沢山の思い出をありがとうございます、この気持ちは私が持って(まい)りますと締め(くく)られていた。


 どんな気持ちでしたためたのだろう、胸を()(むし)る思いだったはずなのに。


 多分自分の推測は間違ってないだろう、初めは遺書として書くつもりが全てを許して持って行こうとしたのだ。


 そして最後に小さな文字で私の事を忘れてしまいます様にと書かれてあった。


 神が聞き届けたのだ、彼女の()()()()()()

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