おやすみとその後の予定?
「ふむ、成る程成る程。これは素晴らしい。資料は定期的に届けてもらって見ているが、こうして直接話を聞くと、やはり凄い研究なのだと改めて実感するな。ふむ。素晴らしい」
渡された資料の束を見ながら、陛下が感心したようにそう呟く。
すでにその資料には、ここまでの討論の中で陛下が自ら記したメモや考察が、余白の至る所に書き散らかされている。
そしてマークとキムとレイの前には、こちらも大量のメモや覚え書きが記入された資料と、書き込まれた大量のノートが散らばって積み上がっている。他の竜騎士達も、似たような有様だ。
「はあ、ちょっと討論は一旦休憩にして、各自、貰った資料とノートの整理をする時間を取ろう。これは収拾がつかなくなってきたね」
散らばった資料の山を見てため息を吐いたアルス皇子の言葉に、顔を上げた陛下も苦笑いしつつ頷き、ここからは一旦資料整理の時間になった。
「ほう、レイルズは整理するのが得意なのか?」
自分の分の散らばった資料とノートをあっという間に整理したレイが、マークとキムの資料整理を手伝っていると、陛下が感心したようにそう言って手元を覗き込んできた。
「そうですね。いつも事務所で皆の資料整理や片付けなんかを手伝っているので、整理整頓は割と得意な方だと思います」
陛下の言葉に、レイが得意そうにそう言って笑いながら胸を張る。
「整理上手なレイルズは、もう俺達にとって無くてはならない存在ですよ」
「確かにそうだな。頼りにしているぞ」
手を止めてこっちを振り返った真顔のルークとマイリーの言葉にカウリとヴィゴが吹き出し、その後に遅れて若竜三人組とティミーも吹き出している。
「だからお二人は、自分の机周りくらいは自分で少しは整理してください!」
「「大丈夫だ。何処に何があるかは分かっている」」
笑ったレイの叫びにまたしても真顔の二人の答えが綺麗に重なり、全員揃って大爆笑になったのだった。
「はあ、もう至福の時間だな」
「確かに、ここへ来る度にそう思うよなあ」
資料整理の後は、そのまま各自好きに本や資料を読む時間となり、マークとキムは積み上げた本を読みながら揃って満足のため息を吐いた。
「確かに、ここで過ごすのは至福の時間だな」
二人の声が聞こえた陛下が、笑いながらそう言って読んでいた資料をそっと撫でる。
「普段は、やらなければならない事がいちいち細かく決められていて、その通りにするのが当たり前だからな。こんな風に時間を忘れて何かに夢中になれる事などほとんど無い。是非ともまた、こんな時間を作って欲しいものだ」
「確かにそうですね。では、次回の本読みの会には、陛下もご参加いただけるように手配しましょう」
「おお、それは素晴らしい。ぜひお願いするよ」
笑ったルークの提案に、満面の笑みで大きく頷く陛下だった。
そしてうっかり呟いた自分達の言葉から、まさかの本読みの会に陛下も参加なさる事になったのを見て、揃って無言で慌てているマークとキムだった。
「おお、もうこんな時間か。では今日のところは、これくらいにして一旦解散かな」
深夜の時を告げる鐘の音に気付いたマイリーがそう言い、ここで一旦解散となった。
「えっと、今夜は……するの?」
本を置いたレイが小さな声でルークにそう尋ねる。
「どうする?」
にんまりと笑ったルークの言葉に、若竜三人組とティミーが揃って笑顔で頷き何かを振り回す振りをする。
「あはは、それじゃあ湯を使ったらレイルズの部屋に集合かな。ええと、どうします?」
ルークの最後の言葉は、こっちを見ているマイリーとヴィゴ、それからカウリに向けた言葉だ。
マイリーとヴィゴは、何も言わずに顔を見合わせてから困ったように陛下を見る。すると、二人の視線に気付いた陛下は笑いながら大きく頷き二人に手招きをする。
「せっかくのお誘いだけど、俺達大人組は遠慮しておくよ」
それを見て、残念そうにそう言ったマイリーの横で、何故かヴィゴが小さく吹き出して咳き込んでいる。
「ええ、ちょっと待ってください。俺もこっちっすか?」
そして何故か慌てたようにカウリがそう言い、笑ったヴィゴに首根っこを掴まれる。
「ふむ、一人足りないな。ルーク、これも経験だ。お前もこっちに来い」
そしてヴィゴとカウリを見てにんまりと笑ったマイリーが、いきなりルークの首根っこを掴んで引き寄せた。
「うええ、ちょっと待ってくださいって。俺まで?」
「これも経験だ」
これ以上ないくらいの笑顔になったマイリーの言葉に、ルークが顔を両手で覆って小さく悲鳴を上げる。
「それじゃあ、おやすみ。まあ、夜更かしは程々にな」
笑ったマイリーとヴィゴが、カウリとルークを引きずったまま部屋を出ていき、それを見た陛下とアルス皇子が笑いながら何故か大喜びでその後を追いかけていった。
呆気に取られてその後ろ姿を見送った若竜三人組が、戸惑うように顔を見合わせる。
「ええ、あの顔ぶれで?」
「ええ、それはちょっと……カウリとルークに同情するかも……」
「うわあ。頑張れカウリとルーク」
レイとマークとキム、それからティミーは何が起こったのか分からず、困ったようにお互いを見て首を傾げている。
「えっと、どうなってるの?」
レイが不思議そうにロベリオの袖を引いてそう尋ねる。
「後で教えてあげるよ。じゃあ、とりあえず部屋に戻って湯を使って、それから枕を持ってレイルズの部屋に集合な」
笑ったロベリオの言葉に戸惑いつつ、一旦資料を抱えて部屋に戻っていったのだった。
『おやおや。今夜は二組に別れたのか。さて、あの顔ぶれでどうなるのか、ちょっと楽しみにしておくとしよう』
笑ったブルーの使いのシルフの言葉に、アメジストとガーネット、それからルビーとカルサイトの使いのシルフ達も困ったように顔を見合わせてから、揃って吹き出していたのだった。




