お疲れ様な今日のレイのお仕事?
「ただいま戻りました!」
疲れ切ったレイが瑠璃に館に戻ってきたのは、昨日と同じくもうそろそろ深夜になろうかという時間だった。
「おかえりなさい。今日も遅かったんですね」
玄関まで出迎えてくれたタキス達を見て、ゼクスの背から飛び降りたレイは両手を広げてタキスに抱きついた。
「もう疲れたよ〜〜〜」
情けない声でそう言いながら、大きな体を少しかがめてタキスの肩に自分の額をグリグリと擦り付ける。
「はいはい、大きな子供のご帰還ですね。ほら、中に入りましょう。離してください」
笑って抱きしめ返したタキスがそう言って、レイの後頭部をポンポンと叩く。
「何だよ。そんなにお疲れって、また夜会だったんだろう?」
苦笑いしたニコスの言葉に、レイは顔を上げないままに大きなため息を吐いてまたタキスにしがみつく。
「はいはい、余程のお疲れとみましたね。いいからとにかく中に入りましょう。ほらレイ。皆さんが困っておられますよ」
先ほどよりも少し強めに後頭部を叩かれてようやく顔を上げたレイは、一緒に戻ってきたラスティや護衛の者達、それからタキスと一緒に出迎えに出てきてくれたアルベルトをはじめとする執事達が困ったようにその場に立ったまま揃ってこっちを見ているのに気づいて、慌ててタキスから離れた。
「あはは、ごめんね。じゃあ中に入ろう」
誤魔化すように笑ったレイの言葉にタキス達も揃って吹き出し、顔を見合わせてもう一度笑い合ってから館の中へようやく戻っていった。
一旦部屋に戻り部屋着に着替えたレイと一緒に、ゆっくり話の出来る応接室へ向かった。
「えっと、ワインはかなり頂いてきたので、僕はお茶がいいな」
「かしこまりました。ではレイルズ様にも紅茶をご用意しましょう」
紅茶の新茶が届いていて、以前タキス達と一緒に飲んだ時にレイがとても喜んでいたのを覚えていたアルベルトがそう言ってくれた。
「ありがとうね。はあ、疲れたよ〜〜」
笑ってそう言ったレイがタキスと並んでソファーに座る。テーブルを挟んだ向かい側にニコスとギードが並んで座る。大きなソファーは、大柄なレイやギードが座ってもゆったりとしている。
「はあ、疲れたよ〜〜」
もう一度そう言ったレイが、隣に座ったタキスにもたれかかる。
笑ったタキスはレイの方に体を少し傾けてもたれかかる大きな体をしっかりと受け止めてやる。
しかし、そのまま脱力したレイはズルズルと倒れ込み、完全に横になってタキスの膝に乗り掛かった。いわゆる膝枕状態だ。
「おやおや、甘えん坊ですねえ。お疲れなのは分かりますがだらしないですよ」
笑ったタキスが、レイの額をペチペチと叩く。
「ここは僕の家だから、だらしなくてもいいんです〜〜」
笑ったレイが、転がったままそう言ってタキスの手を掴んで握る。
「それで、いったい何をそんなに疲れているんだ?」
苦笑いしたニコスの言葉に、レイが小さく唸り声を上げる。
「今日は一日会議だったの。午前中は聴講、つまり聞いてノートを取るだけでの参加だったからまだよかったんだけどね。午後からは、僕にも発言の機会があって、色々質問したりして大変だったの。でもまあ、そっちはしっかり勉強していたからなんとかなったんだよ。一緒に参加したマイリーとルークにも、上手くまとまっていたって褒めてもらったんだよ」
最後はちょっと得意そうなその言葉に三人が笑顔になる。
「でもね〜〜その会議の後が大変だったの〜〜」
両手で顔を覆ったレイの言葉に、てっきり会議が大変でお疲れだと思っていたニコスが驚いたようにレイを見る。隣では、ギードも同じように驚いている。
「会議の後に何があったんだ? 普通、会議なんて終われば解散して終わりだろう? 参加していた他の人に何か言われたとかか?」
若干心配そうなニコスの言葉に、大きなため息を吐いたレイは両手をあげて降参の姿勢を取った。
「その後に、隣の会議室にいた方々と合流して、竜騎士になった僕へのお祝いという名目の懇親会があったの。でも実際にはワインを片手の勉強会と言うか、僕を寄ってたかっておもちゃにして遊ぶというか……もうとにかく、本当に大変だったの!」
もうその言葉だけで、その時の状況が容易に想像出来たニコスが堪えきれずに吹き出す。
「ニコス〜〜〜」
完全に拗ねた口調のレイの言葉に、ニコスがもう一度吹き出す。
「ごめんごめん。それってつまり、貴族院のご隠居様方、ええと、こっちの国では元老院って言うんだっけ。その方々との懇親会だったわけか」
「ええ、どうして分かったの?」
驚いたレイが、腹筋だけでガバリと起き上がってまだ笑っているニコスを見る。
「そりゃあまあ、そうなるだろうな。お疲れさん。ほら、紅茶を淹れてくれたからいただきなさい」
一礼したアルベルトがレイの前にも紅茶のカップを置いてくれる。
「ああ、これ、この前美味しかった紅茶の新茶だね。いつもカナエ草のお茶ばかりだから、紅茶が嬉しいです。ありがとうね」
無邪気に紅茶を喜ぶその様子に、皆笑顔になる。
「じゃあ、これを頂いたらもう休むか。明日はどうなんだ?」
ニコスも用意された紅茶を見てから、向かいに座るレイを見る。
「えっと、明日は昼はゆっくりしていいんだって。午後から奥殿にタキス達も一緒に招かれているからね」
当然のように言われた奥殿への招待に、タキス達は揃って驚きの声を上げたのだった。




