それぞれの一日
「えっと、今日も僕は、朝から本部へ行かないといけないみたいなの。タキス達と一緒にいられる時間が限られているから残念だけど、お仕事があるって言われたら仕方がないよね」
翌朝、良いお天気だったので庭にテーブルを用意して一緒に豪華な朝食をいただいていたレイが、残念そうなため息と共にそう言ってカナエ草のお茶の入ったカップを置いてタキス達を見た。
「そうなのですね。残念ですが、お仕事とあらば仕方ありませんね。頑張ってください。では私達は、今日は何をしましょうかね? そうだ。もうここにいられる時間は有限なんですから、出来れば私は王立図書館へ行きたいですね。あそこの本は、本当に素晴らしかったですから」
食べる手を止めたタキスの言葉に、ニコスとギードも笑顔で右手を上げる。
「ああ、確かにそれは良いな。王立図書館なら俺も行きたい」
「ワシも、王立図書館ならば行きたいわい」
顔を見合わせた三人は笑顔で頷き合った。
「では、今日の予定は決まりましたね」
「だな。だが、タキスよ。もうあんな騒動はごめんだぞ」
「それは私もごめん被ります」
呆れたようなニコスの言葉に、真顔で即座に言い返したタキスだった。
「いいなあ。王立図書館なら僕も行きたい。最近忙しくて、全然行けていないんだよね」
王立図書館へ行くと聞き、拗ねたようにそう言って口を尖らせるレイの顔を正面から見てしまったニコスとギードは揃って吹き出して咳き込み、執事達を慌てさせていたのだった。
「それじゃあ、いってきます。図書館、楽しんできてね」
食事を終えて身支度を整えたレイは、見送りに出てきてくれたタキス達に笑顔で手を振り、ラスティや護衛の者達と共に本部へ出かけて行った。
その愛しい後ろ姿が完全に見えなくなるまで見送ったタキス達は、一旦屋敷へ戻り少し休んでから外出着に着替え、護衛のもの達と一緒に王立図書館へ向かった。
「では、一旦解散ですね。昼はまた喫茶室で食べましょう」
「そうだな。適当な時間になったらシルフを飛ばすよ」
「おう、ではそれで行こう」
図書館入り口で解散したタキス達は、それぞれ好きな本を目指して散らばっていった。
タキスはまた医学関係の本が並んだ一角に陣取り、とりあえず目についた目新しい本を何冊か取り出すと、側にあった椅子に座って、時折持ってきたノートに本の内容をまとめて書き写しながら、あとはもうひたすら本を広げて夢中になって読んで過ごした。
ニコスは、少し考えて料理本や様々な地方の食材などについての本が並んだ一角に行くと、移動階段を使ってまずは何冊もの本を選び、机の上に積み上げると近くにあった椅子に座り、持ってきたノートを広げて気になったレシピを書き写したり、夢中になって本を読んだりして過ごしていた、
ギードは、前回と同じく建築関係の本が並んだ本棚を一通り見て回ったあとは、また別の本棚に移動して、珍しい鉱石や研磨の方法について書かれた古い本を見つけると、その本を抱えて近くにあったソファーに移動して座ると、あとはもう夢中になって顔も上げずに読み耽っていたのだった。
昼を少し過ぎたところでまずニコスが時間に気付いてタキスとギードの伝言のシルフを飛ばし、図書館にある喫茶室に集まってそこで昼食をとり、午後からもそれぞれ好きに図書館内で過ごしたのだった。
今回は特に誰かが問題を起こす事も、問題に巻き込まれるような事も無く、それぞれが充実した時間を過ごしたのだった。
一方、本部に到着したレイは、ルークに伴われて午前中いっぱいお城で開催されている定例会議に参加していた。
もちろん、まだ発言権のない聴講という立場だ。
時折ブルーの使いのシルフやニコスのシルフ達に手伝ってもらいながら、ひたすら気がついたところをノートに書き、それはそれは真剣な様子で話を聞いていたのだった。
真っ白な制服を着たレイは、会議に参加している人たちから密かな注目を集めていたが、周りを見る余裕のないレイは、何か言いたげな周囲の視線には気付かず、黙々とノートを取って過ごしていたのだった。
会議が始まった時からずっとレイの右肩に座っていたブルーの使いのシルフとニコスのシルフ達は、そんな周囲の視線に気づいていたが特にレイに何かいうような事はせず、素知らぬ顔で過ごし、時折レイが取るノートの手伝いをしてやって過ごしていたのだった。
昼食を挟んで、午後からはルークやマイリーと一緒に少人数で開催された別の会議に参加して、ここでは少しだがレイも質問をする時間をもらい、必死になってまとめたノートを手にそれはそれは真剣な様子でいくつかの質問をさせてもらったりもしたのだった。




