神殿巡りと街歩き
とりあえず頂いたお菓子の中から小さめの焼き菓子を一つ紅茶と一緒にいただいたレイは、帰る際に一通りのアップルパイや焼き菓子をまとめて注文して、竜騎士隊の本部のラスティ宛に届けるようにお願いした。
もちろん支払いは、ここで食べた分と買った分も含めて、全部まとめて自分の木札で支払う。
「かしこまりました。では明日、ご注文いただいた分は竜騎士隊本部のラスティ様宛にお届けいたします。たくさんのご注文をありがとうございました」
竜騎士隊本部宛と聞いて一瞬だけ驚いたようにレイを見た店主だったが、後ろにいたタキスが苦笑いしつつ首を振るのを見て、そのあとは特に何も言わずにレイの木札を受け取って注文書を書いて控えを渡してくれた。
「とても美味しかったです。ティティー母様にもよろしくお伝えください」
「はい、ありがとうございました」
笑顔の店主と娘さんに見送られてお店を後にしたレイは、食べ切れなかったアップルパイと焼き菓子を持ち帰り用に包んで入れてくれた袋をそっと撫でてから、ゼクスの鞍に取り付けた折りたたみ式の籠を開いてそこにそっと入れた。
「キルート、こっちは護衛の皆で分けてね。とっても美味しいアップルパイだったんだよ」
帰る際に、お願いして別にまとめて包んでもらったお土産が入った袋を笑顔でそう言って渡す。
「その四角いアップルパイは、エイベルの好物だったんですよ」
それを見て笑ったタキスの言葉に、護衛の者達の目が見開かれる。
「そ、それは畏れ多い……ありがとうございます。では、戻りましたら皆でいただきます」
両手で恭しく袋を受け取り、顔を見合わせた護衛の者達が深々と一礼する。
それから顔を見合わせて笑顔で頷き合った一同は、それぞれのラプトルに飛び乗りゆっくりと道を一列になって進んで行った。
その後は、聖グレアムの神殿と、知恵の神様として信仰されている聖ソフィオラの神殿にも参って、通常の御印とレイの叙任式を祝う限定の御印の両方を頂く事が出来た。
「これで六個目。ううん、これなら今日一日で残りを全部回れるかな?」
御印帳を袋に入れながら、レイが嬉しそうにそう言って道案内役のオリサーを見る。
アップルパイとお茶をいただいたところなのでまだお腹は空いていないが、そろそろ太陽が頂点に上がる頃合いだ。
「ここから一番近いのは、火の守り神オーフィル様の神殿と、船乗り達の守護神である風の神アートリス様の神殿ですね。それが終われば、どこかのお店で昼食にしましょう」
周りを見回したオリサーの言葉にタキスも頷く。
「そうですね。後は街の東側になりますから、何処へ行くにしても大きく迂回して行かないといけませんからね」
「さすがにタキス様はよくご存知ですね。我らの仕事を取らないでいただけますか」
苦笑いしたオリサーの言葉に、他の護衛の者達も頷きながら苦笑いしている。
「いえいえ、頼りにしていますので、詳しい道案内をどうぞよろしくお願いします。以前も言いましたが、神殿の場所は五十年くらいでは変わりませんが、そこへ行くまでの道はかなり変わっていますからね。私の知る道が無くなっていた箇所が幾つもありましたので、一人なら間違いなく迷子になっていますよ」
こちらも苦笑いするタキスの言葉に、オルダムの街は初めてなニコスは驚いたように周囲を見回した。レイも驚いたように周りを見回している。
「二十年ほど前に、街の周辺にある古くなった幾つかの城壁の一部を壊して、通れるように道や門を作る大規模な工事が行われましたからね。そのおかげで、街を通り抜ける近道が幾つも出来たと聞いています」
「ああ、私の記憶と、今の道だけでなく周囲の光景にも違いがあるのはそういう事だったんですね」
納得したように笑うタキスの言葉に、レイ達も揃って感心しながら聞いていたのだった。
言っていた通りにまず近くにあった二つの神殿に順番に参ったレイ達は、そこでもしっかりと通常の御印と限定の御印の両方を頂き、昼食はオリサーおすすめの煮込み料理がおいしいお店へ行った。
そこでレイは、お店のメニューの中でも一番人気だという牛肉の赤ワイン煮をいただき、あまりの美味しさに大感激したのだった。
「ううん、僕の知らない事がまだまだたくさんあるんだね。よし、今度のお休みにも街へ出掛けてみようっと」
嬉しそうなレイの呟きに、食後のお茶をいただきながら、間違いなく予定がぎっしり詰まっているのであろうレイの次のお休みはいつになるのか考えて、苦笑いしていたタキス達だった。
そして午後からも移動の合間にお店を見て少しは買い物もしつつ、日が暮れる少し前に、無事に全ての神殿を回って通常の御印と限定の御印の両方を貰うことが出来たのだった。
完成した御印帳を手に大喜びのレイ達を見て、護衛の者達も笑顔で頷き合っていたのだった。




